8日、日曜日の午後、”Motherless Brooklyn”の後に、Picturehouse Centralで見ました。
9月に見た”For Sama” (2019)と同様、市民への爆撃が続くシリアの医療の現場を取材したドキュメンタリー。
監督は、”Last Men in Aleppo” (2017)のFeras Fayyad。場所はダマスカス東にあるGhoutaで、冒頭、街の全景を映し出した静かな映像に突然ミサイルが3つ撃ち込まれて煙にまみれる。
これが日常なので常に怪我人が運び込まれてくる病院は、その地下にCaveと呼ばれるネットワーク状のトンネル穴を掘って深く広く張り巡らせて、子供たちをここに避難させるし、爆撃がひどくなると医師も患者もここに逃げられるようになっている。主人公はここの病院の責任者である医師Amaniで、フィルムの中での誕生会のシーンでは30歳、と言っているので少し驚くのだが、医師全員の選挙を通してきちんと選ばれているのだ - と、こんな女の医者になにができる?女は家で家事をやるもんだろ、といちゃもんをつけてきた男に男性の医師が説明したりする。
飛行機の音がすると戦闘機? といちいち怯え、爆撃のたびに運び込まれてくる病人怪我人で床は血まみれで鳴き声叫び声が止まない、でも医師は冷静にならなきゃだし患者さんも落ち着いてね、とiPhoneでクラシックを流しながら手術をしていたり。
Amaniはいつも落ち着いていてもの静かなのだが飛行機の音で怯えるし涙もぽろぽろ流すし、戦争が終わったらマスカラ買うんだーとか言っていたり。彼女が誰もいない夜の通りをひとりで歩いていくシーンは本当に寂しそうでつらくて。
もう一人、料理担当の看護婦のおばちゃんがいて、彼女の料理の失敗成功 - 食材が乏しいから - が楽しくて少しだけ場が解れる。(”For Sama”にもそういう人がいた)
でもやはり病院は収容される人が増えれば食べ物も薬も足らなくなるし、衛生状態は悪化し、特にずっと暗いところにいる子供たちは栄養失調に.. など問題はいっぱい出てきて、最後の方に投下されるロシアの化学兵器のところは、恐怖しかない。「怪我をしていないのになんでそんなに苦しんでいるの?」から始まる地獄は、どんなホラー映画もふっとぶくらいにただ怖ろしい。
大人でも子供でも、人に対して(動物に対してだって)なんでそんなことができるのか。石を投げることだっておそろしいのに、鉄の塊とか爆弾とかで殺傷する、それでも足らずにナチスのガス室と同様のことをオープンエアでやる(人だけじゃない、犬も猫もみんな死んじゃうんだよ)。
見ていてとにかくつらいばかりだし、そんなの現地の人たちが見ているそれと比べられるものではないけど、これは見なければいけない。お金を払って見て、その内容を書いて広めて、少しでも映画を作った人のところに支援がいくように、日本のロシア寄り利権がこの地獄に加担していることを少しでも知ってもらうためにも。 日本もアメリカも既にじゅうぶん酷いものだしそこここにいろんな地獄が溢れている今の世の中でも、ここまで酷くて惨いのはないと思うし、アウシュヴィッツや原爆を経てもなおもこういうことは起こりうるのだ、ということ。
最後は”For Sama”と同様、これ以上ここにいることはできない、と病院を出ていくことになるのだが、出ていったから助かる、というものでもないし、こういう場所で病院がなくなる、ということはそこにはもう生はないのだ、と。
エンドロールで、映画の製作中に亡くなられたスタッフの名前(複数)も出てくる。 洞窟の奥からそこまでして届けられたなにかなのだと。 日本でも公開されますように。
UKの選挙、結果を見て吐きそう.. あーあ ...
12.12.2019
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