11月30日、土曜日の午後、CurzonのBloomsburyで見ました。”Looper”(2012)、“Star Wars: The Last Jedi” (2017)のRian Johnsonの新作。 邦題は子供向け探偵アニメみたいなのが付いててバカっぽいけど、ああいうのとはぜんぜん違う。名探偵が鮮やかに謎を解いてみせましょう、みたいなのではないの。
大金持ちの犯罪小説作家 - Harlan Thrombey (Christopher Plummer)が自分の邸宅で85歳の誕生パーティを祝った翌朝、屋根裏のような自室で首を切って亡くなっているのが見つかった。果たして自殺なのか他殺なのか? 自殺ならなんで? 他殺ならだれが?
その時に屋敷内にいた主な人々(多くはその屋敷内に暮らしている)は、娘のLinda (Jamie Lee Curtis)とその夫のRichard (Don Johnson)、その息子で不良孫のRansom (Chris Evans)、亡くなった息子の妻/義娘のJoni (Toni Collette)、末息子でHarlanの出版元を管理経営しているWalt (Michael Shannon)、Harlanの身の回りの世話をしているナースのMarta (Ana de Armas) 、あと"Great Nana”と呼ばれて殆ど動かない地蔵のようなHarlanの母がいる。
で、ここにどこからか探偵のBenoit Blanc (Daniel Craig) – 彼は誰が自分を雇ったのか知らない、郵便受けに札束が放り込んであったから、という - と警部2名が現れてひとりひとりからその晩になにがあったのか聞き取り調査をはじめる。
それぞれの供述と、探偵に語られているのかいないのか定かでないのだが見たこと聞いたことに基づいたその晩の出来事が順番に映像として流され組み合わされて、通常の推理ものだと、それぞれで映し出された記録がどこかで食い違っていたり辻褄が合わなくなったりしてきて、ではここを掘ってみましょうか、になると思うのだが、この映画の場合にはそれがなくて、全員の語ること見たもの聞いたものはどれも整合しているようで、それが時間の経過と共に順番に明らかにされていく、探偵はそのひとつひとつを追って検証していく、勿論それらを見渡す深さとかその先を見たり峻別したりする目はあるようなのだが、所謂名探偵による謎解き、とはちょっと違う展開のやつ、というかんじはする。
どちらかと言うと屋敷内にいる雑多な人々が当主の死とそれに続く遺産相続を巡って各々の本性を徐々にむき出しにしてどろどろ喧嘩を始める、そのどたばたのアンサンブルを描く、アルトマン映画のようなところを狙ったのではないか。というふうに見てみると、一代で財をなしたワンマン経営者とその傘の下で同様に肥大して腐ってしまった一族の面々、その家に雇われて大事にされている献身的な(不法滞在)移民の娘、って、奴隷制の時代から余り変わっていないありそうな構図が見えてきて、そういう中で浮かんでくる犯人像もまあそうだろうな、くらいなので、飛びだしナイフのようなショッキングな結末とか、そういうのは来ないの。ちょっとしたツイストが入るくらい。 隔絶された異世界のからくり迷宮屋敷を舞台にしたどんでんミステリー、というより割とそこらに転がっていそうなありそうなご家族抗争物語、みたいな。
でもご覧のようにキャスティングはド豪華なので、それぞれの演技合戦をお正月映画のように眺める、だけでじゅうぶん楽しむことはできるからよいのか。 欲を言えば一族内部のぐさぐさした憎み合い刺し合いがもっとねちねちかつやかましく表に出てきたらおもしろくなったのに、というかそういうとこをもっと見たかった。
お屋敷のからくりはそんなに大したことなかったけどインテリアとか小物類は素敵なやつがいっぱいで欲しくなる。老作家(しかも犯罪小説作家)絡みのミステリーなのだから積んである本の奥からいろいろ湧いてきてほしかったなー。
12.04.2019
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