20日月曜日の晩、BFIでみたPreview。 先週の終わりくらいに突然発表になって、前売り開始は18日,土曜日の昼間で、その日はバーミンガムに絵を見にいっていたので、忘れないようにしなきゃ、だったのだがバカみたいに当ったり前のように忘れて、夜にアクセスしたら当然のように売り切れてて、ううむ、とか言いながら当日月曜日の昼間に釣り糸を垂らしてみたらなんとかいちまい釣れてよかった。
"The Room"という2003年リリースの映画は、月1回くらいのペースでPrince Chaeles Cinemaで上映されていて、黒髪長髪のターミネーターみたいな男の暗い顔がクローズアップされたそのポスターは、それだけだと何の映画だかまったく謎で不明で、宣伝のされ方からするとどうもカルトっぽくて、自分はまだ映画のいろいろを勉強しているところなので、こういうカルトふうはいいや、って放っておいた。
で、この"The Room"を作った監督&主演のTommy Wiseauとそのバディでラインプロデューサーで主演のGreg Sesteroが2013年に出版したノンフィクション本を元に、なんで、どうやってこの映画ができあがったのかをプロの俳優とかスタッフを使って(いや、”The Room”もそうなのだけど)ちゃんと描いた実録モノがこの”The Disaster Artist”で、その辺のことを一切知らずわからずに初めてこれの予告を見たときは、「なんじゃこりゃ?」て途方に暮れるしかないのだった。
"The Room"のことをもう少し書くと、年齢も出自も一切不明(未だに不明)のTommy Wiseauがどこからどうやって調達したかわからない(未だに謎)$6millon (推定)で製作した映画で、公開時は2週で$1,800 の収益しかあげられなくて、「史上最悪の映画」ていう評判が高くて、とにかくいろんな伝説にまみれてて、だから(なのに)えんえんいまだに、本国じゃないLondonあたりでも上映され続けているの。
上映前に監督&主演のJames Franco(Tommy Wiseau役)、同主演のDave Franco(Greg Sestero役)による椅子に座った長めのイントロがあった。はじめに司会のひとが、客席に向かって「この中で"The Room"を見たことのあるひと?」てやったら9割くらいが「いえーい」てかんじで元気いっぱいに手をあげたのが衝撃だった。 Sold OutしたのはFranco 兄弟が来るから、というより"The Room"の制作譚を見たかったからなのね ...
James Francoがこの映画を知ったのは公開当時、ハリウッドでこの映画のビルボード(5年もそこにあったという)を見て、ものすごく変で異様な印象を受けて、なぜかというとそこにはでっかく電話番号が載っていたから、だと。 でも映画を見てとてつもない衝撃を受けてDaveにとにかく見ろ!、と伝えて、Daveはシカゴのホテルで見てものすごく感銘を受けた、と。
あとは、Tennessee WilliamsとかJames Deanとか、James Franco観点での微妙にくすぐられるところとか。
Tommy & Gregにはこれの続編の構想もあったのだが、最近彼らと話しをしたら、この作品がトリロジーの2作めになる可能性がある、とか..
とにかく映画が始まると、冒頭でKristen Bellを始めとしたハリウッドセレブ達が”The Room”のことをものすごい言葉で絶賛しまくってて、そのなかには J.J. Abrams なんかもいて、とにかくすごい映画なんだからさ、と。
映画は90年代末、俳優を志していたGreg Sestero (Dave Franco)は稽古場で出会った同じく俳優志望のTommy Wiseau (James Franco)と友達になって、Tommyに誘われるままにLAに移動して(彼はなんでかLAに部屋を持っていた)、ふたりで一緒に暮らし始める。Gregにはエージェントも見つかって始めはうまくいきそうだったのだが、Tommyのほうはぜんぜんだめで、Judd Apatow(本人)にこっぴどく叱られたりしたので、自分たちで映画を作ることを決意して、がんばって脚本を書いてスタッフ(スクリプターにSeth Rogenとか)を集めて撮り始めるのだが、Tommyは映画なんてやったこともないし、演技は素人以下でものすごいので、現場はDisasterとしか言いようがなくなるのだが、Disasterなのはおまえだろ、ってみんなが突っこんで、でもとにかく映画は出来あがって、世紀のプレミアの晩がやってくる...
