1.09.2020

[art] Leonardo da Vinci

2日、日帰りでパリに行ってきた。約1週間前に行ったばかりじゃん? なのだが、クリスマス前のあの日程ではルーヴルのダ・ヴィンチ展のチケットが取れなくて、この日の夕方なら取れたので、それなら行こうか、って。 しょうがないの。(今にして思えばひょっとして、ストでキャンセルとかも出て、がんばれば取れたりしたのかしら?)

いつものように行きは飛行機にした(速いし電車より安いし)のだが、空港からの交通は相当にぐじゃぐじゃぽかったので、時間と面倒をお金で買って(←やな言い方)タクシーに乗ってしまった。

Maison de Balzac:  Grandville et Balzac
ダ・ヴィンチのチケットは16:30からだったので、その前に前回行こうと思って時間切れになったやつを。 バルザックが晩年を過ごしたお家が記念館というか美術館になっていて、1Fの常設のところには『人間喜劇』の登場人物ぜんぶの系譜図とかすごいのがあって、2時間くらい遊んでいられそうなのだが、これは地下でやっていた展示。

グランヴィルといえば、2011年の練馬区立美術館での鹿島茂コレクションの展示がすばらしく、あれほどの物量はなかったものの、グランヴィルの” the Private and Public Life of Animals” -『動物の私的・公的生活情景』にバルザックは文章を寄せていて、その辺を中心に楽しくてかわいい動物画がいっぱい。社会全体のいろんな人々とかが動物以下に激しく劣化してしまった今となってはとっても懐かしい「風刺」の風景が。

お昼を食べた後 – 2時くらいにルーヴルに入って常設展示のほうから見ていく。2時間半くらい簡単につぶれる。

美術館の常設展示を見るのって、昔はふんふんふん♪ の30分、くらいで済んでいたのだがここのところえらく時間が掛かるようになっていて、それはなんでかというと、各地いろんなとこを回ってそこにある絵をつけっぱなしのラジオのように眺め倒していくと空っぽの頭にもそれなりに溜まってくるものがあるらしく、例えば宗教画の意匠とかシンボルとかにいちいち、これ、とか引っ掛かり立ち止まって、へえ、とか、ほう、とかやっていると次に行けない。それがルーヴルともなると量もあるし、これいいなあー、ていうのもいっぱいあるし。その割には憶えるのが進まない。(だからちゃんと勉強しなおそうね)

没後500年(まだたった5世紀)のダ・ヴィンチ展は当然混んではいたものの、行ったり戻ったりはできたし、イモ洗い状態ではなかった。(通常展示のところにいたモナリザさんは変わらず凄い混雑だったけど)

2011年、ロンドンのNational Galleryで見たダ・ヴィンチ展と比べると、大騒ぎになっている割にはそんなでもなかったかも。 今回の大看板の“La belle ferronnière”はすばらしいし、”Saint Jerome”も来ていたけど、クラクフの白貂はいなかったし(Infrared reflectogramのみ)、『岸壁の聖母』新旧揃いもなかったし。替わりに物理学者、天文学者としてのダ・ヴィンチにもスポットがあてられていて、科学方面のスケッチやメモも纏まって展示されていた – これって昨夏にBritish Libraryでやっていた” Leonardo da Vinci: A Mind in Motion”のと被っているのかしら?

驚異の人文・博物・ルネサンス・マンとしてのダ・ヴィンチはそれはそれはもうじゅうぶんすごいのだからよくて、自分が興味あるのは彼の絵画と素描なので、その点で今回の目玉はルーヴルにある” The Virgin and Child With Saint Anne” (1508-10)- 『聖アンナと聖母子』とその元画とされるロンドンNational Galleryの所謂” The Burlington House Cartoon” (1498) - 『聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ』の並びあたりだったかも。このふたつを眺めているだけでダ・ヴィンチの底知れぬ恐ろしさ – 情念みたいのがじわじわ滲んでくるのだった。

絵画以外(いや、これも絵画なのかな)ではInfrared reflectogramを通した作品(写真、でよいの?) – 白貂の他にはモナリザとか代表作いっぱい - が結構並んでいて、でもこれってどうなのかしら? って。 いま丁度National Galleryでも“Leonardo Experience a Masterpiece”ていう展示をやっていて、そこでは彼らの所有している『岸壁の聖母』にフォーカスして洞窟の光の具合(一日の変化を追って)までシミュレーションして解析していたりするのだが、ある絵画が、その下絵も含めてどんなふうに重ねられ試行しつつ描かれていったのかその痕跡を追う - TV番組ふうに言うと彼の創作の秘密を探る、って、あんま興味ないの。知ればおもしろいのだろうけど、へー、で終わってしまう気がする。自分のふたつの肉眼を通して見えるものがすべて、でよいのではないかしら?  お料理の食材や調理方法を解析して化学式のレベルまで掘っていくのと、それがおいしいおいしくないっていうのは別の話で、ダ・ヴィンチって500年経ってもおいしいままだからその謎を調べたくなるのはわかるけど、結局彼はこんなにも天才だったの … ってその一点をぐるぐる回っているだけなのではないか、とか。

でもいろんな絵にじっとり浸かることができて、新年のいっぱつめとしてはよかったかも。カタログは重かったし、2011年のがあるからいいや、にした。

戻りは電車で、パリ北駅までの交通は前回ほどひどくはなくて、慣れたもん、になっていたかも。これならもう一回くらい日帰りしてもいいかも。

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