11.08.2017

[film] Alice in den Städten (1974)

10月22日、日曜日の夕方、BFIで見ました。 “Alice in the Cities” -『都会のアリス』
1本だけ生き残っていた(サバイバー)16mmからリストアされた版のBlu-Ray発売記念とか、LondonのPhotographers' GalleryでやっているWim Wendersのポラロイド写真展示"Instant Stories. Wim Wenders' Polaroids"とかにあわせての1回きりの上映。
上映後にWim WendersとのQ&A。

ライターのPhilip Winter (Rüdiger Vogler)がアメリカの中西部をポラロイドで写真を撮ったりしながらひとり車で旅していて、でも締切までに文章を書けなかったので切られて、ならドイツに戻ろうと(PanAmビルで)手続きをしていたら、同じくドイツに戻ろうとしている女性Lisaとその娘Alice (Yella Rottländer)と会って、英語も不慣れなようなので助けてあげるのだが、出発の直前にLisaは片づけなければならないことがある、とAliceをPhilipに押し付けてどこかに消えてしまい、アムステルダムに着いても現れる気配がないし、そのままアムステルダムにいてもしょうがないので、警察に届けをだした上でドイツのどこかにいるらしいAliceの祖母を探して車でのふたり旅にでる。 でもおばあちゃんの家がどんなかは番地も書いていない一枚の古い写真と、あとは彼女の頭のなかにしかないので大変で、Wuppertalに行ったりRuhrに行ったり転々としていながらだんだんと楽しくなっていくのだが、他方でいつまでも連れまわすわけにもいかないし。

所謂ロードムービーと呼ばれるジャンルの1本で、主人公たちが特定のシチュエーションや設定のなかで動くのではなく、旅や移動をしながら、その途中で遭遇する出来事や風景のなかでどう変わったり動いたり消えたりしていくのかをダイナミックにとらえていくようなやつで、風景が変われば人も変わるよね当然、とか人も風景の一部としてうつろったり消えていったりするよね、とかいろいろあって、でもへたするとただの旅のアルバムになってしまうので、出てくる人の顔と、移動していく風景がどこまでどんなふうに頭の隅に残るのかが肝心なのかしら。

そういう点では前半のPhilipひとりがとらえるアメリカの風景と後半のAliceが加わったヨーロッパの風景のありようははっきりと異なっていて、それは違うもんなのだから違うだろう、ではなくて、異邦人として通過していくアメリカと、家族の記憶の断片を抱えた子供と共に路地のひとつひとつを凝視し、居場所を探しながら移動するヨーロッパはものすごくいろんな意味で異なっていて、それはアメリカ映画とヨーロッパ映画の違い、アメリカ音楽とヨーロッパ音楽の違い、といっていいくらいにくっきりと顕在化していて、そのスケールのでっかさに感動した。

もういっこは子供のAliceの目に映ったWonderlandならぬCitiesの、なんとか自分の帰るべき家を見つけようとするその先にある未開のごちゃごちゃした広がりとか驚異とか。
それはPhilipが撮るポラロイドの、真四角の一枚きり、その一瞬の写し絵にすべてが込められている、それがもたらす奇跡に近いなにか、に近いのかも知れない。

上映後のQ&Aでも、Wendersは撮影で使われた16mmとポラロイドによる別種のShareのありようについてきちんと説明していて、相当考えたのだろうな、と。 ただ、ポラロイドは撮ってその場で人にあげてしまうのも多くて、その部分も含めて独特でおもしろいメディアだと。

そういったところを踏まえてPhotographers' Galleryの展示 - 撮影された映画ごとだったり、地名ごとだったり(東京もあったよ)いろいろ - を見てみると、フィルムと同じくらい重要な位置を占めていることがわかる。

"they occupy a very special place in our relationship to imagery and to photography, certainly in mine" であると。

そうやって撮られた一枚一枚は朽ちていく色味と合わせてとても切なく美しくそこにあるのだった。
Instagramの話にも少しなって、あれはやっぱり全然違う種類の、冷蔵庫みたいなもんだと(ごめん、聞き間違えたかも)。

ポラロイドじゃない写真については特定の写真家に影響を受けたことはないって。映画を撮るようになってだいぶ経ってからWalker Evansを知り、あとはStephen Shoreくらい、とか。

個人的にはNYの昔のPanAmビル(現Metlife)の回転扉の向こうはこんなだったのかー、って。

あと、映画のなかのAliceは今はお医者さんになってて、3人の子供のお母さんなんだって。

明日からミュンヘンに行くので更新止まります。
がんばってチケット取った明日のFather John Mistyはおじゃんになってしまったが、さっき見てきたBiily Braggがすばらしすぎて年内いっぱいくらいは生きられそうな気がしてきた。 のでがんばる。

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