6.06.2017

[film] A Ghost Story (2017)

Sundance Film FestivalのLondon版ていうのが、1日〜4日までPiccadillyの映画館で行われて、そんなに沢山上映するわけでもなくて、平日は仕事あるし土日は他に見たいのもあるし、結局Closing作品であるDavid Loweryの"A Ghost Story"と、それに併せてやってきた監督とのトーク+"Ain't Them Bodies Saints"の上映、のふたコマだけ、取った。 トークが土曜日の夕方6時から、"A Ghost Story"が日曜の夕方6時から。 アイスクリームをただで配ったりしてて、もっとチケット取ればよかったな、とか今になって。

3日の監督とのトーク、もっと暗くてミステリアスなかんじのひとかと思ったらとっても快活でいろんなことを喋るひとだった。

映画経験はふつうの子供と同じくStar WarsとかRoboCopとかから始まって、中学のときに友達のうちのCamcorderを借りて自分で撮るようになってからは夢中になって、映画学校には行かずに全て自分で学んだ。自分でスクリプトを書いて、撮って、編集して、をやるのが重要だと思ったので、学校に行く必要はないと思ったって。  今でもスクリプトを書くことと編集はとても重要だと思っていて、"Ain't Them.." で成功してからも他の監督の編集を請け負ったりしてて、これはとても勉強になるんだ、と。(彼が編集した他監督の作品のクリップが二つ、上映された)

監督として最も影響を受けたのはP.T.Andersonで、16歳のときに"Boogie Nights"に出会って映画で実現できることの可能性に目覚めた。今も変化し続けていてすごいとおもう。 あとはAltman(とうぜんね)。 Terrence Malickは人から言われるほど影響は受けていない、と。

いまはPeter Panのスクリプトに取り掛かっていて、過去のPeter Pan作品はすばらしいのが多いので、難しいけど、楽しい。 などなど。

それから"Ain't Them Bodies Saints"の上映、見るのは2回目でここでも既に書いているのであんま書きませんけど、溜息ばかりで息が詰まりながら画面を見つめる、泣きながらふたりを見届けることしかできない傑作。  Rooney MaraとCasey Affleck、このふたりのケミストリーがすばらしかったのでそれを活かすことに注力した、と監督は言っていたがほんとそうだねえ、て思った。

そして次の日。 Rooney MaraとCasey Affleckを再びまんなかにもってきた"A Ghost Story"。
上映前に監督が登場して、予告編とかには惑わされず、先入観抜きでまっすぐに受け止めてほしい、と。

うけとめた。 "Ain't Them.."とも"Pete's Dragon" (2016)ともぜんぜんちがう。 ひとによって受ける印象は全く異なるとおもうが、ものすごく、たまんなく好きなやつ。  怪談でもホラーでもないの。 SaintsがGhostになったの。

冒頭、Virginia Woolfの短編 "A Haunted House"の冒頭の一節 "Whatever hour you woke there was a door shutting"が引用される。
(この本の一部はまんなか頃にもういっかい出てくる)

M (Rooney Mara)とC (Casey Affleck)の夫婦(?)が田舎の一軒家に住んでいて、ふたりはそこからの引越しを考えて整理片づけを始めている(だいじよね)のだが、夜中に一瞬ピアノが鳴って目が覚めたりしている。 そんなある日、自動車事故でCは突然死んじゃって、遺体を確認してからMは帰るのだが、そのあとでCを覆っていたシーツがむっくり起きあがってそいつは山を越え丘を越えて自分の住んでいた家に向かうの。 だぶだぶシーツで目のところに穴があいているそれって、幽霊というより日本ではオバQって呼ばれるのだが、彼はふつうのひとに姿は見えなくて、少しだけものを動かしたり落としたり倒したりはできるものの、基本は無力でそこにいる、ずっといることしかできない。

最初は放心状態のMのそばにいてあげるのだが、やがて彼女も立ち直って別のところに越していってしまい、そのあとに別の家族が越してきたり、パーティが開かれたり(Will Oldhamがまた変人を..)、Cはずうっとそこに座ったり立ったりしているだけで、そのうち家が取り壊されて。

そこから話は壮大というかなんというか、あらあら..みたいなほうに転がっていくのだが、ぜんぜん変ではないし、どちらかというとクラシックなほうかも。 世界中に昔から同様の幽霊譚、フォークロアはあるのではないか。 ていうのを踏まえてシーツを被ったCasey Affleckが山を越えて野を越えてRooney Maraを追っかけていくのを振り返るとじーんとくるし、となりの一軒家にいる幽霊(柄入りのシーツ)との窓越しの会話なんてせつなすぎるし...

カメラはほとんどFixで長まわしが多くて台詞もほとんどなくて(幽霊、しゃべんないから)実験映画のようにも見える。
前日のトークで、監督はプロットや構成は重要ではなくて、いちばん大事なのは見終わったあとに、見たひとになにが残るかだ、と強く語っていて、これはものすごく残るやつだねえ、てしみじみした。

あと、(それらしく見える)Rooney Maraではなく、Casey Affleckのほうを幽霊にしたのはなんでか?  ここだけQ&Aで聞いてみたかったかも。

英国では8月公開。 もういっかいみたい。

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