1.17.2016

[film] 婦系図 (1962)

9日の土曜日、「失われた時」のあとで京橋に移動して見ました。「三隅研次」特集。
この日の京橋は「白子屋駒子」(1960)から見るべきだったかも、だけど、いいの。

原作は言うまでもない泉鏡花 - ずいぶん昔に読んだが見事におぼえてない、マキノ雅弘版は見てない。
びーびー初泣き。 すばらしい女性映画でした。

子供の頃、スリをしていてドイツ文学の酒井教授(千田是也)に拾われた主税(市川雷蔵)はそこの娘の妙子(三条魔子)と兄妹のように育てられて、大きくなってからは酒井教授を師としてドイツ語方面で出世が見こまれている、のだが実生活では芸者のお蔦(万里昌代)と恋仲になって独立を機に一緒に暮らし始める。

妙子のほうには静岡の実力者で医者一族のいけすかねえぼんぼん - 河野が母子で縁談を画策してきて、酒井教授はいいじゃないか、というのだが主税は気にくわないのでしらっと妨害していたら仕返しにスリだった過去を暴かれ、更に教授にお蔦のことで責められて、俺を棄てるか女を棄てるかどっちかにしろ、て迫られてお蔦に別れてくれ、ていうの。
(教授もクソだけどそんなこというクソじじいをなんで蹴っ飛ばさないのかこのボケなすは)
(『切れるの別れるのって、そんなことは芸者の時に云うものよ。私にゃ死ねと云って下さい』)

あともうひとつ、妙子を生んだ実の母はお蔦のとこのおかみの小芳(木暮実千代)なんだから教授だってさあ、ていうのとそんな妙子にうちは名家でございますから、ていう河野家だって裏ではいろいろ後ろめたいのがあって、お蔦と切り離された主税は静岡に単身乗りこんで河野家にねちねち復讐していくの。

でもそんなしょうもない小競り合いしているうちにお蔦は病に倒れて…

主税とお蔦の別れとか、小芳と妙子の再会とか、髪結いをしてがんばるお蔦とか、妙子がお蔦を訪ねてくるとことか、お蔦が亡くなるとことか、とにかく泣ける台詞とか泣けるシーンの波がすごくて今思いだしただけでもきついの。 脚本は依田義賢で、そういえばこのひとの溝口健二(が描く女性)を見るたびに泣いてばかりになるのだからそもそも要注意なのだった。

ていうのと、とにかくもうほんとに(女性の反対側にいる)男共ときたら主税も含めて壊滅的にしょうもないしバカだしクズだし(除.めの惣)、こんなバカ連中が偉そうににっぽんの近代をデザインして担ったんだから今がこんな惨状なのは無理もないことなのね、て思った。

カラーの瑞々しさも日本家屋の奥行きのかんじも日本美術、としか言いようのない美しさ。そういう四角四面格子のなかで泣き崩れたり倒れたり震えながら立ち上がる日本女性たち。
これが日本の … うんたらとは全く別のところでそうっと、でもしっかりと留めておきたい。

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