金曜日の晩、眩暈と吐き気で死にそうだったのだが、とにかく吉祥寺に出て見ました。
爆音映画祭のラスト(後夜祭の手前)、シークレット上映作品『ビースティー・ボーイズ 撮られっぱなし天国』。
Adam Yauchさんが亡くなってもう2ヶ月、我々はちゃんと彼のことを追悼できていない。
みんなそれぞれ忙しいし戦っているし、彼はそんなのやるなって言うに決まっているから、誰もなんもやらないのだとおもうが、でも、追悼とは言わないまでも、彼から貰ったいろんなものに対してありがとうを言うくらいの場とか機会はほしい、と思っていたら爆音がやってくれた。
Beastie Boys、彼のいた3MCsのライブ映像を、彼が企画して、彼(Nathaniel Hörnblowér)が監督して、彼の作った会社(Oscilloscope Laboratories)がリリースした作品。
湿気がうっとおしくてしょうもない金曜の晩の90分、90分だけ、この映画をがんがんに鳴らして、体を揺らす、たった一回だけでもそういう機会を作ってくれた爆音の人たちに本当に感謝したい。
映画の話はいいよね。 ファン50人にHi8 Cameraを持たせて会場に散らして、好きなのを好きなように撮ってよし、けどカメラの電源だけは切るなよ、といって集まってきた映像をこまこま編集した60000カット(主催者発表)。
わたしは2004年10月9日、このライブの場にいた。 まんなかより後ろのステージ向かってやや右。だからどっかに後ろ頭くらい映っているかも、と今回もじーっと見てみたのだが、映ってはいないようだった。
それから、2006年3月28日、この映画の完成披露、NYプレミアの会場にもいた。(IMDBのこの映画のページに貼ってある写真はそのときのもの)
Adamさんの姿 - ばりばりのスーツだったけど - を見たのはこれが最後となってしまったのだなあ。
ライブ映像については、こんなもんかー、と。
客席に持ちこまれた50台のカメラがもたらしたのは、ものすごく革新的なアングルとか、インタラクティブうんたらな可能性とか、そんなのとは程遠い、男子便所からの実況とか、そんなようなもんでしかなかった。 しかし、それこそがBeastie Boysのライブのコアであるところの百姓一揆にも似た絞まりのなさ落着きのなさに直結するなにか、なのである。 これこそがU2とかColdplayとか、ライブ設備にばかみたいな投資をする代理店連中とはぜんぜんちがう、でも画期的ななんかなのである。 たぶん。
(このかんじを今週NYでプレミアされるLCD Soundsystemのラストライブの映像がどうかもっていますように...)
この映画が撮影された当時のことを、若い人たちには説明しといたほうがよいのかもしれない。
ブッシュの最初の4年 - 911を始めとして、とにかく最悪だった4年間が終わろうとしていて、大統領選の直前で、しかし彼の再選を阻止することは難しい、ケリーでは勝てないことが既に多くのひとには判っていた、そういう、どんよりと暗い時期にこのライブは撮られたの。
ラストの"Sabotage"があんなふうな、ライブハウスみたいな狭さを感じさせる突進モードで撮られているのはそういうわけだ。ブッシュ再選断固阻止、だったの。
みんなほんとにやけくそになって叫びまくっていた。 それしかできなかった。 叫びすぎて酸欠で視野が狭くなって、MSGがO-Nestくらいにかんじられた。
爆音でそこらへんのかんじが少しでも伝わってくれたらなーと思ってみてた。
そして、この上映が反原発のデモと同じ金曜日に実行された、というのも決して偶然ではないのだと。
でも、あたりまえだけど、やっぱしライブにはかなわないもんよね。
Mix Master Mikeのプレートが地殻にどすんてぶちささるように重いターンテーブルの音は、あれはライブでないと。
しかし、ステージでひょこひょこ踊ったり歌ったり、バックステージでにっこりしているAdamを見ているとまだ彼がいなくなったことが信じられなくて、なんとも言えなくなる。
もういっこのBBみたいに、結成50年とかで"Body Movin'"とかをよれよれ演ってくれると思っていたのにさー。
そして、彼のチベットをはじめとする世界への非暴力への希求が、今ふたたび、Intergalacticに飛んでいきますように。
7.17.2012
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