2月24日、土曜日の昼、Curzon Aldgateで見ました。
公開直後の昼間に客は自分を入れて3人で、あんまりでは.. と思ったらNetflixのでTVでも見ることができるからか。こないだのベルリン映画祭でプレミア上映されたのだそう。
Adam SandlerとCarey MulliganとIsabella Rosselliniが出ている、というだけでチケットを取ったのだがコメディじゃなくてすごくシリアスで変なSFなのだった。
原作はチェコのJaroslav Kalfař による不条理SF? - “Spaceman of Bohemia” (2017) – 未読、監督は “Chernobyl” (2019)のシリーズやDavid BowieのPV - "Blackstar"を手掛けたJohan Renck。音楽はMax Richter。
チェコの宇宙飛行士Jakub Procházka (Adam Sandler)が宇宙の果てに出現した謎の星雲を調査するためにひとりで宇宙船に乗って189日が経っていて、スポンサーにまみれた航行に強いられるいろんなイベントスポットに顔を出して挨拶するのが日課だが、排水管かなんかのたてるノイズがやかましくて眠れない状態が続いている。身重の妻Lenka (Carey Mulligan)は何度かけてもCallに出てくれないし、管制官もその上のIsabella Rosselliniも彼の精神状態がやばいことはわかっていてLenkaにアプローチしてみても、彼女は家を出てしまっていてどうすることもできない。
そんなある日、船内にでっかいぬいぐるみみたいなもふもふのクモ? - でも脚の先はタコみたいだし、6つある目は夜行性のサルだし – が現れてJakubに柔らかく話しかけてくる。最初はパニックになって追い出そうとするのだが出ていってくれないし、腕を前に寄せているところとかなんかかわいく見えるし、Paul Danoの声で会話してくれるので彼をHanušと名付け、HanušはJakubを“skinny human - ”と呼びかけて、いろんなことを話していく。
Hanušが実在するのか、疲弊したJakubの妄想なのか、それが謎の星雲の作用によるものなのかなどは明かされないまま、Jakubは自分の青年期の父との関係とか、Lenkaに出会った頃のことなどを語り、おそらくHanušの目がその過去を再生/再現していく。この辺はTerrence Malick & Solarisぽい男子の美化された感傷みたいでどうにもあれなのだが、星雲に近づいていったらHanušは虫にまみれてさよならー、って消えちゃって…
独りにしたらあんなふうになっちゃいそうな過去とか傾向をもった人物をどんなもんかまったくわからない未知の星雲かなんかの探索にたったひとり送り出したらそりゃあんなふうになって、クモだってやってくるよな、くらい。独房にいる囚人ならともかく、あんな暗い目と表情の宇宙飛行士、ないよなー。というか、これなら絶対に病院か牢獄で衰弱してぶつぶつなんか言ってる哀れな男の夢でした… で終わらせることができるのに、なんかもったいないな、って。
もったいないといえば、Adam Sandlerをあんなところに押し込めてろくなアクションもさせず、とか、Carey Mulliganにまたしても身勝手な夫の犠牲となる悲しい妻の顔をさせてひどくない? とか、そっちの方か。それとも、これまでのいろんなSFにあったように、男を宇宙に放りだしておくとどうしようもなく傲慢で身勝手なモンスターに育ってしまうので気をつけよう、ってそういう教訓話、というならわからないでもないか。 JakubとHanušがどうでもよい話を延々していく話にしちゃえばよかったのに。
エンドロール、帰ろうとするとどこかで聞いた粘り気のある声で”行かないで行かないで行かないで”ってしつこく繰り返す曲がかかって、なんだこれ? と思ったらMax Richter & Sparksによる主題歌“Don’t Go Away”なのだった… この組み合わせおもしろいからツアーしてくれないかしらー。
どうでもよいけど、シラチャーソースはチェコの宇宙船にも常備されているのね。
3.01.2024
[film] Spaceman (2024)
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