5.14.2012

[film] Vivement Dimanche! (1983)

11日の金曜日、「おかあさん」のあとで天ぷらそばを求めて駅前に戻り(天ぷらそばしっぱい...)、日仏に戻ってみたら人で溢れかえっていた。

60周年の記念セレモニーがある、ということで上に登る二股の階段のとこがレッドカーペットみたいになってて、そこにフランス大使館の偉そうなおじさんたちがぞろぞろ集まっていて、その中心に女王さまのようにファニー・アルダンさんがふんわり浮かんでいる。 
ただの階段なのに、なんかの冗談としか思えなかった。

日仏には映画以外なんの御縁もないのでふーんと見ているしかなかったのだが、スピーチでおもしろかったのは、こういうとこに映画を見に来る人たちの顔は世界中どこでも同じようなかんじだ、ということをシネマテーク・フランセーズの館長のひとが言ったとこで、いやいやそれは自分のことじゃない、と目をそらした人が何人かいたはず(含.じぶん)。

式典のあとでいつものスペースに入れて、そこでも映画の前説があったのだが、誰がなにしゃべったか、そんなのよかファニー・アルダンさんのオーラにただただ圧倒されていた。 なんなのあの脚線、にっこり微笑みながら赤いバラを一輪右手にかざして。 そんなんであんた、49年(昭和じゃないよもちろん)生まれって、なんだよそれ、って。

トリュフォーはこれにやられたんだ、と。 アルダンさんのスピーチにもあったけど、フランス映画の監督は昔から、どいつもこいつも女性にやられ続けている(女性がいつも中心にいる)のだと。 そうだねえ、われわわも女性に全面降伏してなにもかも搾り取られた男がひくひくしている、そんなフランス映画を愛してきたのだなあ、と改めておもった。

そういうわけで、『日曜日が待ち遠しい!』(英題は"Confidentially Yours")であるが、冒頭の犬ころと一緒にこっちに向かってぐいぐい歩いてくるファニー・アルダンさんがぜんぶで、その勢いにやられっぱなしのまま最後までいく、そういう映画なの。

彼女がそのまま職場に入ったら、雇い主(Jean-Louis Trintignant)とのあいだでつまんない言い争いをして突然解雇を言い渡されて、そしたら警察が来て彼を殺人の容疑で引っ張って行っちゃって、そうしているうちに、第二、第三の殺しがおこって、彼女は仮釈放された彼をオフィスに隠して勝手に捜査をはじめて、周囲をあれこれ掻き回していく。

最初のうちは、なんで彼女がそんなことをしているのか、ピンボールの玉みたいにあっち行ったりこっちに来たりをやっているのかぜんぜんわかんなくて、それは上映前のトークで彼女が振り返っていた撮影当時のトリュフォーの指図「とにかく早く進まなければいけない、考える間を与えないくらい早く」にそのまま重なるのであるが、とにかく彼女は嬉々として犯人捜しの渦に巻きこまれていって、ほんとなに考えているのかぜんぜんわかんないのだが、最後の最後、モノクロの画面の隅々まで明かりが灯って、ああそういうことかと。 謎も仕掛けも鋭い推理もなんもないんだけど。

犯人と事件の全容がわかってのど自慢の鐘みたいのがかんかん鳴るのと同時にあたりがぱーっと明るくなり、それって恋ってことだったのね、というのが。 彼女が追っかけていたのは実は、と。

で、こんなのを見たら『日曜日が待ち遠しい!』になるに決まっていたのだが、実際の日曜日は立ち上がれず、日仏行けなかったの。 くやしい。

 

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