8日、日曜日の昼にPicturehouse Centralで見ました。Jonathan Lethem原作、Edward Norton監督・主演による探偵もの。今年のNYFFのClosing pieceとなった作品で、Opening – “The Irishman”、Centerpiece – “Marriage Story”と比べると上映後の反応がやや静かめだったので大丈夫かしら? だったのだがとてもおもしろかった。 “The Irishman”より好きかも。
舞台は原作の90年代から50年代のNYに移されて、結果探偵ノワールぽくなる。
トゥレット症候群と映像記憶を抱えているLionel Essrog (Edward Norton)は、彼と同僚3人を孤児院から拾いあげてくれたFrank Minna (Bruce Willis)の探偵事務所にいるのだが、ある日Frankとクライアントの駆け引きの場が紛糾して彼は車で連れ去られ、追っていったLionelの前で彼は撃たれて亡くなってしまう。
Frankへの恩に報いるため、彼のコートと帽子を被ったLionelは彼が何を調査していたのか誰とトラブルになっていたのかを追い始めて、Frankが出入りしていたハーレムのJazzクラブの女性Laura Rose (Gugu Mbatha-Raw)と彼女の属する市民グループ、彼らが抗議する先にいる市当局の大物Moses Randolph (Alec Baldwin) - 都市再開発の名の元に古い建物を荒っぽく巻きあげて隔離政策を進めようとしている - に行き当たり、Lauraの父Billy (Robert Wisdom)、Mosesに反発している弟Paul (Willem Dafoe)とも会って調べを進めていくときな臭いことがあれこれ起こって、Lionelもぶん殴られたり脅されたり駆け引きされたり。
Lionelには先天性の障害があって、思ったこと閃いたことがそのまま反射的に口に出てしまったりして、それが彼の捜査の進行に独特のリズムというか拍を持ちこんで、そこに50年代のハーレムのJazzが絡んでいくとやばさ気まずさ後ろめたさも含めたクールネスが際立って、(こういう言い方が正しいのかどうか、だけど)よいの。
ノワールとしてどうか、というと背後にある奴がでっかくて間抜けでみっともないので、そういうドラマにはあんまり向いていない題材だったかも。Alec Baldwinは彼のTrump芸をほぼそのままのように流していて、それが違和感なく整合してしまう。そういう時代、でいいのかしら? (Moses RandolphのモデルってRobert Mosesなのね。ふうむ)
感触としては、Wes Andersonの“The Grand Budapest Hotel” (2014)とか“Isle of Dogs” (2018)の辺りとか(俳優も結構重なっている)。Motherlessで傷を負った子供や犬達が過去の恩義を背負って大きな陰謀や歴史の流れに挑んだり「父親」に抗おうとするドラマ。 背景を50年代のNYに置いた作り込み感(高い場所とか隠し札とか)もこの辺を意識したのではないかしら。 原作があるのでしょうがないけど、もっと変な人がいっぱい出てきたり、マジック・リアリズム的な出来事が降ってきたりするともっとおもしろくなったかも。
という見方もできるし、”The Irishman”と同様にいまのアメリカ(の都市)はこんなふうにできていった – 表社会と裏社会のせめぎ合い - その対流を生んだ理念とか起源を辿る旅の映画、として見ることもできるのかもしれない。そういうテーマと時代を追ったものがなぜ今、というのは...
Thom YorkeとFleaによるテーマ曲はふつうにJazzしててよいのだが、Daniel Pembertonによるサントラも悪くないの。 こないだの“The Cool World“ (1963) のように、背後でずっとバンドが演奏していて切れ目になんか喋る、くらいでもよかったかも。
俳優はみんなうまいしアンサンブルも含めて申し分ない。けど、(これはWes Anderson映画でも感じることだが)基本的に男の(男の子の)世界の物語なんだよね。
12.10.2019
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