12.02.2019

[film] Making Waves: The Art of Cinematic Sound (2019)

11月17日、日曜日の午後にCurzon Bloomsburyのドキュメンタリー小屋で見ました。映画における音/音響の製作に関わるドキュメンタリー。めちゃくちゃおもしろかった。

人間の知覚で最初に生まれるのは聴覚なのです、胎児は聴覚(≠視覚)を通して最初に世界はこういうもの、という感触を掴むのです、音はそれくらい重要な要素なのです、という導入。

映画で使われる音はどんなふうに作られたり加工されたりあてられたりしているのか。この分野の大御所のWalter MurchやBen Burtt、SpielbergのSound Effect担当のGary Rydstrom等の代表作(監督の側からのコメントもあり)で、彼らが作って被せた音のいくつかを紹介しつつ、それらがいかに映画のダイナミズムと不可分でその迫力とか雰囲気作りに貢献しているか、等が紹介されていく。”Saving Private Ryan”(1998)の冒頭20分の音はあそこだけで2週間掛けているとか。

映画から聞こえてくる音の構成要素をVoice, Special Effect, Musicに分けて、更にVoiceをProduction Recording, Dialog Editing, ADR (Automated Dialogue Replacement)に分解して、Special EffectをSFX, Foley, Ambienceに分解して、それぞれでこんなことを、こんなふうにやっています/やってきました、という例示がいっぱい。もちろんMusicは当然あって、最後にこれらをオーケストレートするMixingのことも忘れないでね、と。

個人的に映画の音を最初に明確に意識したのはもちろん77年の”Star Wars”で、Ben Burttさんの名前はこの頃から知っていて、やっぱりああいう人だったのね、とわかって嬉しかったし、あとはいろんなネタがたっぷりで感心することばかり。 “Top Gun”(1986)のジェット機の音は実際の音はうるさくて使えないので、動物園で録ってきた音を使ったとか、劇場でずっとモノラル再生のみだったのをステレオ再生式に変えたのは”A Star Is Born” (1976)の時で、Barbra Streisandはこれのために$1 Milを自分のお財布から出してて、でもお金は返してもらってない、とか。

“Apocalypse Now” (1979)のサウンドスケープに大きな影響を与えたのが富田勲の『惑星』(1976)だった、と。冒頭のあのヘリの音の遷移はあれだったのかー! とか。『惑星』って出た頃に聴いて再生はしょぼいラジカセだったけど夜中、すごく怖くて気持ち悪くなったのよね。

映画の映像を通して目に見えるもの、についてはこれはセット、これはロケ、これはCG/SFXって目に見えるけど(勿論、見えるからわかる、それってなぜ? っていうのはそれでいっこのテーマだとは思うけど)、音については目に見えない分、背後ですごいアーティスティックな努力と労力が注がれているのはわかって、今回紹介されたのはその一端の数例で。

もう少し知りたかったところは、少しだけ触れられていたDolbyとかの音響技術やデジタル化がどこでどんなふうに適用されて、どの辺がブレークスルーになったりしたのか、とかそのへん。

あと、日本の映画でも特撮を始め音への執着は相当にあったはずなので、同様の歴史を追ったものがあったら見たいな。

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