2月26日、月曜日の晩、Barbican cinemaで見ました。なぜだか他のどこの映画館でもやっていない..
Jessica Chastainさんが好きなので見た。作・監督はメキシコのMichel Franco。昨年のヴェネツィアでは、Peter SarsgaardがBest Actorを受賞している。
冒頭に患者(?)たちから感謝の言葉を受けているSylvia (Jessica Chastain)は、ソーシャルワーカーでケアワーカーで、ティーンの娘Anna (Brooke Timber)のシングルマザーで、ブルックリンかクイーンズの外れの方に暮らしていて、ちょっと疲れているように見える(後でアルコール依存症だったこと、などがわかる)。
妹のOlivia (Merritt Wever)に誘われてぜんぜん乗り気のしない高校の同窓会に出てもやはり乗れなくて – この宴会場、たぶん、”Somewhere in Queens” (2022)に出てきたのと同じ場所だ - 隣に来て笑いかけてきた男が不快だったので、ひとりで席を立って帰ることにしたら、その男もゆっくりついてきて、地下鉄に乗っても隣の車両にいて、彼女が降りても降りてきて、アパートに逃げ込んで鍵をかけて安心するのだが、翌朝そいつは雨に濡れてアパートの下で寝ていて、体を壊されたらあれなので世話をすると、男はSaul (Peter Sarsgaard)といい、初期の記憶障害があっていろんなことを憶えておらず、面倒を見ている兄のIsaac (Josh Charles)親子と一緒にアパートに暮らしていることがわかる。
SylviaはSaulを公園に連れだして、なんで彼女を尾行したのか問い詰めるのだが、Saulはわからない、憶えていない、と言う。Sylviaは自分は憶えている、高校の時、あなたは同級生に命じてわたしに酒を飲ませ、その後に性的暴行をした、憶えていないのか? Saulは憶えていない、と返すので彼女は激怒して彼を置き去りにする。 ここでドラマの様相ががらりと変わり、”Promising Young Woman” (2020)のような復讐の物語になっていくのかと思いきや、そっちには行かずに、SaulはIsaacの娘Anna (Brooke Timber)からSylviaが転校したあとで学校に入ったので彼はその件の犯人ではないはずだ、と言われて、それならそうなのかも(あれれ?) になり、彼があなたを気に入ったようなので暫く面倒を見てあげてくれないか、という依頼も受けてしまう。
こうしてSaulのアパートで彼のケアを始めたSylviaはだんだん彼と仲良くなっていくのだが、どこかの時点からの記憶がなくなっているSaulと過去のトラウマなどで何かが失われているSylviaの関係は危うくて、家族からの反対もきつくなって、Olivia と母Samantha (Jessica Harper)のいる場で幼時に父親から受けた性的虐待のことを掘り返されたSylviaは塞ぎこみ、Saulもそれで動揺したのかアパートから落ちて病院に運ばれて…
現在の自分を構成している - と誰もが信じている「記憶」の不確かさと、それを不確かにしているのはまた別の辛い記憶だったりして、そうすると過去に辛いことばかりが重ねられた人のありようって ... というテーマに心理学的な概説や知見に踏みこまず、愛があれば、みたいな便利箱にも突っこもうとせず、そうなっても人は誰かを抱きしめることができるのか、という問いに、なんか難しいかも、って首を傾げつつも真剣に繊細に追っていくドラマ。 医者が何かを告げたり裁判や捜査のように真相が暴かれる場はないので本当のところは最後までわからないのだが、本当のところ、ってなんなのか? そこにあって本人が認識できるMemoryくらいしかなくて、でもそこがどうなっているから/いないからひとを愛するってわけでもあるまいに? など。
非常に難しいキャラクターの造形だと思うのだが、表面張力ぎりぎりを滑っていくJessica Chastainと自分のなかの大きな穴を見つめてうなだれ、苦しむPeter Sarsgaardのふたりの演技のぶつかり合い、というより重ね合わせがすばらしいったらない。
Saulが何度か部屋でかけるProcol Harumの”A Whiter Shade of Pale”、この曲があんなに浸みたことはなかったかも。
あと、クイーンズだかブルックリンだかの、ああいうアパートのインテリアって、なんであんなに素敵なのか - 映画だからだよ – にしてもさあー。
ガラスの回転扉 - と思って通り抜けようとしたところがただのガラスだったので顔面をぶつけて星が飛んで片目の上を切ってしまい、夜になってだんだんはれてきた。ガラスって、硬いよね。
3.06.2024
[film] Memory (2023)
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