3.16.2024

[film] Paolo e Vittorio Taviani

こないだまでやっていたBFI Southbankでのタヴィアーニ兄弟特集は、全部で8本見て(しか見れなくて)、”Kaos”(1984)については感想を書いたものの、他は書けていなくて、書きたいのだがそれぞれに内容が詰まっていてきちんと(したことなんてないけど)書こうとすると結構たいへんだよなー、と思っているうちに溜まってしまった。思いだせる範囲で簡単にメモしておきたい。


Un uomo da bruciare (1962) - "A Man for Burning"

2月2日、金曜日の晩に見ました。 邦題は『火刑台の男』。
ふたりに加えてValentino Orsiniも監督に名を連ねている長編第一作。

実在したシチリアの農業労働組合のリーダーSalvatore Carnevale (1923-1955)の生涯を描いたモノクロ作品。冒頭からSalvatoreが帰ってきた! って農民たちの人気者の帰還からリーダーになってストを組織して、悲劇的な暗殺まで。正義の労働者・指導者を描いて割と時代のこてこてしたところもあるが、原っぱを走ってくる人を遠くからとらえるショットは既にこの頃からあった、とか。


Le affinità elettive (1996) – The Elective Affinities

2月21日、水曜日の晩に見ました。邦題は『ある貴婦人の恋』。
ゲーテの『親和力』が原作で、Isabelle HuppertとJean-Hugues Angladeが出ているのに劇場未公開なんだ… (だめじゃん)

久々に再会したかつての恋人同士が恋におちて結婚して、田舎の邸宅で貴族の暮らしをしていて、そこに夫の友人と妻の養女が訪ねてきて、どろどろの四角関係が転がり始めた - と思ったらばちか呪いに当たったようにみんなぱらぱらと亡くなっていっちゃうの。でも誰が原因っていうわけでもないの。

ゲーテの情熱と突き放して冷たく転がっていくところが絶妙に混在するこういうドラマにタヴィアーニのタッチがはまっているのと、割とずるずるお手上げ系の展開のなかに佇むIsabelle Huppertはほんとによくて、いくらでも見ていられるねえ。


Tu ridi (1998) - You Laugh

2月28日、水曜日の晩に見ました。邦題は『笑う男』。
ピランデルロの原作2本が元と聞いて、それならば、と。

最初のエピソードは“Felice” – 幸福。オペラ歌手になる夢を失い、会計士をやっている小太りの男が、寝ている間に不気味に笑う癖があり、起きても笑っていたこととその内容について一切憶えていなくて、苦悶の果てにようやくそれがなんなのかわかるのだが…

次のエピソードは“Due sequestri” - 二つの誘拐。現代で男の子を誘拐した男が彼を連れていろいろ点々としてて、子供とも馴染んできた、ように見えたところでばれるのを恐れて殺してしまった実際の事件(”Sicilian Ghost Story” (2017)として映画化されている)に、そこから100年前のイタリアで山道を歩いていた老人が目隠しをされて誘拐されて、でも狭い世界なので誘拐犯の名前と素性はすぐに老人にはわかってしまい、結局彼らと一緒に暮らしていくことになって – が挿入されている。

見たあとのかんじだと、これもあまり気持ちのよい話ではない - 意識するかしないかの紙一重のところで、ひとはすぐ傍の人に対してひどく残酷なことをしてしまっていて気付いた時には取返しがつかないところに行っていた - この辺はピランデルロかもー、って。


Sovversivi (1967) - The Subversives

3月1日、金曜日の晩に見ました。邦題は『危険分子たち』。
Valentino Orsiniなしで、兄弟がピンで監督した最初の作品。
Paoloが亡くなったことを聞いた直後に見たので、葬儀のシーンが… というのは前に書いた。

1964年、イタリア共産党指導者Palmiro Togliattiの葬儀のリアルフッテージを置いて、そこに参加する4人 – 不治の病にかかったことを知らされる映画監督、両親とか恋人とかの間でうだうだするカメラマン、妻がレスビアンであることを知って錯乱する会社の偉い人、恋人を捨てて軍政下のベネズエラに帰ろうとしている革命家など、それぞれはまったく関係ない別の世界を生きていて、葬儀に参列はするものの最後まで互いに、葬送の列にも交わることのない彼らの迷いやうんざりをランダムに並べていくモノクロの群像劇で、葬儀の記録映像だけじゃなくてゴダールの『気狂いピエロ』のラストがそのまま挿入されていたり、映像的にはかなり乱暴に好き勝手にやっているかんじ。 他方でストーリーとしては、みんな共産党で、イコール「危険分子」「破壊活動家」って言うかもだけど、実際にはこんなもんなんですけど(棺桶)… っていうのを67年に世に出してしまう、ってすごいかも。


ここでいったん切ります。

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