映画製作の現場がどんなものかわからなくても、映画の演出とか演技があんまわからなくても、これが事実だとしたらとにかくすげえな、ひでえな、としか言いようがないのだが、それはそれとしてこの"The Disaster Artist"が映画としておもしろいことは確か。 James Franco監督作って、William Faulkner原作の2本を含めて見たいようと思いつつ見れていなかったのだが、彼の辺境アート、映画、コメディ、スラップスティック、バディもの、などに対するいろんな愛が炸裂して、そのスピード感も込みで一気に見せてしまう、その勢いがすばらしい。 演技陣も"This Is the End" (2013)みたいにいろんなひとが次々とうじゃうじゃ出てくるし。
エンドロールで、"The Room"の画面とそれをカバー/コピーした"The Disaster Artist"の画面が対比されてて、それを見るとますます"The Room"を見たくなって、帰ってからPrince Charles Cinemaのサイトを見てみると、2月にTommy & Gregが参加する上映会があると。
あと、これの翌日(21日)にはここで、James & DaveとTommy & Gregが参加しての"The Room"と"The Disaster Artist"の2本立てがあることがわかったのだが、どうすることもできないわ。 と思っていたら22日の21時に上映されることがわかったので慌てて行ってみた。(こういうのは冷ましたらあかん)
The Room (2003)
そしてこうして、22日の21時、Prince Charles Cinema。 まず上映前の行列がすごかった。
で、中に入ると前のほうの席が割と空いていたので一番前に座った。(これがしっぱいだったことが後でわかる)
本編が始まる前にTommy本人が画面に登場して、楽しんでいってくれ、スプーンやフットボールとかをスクリーンに投げちゃだめだよ、とかいう。
客席はこの時点で相当な歓声と拍手でヒートアップしていて、これってやばいほうのカルトなのか、とか思って少しだけ帰りたくなる。
ストーリーはシンプルで、銀行員をしているJohnny (Tommy Wiseau)は結婚前提でLisaとサンフランシスコのタウンハウスに暮らしていて、Johnnyはとっても幸せなのだが、Lisaはそうでもなくて、Johnnyの親友のMark (Greg Sestero)をしょっちゅう家に呼んでやらしいことをいっぱいしていて、Lisaのママとか友達はJohnnyはいい奴なんだからそういうのをやめるようにLisaに言うのだが、Lisaは結婚するつもりはないわ、ってやめなくて、やがて全てを知ったJohnnyは...
それだけなの。 見たことないけど、最近の昼メロとかのがもうちょっと高度で複雑かも。
画面もアクションも台詞もどれも繋がっていかないでがたがただし、基本の基本からできていないぜんぜんだめだめなやつなのかもしれないけど、ここまでアブストラクトに攻められるとひょっとしたら、という気がして、柳下さんがいつもぶっ叩いている邦画のしょうもないのとは根本からなんか違うかんじはする。
だって、なんといっても集まった客席の熱狂ときたらとてつもなくて、というか、映画がスカスカの突っ込みどころ満載なので、そこに全員が全力で突っ込むことではじめて映画が完成する、そういうあたりを狙ったアートではないか、とさえ思えてくるの。
よくわかんないやつが登場すると、「おまえ誰だよ?」 とか、ひとが部屋に入ってくると「ドア閉めろー!」(ほんとに閉めないからさ)とか、出ていこうとすると「もう帰るのか? それだけか?」とか、台詞も紋切り型でよくわかんないのが多いし、でも有名な台詞はみんなで復唱するし、フットボールを投げ合うところは1.2.3.4.てカウントするし、Lisaが邪悪になってやらしいことをする場面になるとスクリーンに向かって大量のプラスチックのスプーンが投げ入れられて、前方に座っていると頭に刺さったりスプーンまみれになる(使用済みじゃないだけよかったな..)。
こんなふうな客席からのわーわーが99分、ノンストップで続く。
昔の”The Rocky Horror Picture Show"の上映会(ていうのがあったのだよ、子供たち)の観客参加型に近いのかもしれないが、あんな統制のとれた楽しいものではなく、アナーキーでひとりひとりがばらばら勝手につっこんだり、悶絶したり、そっくり返ったりしている。 でも「金返せ〜」みたいな怒りをこめたやつではなくて、みんな笑って楽しんでいるのだからよいのではないかしらん。誰がどうやってここまでのものになっていったのか、はとっても興味ある。
あと、これひょっとして中毒性ある? もう一回見にいって試してみるべきかどうか、少し悩みはじめているの。
"The Disaster Artist"は是非日本でも公開されてほしい。 けど、"The Room"も併映しないとあんま意味ない、というかどっちみち絶対に"The Room"見たくなるからー
RSDのBlack Friday、会社終わってすぐにRough Tradeに走ったけど、ぜんぜんどうってことなかった。Black Fridayってやっぱりアメリカのもんなのね。
11.25.2017
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