冗談みたいにあっつい。 毎年こんなにひどいの? って職場のおばさんに聞いたら76年以来ね、て涼しい顔で言われた。
17日、土曜日の晩、Barbicanでの映画上映 + ライブ。
Tindersticksのライブに行く、演奏している彼らを目撃するのは長年の野望のひとつで、Claire Denisの数本の粒子の粗い闇の奥で常に蠢いている彼らの音、その謎はライブで確かめるしかないよね、と思っていた。
今回のは "Minute Bodies - The Intimate World of F. Percy Smith"ていう映画上映に合わせた演奏があって、そのあとでバンドのライブ。
Frank Percy Smith (1880 - 1945) は、英国のナチュラリストで映像作家で、自分ちの庭での植物や微生物の撮影・記録をしながら接写や低速・長時間撮影等の技術や手法を開拓したひと、と言われている。 たぶん誰もがどっかで見たことあるのではないか。
動植物科学映画のHenry Fox Talbotというか、ひとりSSWなNational Geographicというか。
"Minute Bodies"はそんなF. Percy Smithの映像作品を横断的に編集して(監督はTindersticksのStuart A Staplesさん)、そこに彼らの音楽をのっけた作品で、LP/DVDが発売されたばかり(とうぜん買った)。前半のライブは約1時間、スクリーンに"Minute Bodies"を投影しながらライブでサウンドトラックを被せていく。
F. Percy Smithの映像はビーカーに庭の藁草を入れたら翌日は水中に微生物が湧いてた、みたいなのから胞子とか花粉とかミクロで覗いてみた植物の不思議がいっぱいで、後半はそれがやや大きくなってカエルとかサンショウウオの幼生とかオタマジャクシとか、でもどっちにしても小さくて、常に動いて変化していく。 一見止まって動かないように見える周りのものでも、拡大したり時間を引き延ばしてみればものすごく活発に動いているんだよ、多様性なんて今更言ってんじゃねえよ、ていう今から100年前の映像、というより100年前に記録された出来事をライブでの微細な打楽器、管楽器、エレクトロの鳴り・揺れと共に再生して撹拌していく。 F. Percy Smithがそのレンズに収めようとした生命のぷちぷちした点滅がそのまま目の前で再現されているかのような、異次元にずり落ちていく感に溢れていて、それはClaire Denisの映画を見ているときに感じるあれ、でもあった。
演奏が終わったところで、幸せそうにネズミと遊ぶF. Percy Smithの映像が流れてこっちも幸せになる。
ずっとネズミと遊んで暮らしたいな。
休憩20分を挟んでのライブセットは、インスト中心(唸り声はあった)のサントラとはぜんぜん違うもので、ヴォーカルが入るだけでこんなに違っちゃうんだねえ、としみじみびっくりする。それくらい低音で唸り、囁くStuart A. Staplesの声が作り出す幻灯機の世界は独特なの。
うまく言えないけど、前半が自分がいなくても成立してしまう、でも確かにそこにある世界を描きだしていたのに対して、後半は自分がいることで、いるだけで収拾がつかない、どうしようもなくなってしまうならず者の世界を描こうとしている/してきた、というか。 ごめんよう微生物たち、て酒場でしんみり語っているかのような。
サポートも含めて7人のアンサンブルはすごく巧いわけではなくて、ところどころで踏み外したりこぼれ落ちたりをちょこちょこやっていて、でもその切れ目とか裂け目とかから浸みて滲んでくるなにかがまた別の風景や形象を連れてくる。 生き物の世界とおなじで、でもその影とか痕跡の強さは相当なもんだった。
”Say Something Now”から“Drunk Tank” - ラストの“What Are You Fighting For?” までの地面にべったり潰れていくかんじがたまらなくよかった。そのまま墓に入りたくなる。
アンコールは1回、3曲で、こないだの"The Waiting Room"のジャケットにいるロバさんがでてくる映像を流しながら、ていうのがあった。 Claire Denisの映画まるごとライブ、とかやってくれてもよいのになー。
6.21.2017
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