まだ書いてなかったやつがあったのでふたつまとめて。
6月29日の晩、BFIのIda Lupino特集で見ました。邦題は『地獄の掟』?
監督はDon Siegelで、脚本はIda LupinoとCollier Young(Idaのex.夫)の共同、主演の刑事のひとりHoward Duffは当時のIdaの夫、という”The Bigamist” (1953)にあったかんじで、BFIの上映時に配られたプリントにはDon SiegelのAutobiographyからの抜粋があって、これの監督をIdaからの依頼で受けたときの経緯とか彼女との対話とかいろいろおもしろいの。
丁度彼女が彼の“Riot in Cell Block 11” (1954)を見た直後で絶賛してくれて、数字の11は使っちゃったから彼女用に36を使った、とか、これをFamily Pictureだよね(先のような旦那衆事情による)、というDon Siegelに困惑する彼女とか、なんかわけわかんない。
そういうのはともかく、Film Noir、犯罪映画としてはぞくぞくするくらいおもしろかった。
NYで盗まれた札束入りの鞄にあった$50札がLAで見つかって、担当になったふたりの刑事コンビ - Cal (Steve Cochran) とJack (Howard Duff) - が捜査を進めて、その札が使われたナイトクラブで犯人と接触している歌手Lili Marlowe (Ida Lupino)をなだめてなんとか動かして一緒に競馬場とかに張りこんで、ようやくそれらしいのを見つけて車で追っかけたらそいつは車ごと崖から落ちて死んじゃうのだが、そのトランクからはほぼ無傷の札束鞄が見つかって、JackはCalが札束を自分の懐に入れるのを見て「あっ」てなって、やがて現場で紛失した札束の調査も始まってしまい、でもJackはCalの犯したずるを上には言いだせなくてどうしようどうなっちゃうのか…
LAの闇社会の突端でがんがんにデバって実績もあげていた刑事が捜査の過程で協力要請したクラブ歌手と恋に落ち、更に仕留めた犯人の札束にも引き寄せられて、でもそんなぐだぐだの果てに彼らを待っていたのは... 別に”Private Hell”というほどのものではないのでは... とか思っていると最後にとんでもなく非情なやつが来るので戦慄する。
特にラストのショットはなかなか衝撃で、客席からなにかに押されたかのような放心の拍手が出ていた。
The Trouble with Angels (1966)
6月30日、土曜日の夕方、BFIで見ました。 Ida Lupino特集のラストで、これが彼女が最後に監督した映画作品。(この後、TV作品は監督している) 邦題は『青春がいっぱい』?
タイトルロールからお茶目なアニメーションが入って(エンドロールでも入る)、明るい青春どたばたモノなのね、というのがわかる。(ブレッソンの”Les Anges du Peche” (1943) -『罪の天使たち』みたいなやつかと思ってた..)
アメリカの田舎のカトリックの修道女になるための学校 - St. Francis Academyに電車で新入生がやってくる。Mary (Hayley Mills)とRachel (June Harding)のふたりもそうで、どっちも派手な恰好でタバコをふかして神様しらねえ修道女なんてやってられねえ、ていうノリで、他方、彼女らを迎える学校側は、Mother Superior (Rosalind Russell)を中心にいろんなシスターがいて厳かなのだが、ふたりはそんなのお構いなしで、春夏秋冬いろんな悪戯や騒ぎを仕掛けていって止まらない。映画はそんな悪ガキエピソードが繰り返されていくのだが、Mary (Hayley Mills)はだんだんにSister SuperiorのSuperiorなところが気になって、なんでそんなに聖人でいられるのあんた? って揺れて傾いてきて、あたし将来どうしようかなー、になっていって、最後はなんかよかったねえ、になる。
脚本とか初めからきちんと練られて作られているふうで、監督Ida Lupinoの過去作品にあった精緻な心理描写とその織物みたいのはあまり感じられないのだが、それでもほぼ全員が老若の女性キャストで、女性による女性のための映画にするんだから、という意思に貫かれた楽しい青春映画になっていてよいと思った。
(ほら、どうしても男性が撮ると徒に陰惨だったりやたらゴスしてたりおお神さま、になりがちな気が)
Rosalind Russellが演じたMother Superior、最初はGreta Garboにオファーが行ったって。
Garboが演じたらすごかっただろうなー。
7.23.2018
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