1.15.2016

[film] The Lost Moment (1947)

9日土曜日のお昼、シネマヴェーラの「映画史上の名作14」で見ました。
「失われた時」。 原作はヘンリー・ジェイムズの「アスパンの恋文」 - The Aspern Papers (1888) で、翻訳は岩波文庫から出ているのだがもう絶版。未読。

原作は英国詩人シェリーが恋人メアリーに宛てた恋文に想起されて書かれていて、映画のなかで出てくる詩人のポートレートもシェリーにそっくりなの。

NYの編集者のLewis (Robert Cummings,)は19世紀に行方不明になった詩人- Jeffrey Ashton の失われた恋文集を探していて(出版すれば絶対に売れるから)、驚くべきことに彼が手紙を綴った恋人のJulianaは105歳でまだ生きている、と聞いて、その恋人のヴェニスにあるおうちに身分を隠して滞在してこっそり探りはじめる。

その屋敷にはすごく冷血そうな又姪のTina (Susan Hayward)と頑固で意地悪そうな家政婦とその娘家政婦(やさしい)と猫(かわいい)がいて、女性ばかりの館では当主Julianaのケアにものすごく気を配っている他方で、Lewisのような来訪者にはつんけんして厳しい。

でもやがて105歳のJuliana (Agnes Moorehead) - ずっと椅子にうずくまっていて殆ど顔も見せない - と面会することができて、彼女がお金に困っていることがわかったり、夜中に屋敷のどこかからピアノの音が聞こえてきたのでなんだろう、と探していたら猫が案内してくれたり、そもそもJeffrey Ashtonはどこに消えてしまったのか、とか、いろんな事情を知っているらしい怪しい僧侶とか、Lewisの正体を知る強欲な奴とか、ゴスでミステリーの要素もいろいろあっておもしろかった。

届いたのか届かなかったのかどこかに仕舞いこまれた手紙の束と、肉体と共に朽ちて滅びていくなにか、或いは別の肉体に転移して生きようとするなにか、などなどが不滅の愛をめぐって最後に燃えあがって、それだけだと19世紀のお話しなんだけど、少しだけ不純で胡散臭いなにかも入ってきて、そのだんだら模様もおもしろいの。
そして、彼らの生を生として繋ぎ留め、操っているのは死で、その死をもたらしたのは不滅の愛で、ていうぐるぐる回る怪談でもある。 

お屋敷をめぐるゴシックホラーとしてリメイクもできるねえ。 あんまこわくないやつ。

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