5日、日曜日の昼、パリ装飾美術館 - Musée des Arts Décoratifs - でChristian Diorの創業70周年を記念するレトロスペクティヴ - Christian Dior, Couturier du rêve -「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ展」。前売りはもう売り切れていたので10:20くらいに並んだ(オープンは11時)。陽は射していたがきんきんに冷えた朝で、その時間でも十分に列は延びていて何度か凍えて泣きそうになったが2時間後の12:30くらいに漸く入れた。
ふだんはまったくファッションとか装いとかに興味ないし同じ格好の繰り返しだしブチックをまわったこともセールに並んだこともないし、21世紀に入ってからのトレンドとかにはちーっとも興味が湧かないのだが、こういう展示になると狂喜して並んで溜息ついてうっとりしてこのお花畑の中でしにたい、とか断言したくなるのはやはり80年代に「ファッション通信」を毎週正座して見て、Hi Fashionを購読していたからだろうか、と少し思った。
階段を昇ってからDiorの人と時代、みたいな紹介があり、その中でその時々のアート - Leonor FiniとかPicassoとかMatisseとかCocteauとかMan Rayとかの本物が並んでいて、写真の領域ではAvedonとかPennとかSnowdonとかBeatonとか大御所たちがとらえた決定版Dior、のようなファッション写真とその実物(服)があり、カラーっていうテーマで色別のミニチュアやデッサンも含めたあらゆるシェイプの色もの(きれいでびっくりよ)がぐちゃーっと並び、同様に柄のテーマ別のがあり、香りがありメイクがあり、雑誌の表紙になったDiorがタイルのように並べられ、あーすごかったねえ、と下に降りたらそこまでは折り返しと知って背筋が寒くなり、館の反対側では、Yves Saint-Laurent 〜 Marc Bohan 〜 Gianfranco Ferré 〜 John Galliano 〜 Raf Simons 〜 Maria Grazia Chiuriまで、デザイナー別の展示があり、John Gallianoはほんとに大バカ野郎だったねえ、としみじみ(だってさー..)し、それぞれの時代を彩った泣く子も黙るBest of the Bestの数々が競うようにこれでもかこれでもかと、あたしを見て! とか、これはどう? とか言ってくるので途方にくれてどうしろってんだ、って泣きそうになった。
これまでNYとLondonで、こういうファッションデザイナーの展示は結構見てきた方だと思うのだが、ここまで物量とエネルギーで圧倒させられるものはなかったように思う。 なにがそうさせるのか? だって綺麗なことってこんなにも綺麗で優雅でかっこいいのだから文句ないでしょなにが不満なのさ? って服のピースや袖口や端切れの肌理やこまこました細部までぜんぶが言ってくるの。
ブランド - メゾン - クチュリエ、こういうの威力っていうのはこんなふうに人を襲ってめろめろの骨抜きにして財布をからっぽにしてしまうのねおそろしやー だった。けどあまり「帝国」みたいな「着れ」ていうような威圧感は不思議となくて軽やかにこちょこちょくすぐってくるかんじ(だからやばいのか)。最後の最後のほうで女性の職人さんがカバン製作の実演をしてて、そこだけ少し和めた。ああロボじゃなくてヒトが作っているんだねえ、とか。
70年のご祝儀でカタログ買った。服のほうは買うことも着ることもこの先ないだろうが。
これ以外の美術館はルーブル、ピカソ、オルセーに行った。ルーブルとオルセーは実はきちんと見てこなかったスタンダードを凝視することに徹して、ピカソ美術館の”Picasso 1932. Année érotique”は1932年の相当とっ散らかって、でも勢いに溢れていた頃のピカソを月ごとに追っていて面白かった。
11.11.2017
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