2.23.2017

[film] Arrival (2016)

19日の日曜日の昼、Leicester Squareでみました。
もうロンドンでは一館だけ、一日一回のみの上映となっていたので少し慌てて。

もう何回も言っているし、何を言っても変わらないだろうけど、日本の洋画の公開タイミングのどうしようもない遅さはなんとかならないものか。
提灯評論家向けの試写内覧とかくだんない業界内のプロモだのコラボだのノベルティだの、何十年昔のビジネスモデルでいつまで続けていくつもりなのか、公開されるのを口を開けて待つしかない一般市民としてはこんなの虐め以外のなにものでもない。 "Trainwreck”(これ2015年の映画だよ)を今頃公開したり、"20th Century Women"が6月だったり、ふざけんなだわ。(と言ってみたところでだーれも動かないだろう。 だーれも切実に思っていないのだろう。 今の配給会社と業界の関係って、今の政権とメディアの関係とおんなじようだ。 「お互いにとっての利益」(のみ)がベースの気持ち悪い馴れ合いしかない)

さて"Arrival"。
始めにLouise (Amy Adams)の一人称で娘 Hannahの誕生から病気による死までが短い映像と共に綴られ、「これは始まりだったのか終わりだったのか」と。
言語学者の彼女が大学に講義にいってみるとニュースで大騒ぎになっていて、宇宙船みたいな縦長の岩みたいなでっかいのが世界のあちこちに現れて宙に浮かんでいる。

そこから彼女は軍に呼び出されて物理学者のIan (Jeremy Renner)含むチームに入って「彼ら」とのコミュニケーションを試みろ、と言われる。 彼らがなにを求めて、なにを狙ってやってきたのかを探れ、と。  
厳重な装備で膨れあがった状態ででっかいうんこ岩のお尻から上方に登ってみると重力は関係なくなって、向こう側にイカみたいなタコみたいのがぼんやり現れてぶおーって言ったり墨みたいのを散らしてくる。
そんなセッションを何度か繰り返し、それらを解析していくなかで、頻繁にフラッシュバックされるようになる娘の記憶と、他の国との解析競争の果てに中国が出したやばい結論と、で、結局のとこあの連中はなんだったのか、なにをしたかったのか。 タコなのかイカなのか。

宇宙のどこかから見たことのないものがやってきた、ていうとき、戦争になったりパニックになったりホラーになったりコメディになったりいろいろあるわけだが、それ以前にいろいろ考えたりするよね当然、というのはもっともなのだが、いつタコの回し蹴りが飛んでくるかわくわくしていた人たちにはちょっと不満かもしれない。

記憶とは、物語とはなにをもってひとつのかたちに完結したり収束したりするのか、完結しなきゃいけないのか、それはなんでなのか、それはひとの生とか自我に、ひととひとの生(複数)にどう関わりを持つのか、ていうような極上の大風呂敷を広げてくれてなかなか気持ちよいの。 ありがとうタコ(or イカ)。

これを見てしまうと『未知との遭遇』での接近遭遇はなんとシンプルでわかりやすかったことか。
軍の関係者にまずあれ(5音階)をやってみないか、て言いだす人はいなかったのかしら。

エンドクレジットで原作がテッド・チャンの『あなたの人生の物語』であることを知って、いろいろびっくりした。読んでたのになんでひとかけらも思いつかなかったのか、そしてそれでもなお、ひと筋のかけらも思い出すことができないのか。 どんなお話だったんだっけ... ?  - 記憶の非対称性よね、とかほんのり甘いことを思ったりして(殴)。

誰もが指摘するであろうが、ところどころTerrence Malickの風と光が吹いてきて、それはある意味納得がいくことでもあるの。
彼もまた 「あなた」 - 決定的だったのにどっかにいってしまった「あなた」の人生をたらたら追いまわして噛み続けている - なぜならそこにしか自分の生きている価値も意味もないから -  へんてこな作家であるってこと。

あと、連中になんにもしないで放置、ていう策をやってみよう、ていう国はいなかったのかしら。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。