6.13.2017

[dance] Marguerite and Armand

英国に来て、日本では途絶えていたバレエを見る、というのを再開して、だんだんゆっくりと深みにはまりつつあるのを感じるのだが、そういうのをここで書いておくべきかどうかが悩ましい。 それは食べ物やレストランレビューをあまり載っけたくないのとおなじで、自分にはバレエに関する知識と語彙が圧倒的に足らないと思うし、そういう状態では多分に相当に嗜好みたいのが作用してしまう気がするし、結局おいしいんだからおいしいんだもん、みたいなものになりがちだと思うから。 そんなら、じゃあ、映画やライブはちゃんとしてんのかよ、とか、本の感想だって書いてみろよ、とかいろいろ出てくるので、ここはやはり基本に戻って、自分にとっての備忘と、書きたいものを書きたいように書く、ていうのでいいよね、ということにする。 

で、バレエふたつ。 どちらもRoyal Balletの。 少しだけ。

Mayerling

すこし昔の4月28日に見ました。

1978年初演、Kenneth MacMillan振付による3幕もの。邦題は『うたかたの恋』...

19世紀末のオーストリアで起こった実話 - Mayerling Incident - を題材に、皇太子ルドルフ(Edward Watson)のステファニーとの婚約 〜 結婚からどこまでいっても不安定で妄執のひとで、いろんな女性とくっついたり離れたり狼藉おこして友人達に救われたりしながら、最後は男爵令嬢マリー・ヴェッツェラ(Natalia Osipova)とのやけくそみたいな心中でおわる。
冒頭が葬儀、エンディングも葬儀で、黒と赤でゴスでどんよりおどろおどろで、宣伝文句には「大人のバレエ」とかあったけど、そんなかんじ。
歓喜とか幸福に向かうダンス、の要素はこれぽっちもなくて、ルドルフがいろんな女性達ととっかえひっかえやけくそで踊っては疲弊して(踊るのほんとに大変そう)、自分で自分を縛って自壊していく、その息苦しさ、閉塞感と生々しさがなかなか見事だった。 音楽は緩急はげしいリストのいろんなの。

The Dream / Symphonic Variations / Marguerite and Armand

6月7日の水曜日にみました。
でっかいカメラが入っていて、屋外上映用に全英に中継配信されるのだと。 こんなの屋外でみたら気持ちいいだろうなー。ぜったい寝ちゃうだろうけど。

Frederick Ashton - ちゃんとした名前は Sir Frederick William Mallandaine Ashton - 振付によるベーシックな中編3本立て。

The Dream (1964)は、George Balanchineの"A Midsummer Night's Dream" (1962) - Shakespeare, Ken Russell, etc. -をベースに、妖精2匹の恋と2組のカップルの取り違えばたばた恋とぴょんぴょこロバ踊りを中心に。 筋わかんなくても、見ているだけで楽しい。

Symphonic Variations (1946) は、NYでも何度か見ている古典で、最小限のセット、シンプルな衣装で、3人の男子、3人の女子によるコンビネーションの連打。 これが第二次大戦中に作られた、というとなるほどー、とも思うし、えええー、とも思う。 舞台をめいっぱい使って静止を多用して緩急激しいのでダンサーには相当しんどいのではないかしら、とか。

ラストのMarguerite and Armand (1963)がいちばん見たくて、AshtonがRudolf NureyevとMargot Fonteynのために振りつけたやつで、最近ではSylvie Guillemが踊ったのが有名。 死の床にあるMargueriteが最後の情熱を振り絞って舞って恋人のArmandの腕の中で息絶えるまで。 音楽はリスト、セットデザイン(背後に投影される写真も?)はCecil Beaton - 超絶クール。
とにかくMargueriteを舞ったZenaida Yanowskyさんの力強さと狂おしさが渾然となった美しさがとんでもなくて、Armand役の彼もがんばったとはおもうのだが、悪いけどあと5年くらい待ちな坊や、てくらい。

当然のように怒涛のスタンディングオベーションだったのだが、上の階から投げ入れられて降り注ぐ花の量が尋常ではなく、そのうちにセレモニーみたいのが始まっていろんな男たちが花束を持って現れるので何かと思ったら、彼女の(英国での)ラストステージなのだという。(唖然)
だからさー、バレエってほんとにちゃんと追っていないとこういうことになって地団駄ふむことになるのよね。
ああ、彼女のSwanやManonをライブで見たかったよう。

これでRoyal Balletの2017年シーズンはおわり。

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