3.08.2024

[film] Anyone But You (2023)

2月29日、木曜日の晩、West EndのVueっていうシネコンで見ました。

監督は”Easy A” (2010)とか”Friends with Benefits” (2011)とか”Peter Rabbit”シリーズなどのWill Gluck。最初のふたつは割と好き。

シェイクスピアの“Much Ado About Nothing”の現代翻案もので、シェイクスピアをベースにした実写ものとしては最高興行収入を更新しているそう。確かに公開は随分前のことで上映館数も減っているのにまだ賑わっていた。(実写じゃない方の興収記録 - 数字はこっちの方が断然上 – となると”Gnomeo & Juliet” (2011)なんだって。わかる)

Glen Powellという男優ってどうなのか? 筋肉はいっぱいあるし軍服とか着せると見事でぱりっとするものの、中味はわりと不気味にからっぽふうに風が吹いてて結果的にはふられたりする役が多い – つまりrom-com的には格好のフィギュアではないか、と思い始めたところにこれが。

金融業界に勤めるBen (Glen Powell)が法曹界志望の大学生Bea (Sydney Sweeney)とコーヒーショップのトイレ待ちでぎこちなく出会って、おしゃれで空虚な彼のアパートで楽しく過ごし、Beaは朝にカウチで目覚めるとそっと抜けだして、でもやっぱり一言なんか言っといたほうがよいかも、って戻ってみると、いなくなられて傷ついたBenが親友のPete (GaTa)に負け惜しみのように彼女の悪口を言っているとこだけを聞いてしまい、こいつ最悪だわ、ってふっきる。

それから半年くらいが過ぎて、Peteの妹のClaudia (Alexandra Shipp)とBeaの妹のHalle (Hadley Robinson)がオーストラリア – シドニーの先の方にあるリゾートで結婚式をあげることになり、そこに向かう機上でふたりは顔を再びあわせることになって、さらにBeaの両親が彼女の幼馴染のJonathan (Darren Barnet)をヨリを戻させるべく招いていたり、BenのExのMargaret (Charlee Fraser)も来ていたり、既に過去のものである彼らと再び、なんて想像しただけであれこれ面倒だしそんな気分ではないので、みんなの前ではできあがった恋人同士のフリをしよう、ってふたりでじたばたしたりしているうちに。

結婚や将来にかけてのことはもちろん、Beaは自分の今後ぜんぶを気にかけて口を挟んでくる両親のことがうざいしめんどいし、Benも過去になにがあったのか踏みだせなくてもじもじしてて、ふたりが上がったり下がったり寄せたり引いたりのサイクルは通常のrom-comより小刻みだし下ネタもBenのヌードときんたまくらいの小規模だし、他人(or親族)の結婚式 - 定番でぐしゃぐしゃになる、リゾートの解放感、変な家族に友人、過去のフラッシュバックなど、お決まりはそれなりに用意されているものの、ふたりがよりを戻すのは一緒に歌う歌(あれ誰の曲?)とか、手作りのチーズトースト – こんなのやられるに決まっている - とか、ヘリコプターくらいで、はたしてこれらに決定的なマジックや驚きがあるかというと、ううむ…

Benがなんでそんなに暗いかんじでなにかを抱えている(ように見える)のか、Beaはなんでロースクール行きを諦めてしまうのか、最初の晩にふたりでどんなことを話したのか、そこらがないとちょっと磁力とか説得力とか出てこなくて、”Anyone But You”って地点まで行けていないかも。

なんて言いながらもGlen PowellとSydney Sweeney - 彼らふたりがはしゃぎまわる絵がもたらす空気とかケミストリーはまったく悪くなくて、このふたりいいなー、になるし、見ていて楽しいことは確かなので、よいかも。 ただこれなら「シェイクスピアの」はいらない気もするけど。

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