3.16.2024

[film] La notte di San Lorenzo (1982)

BFI Southbankでのタヴィアーニ兄弟特集の続き。最後に見た3本はどれも題材が悲惨で重かった。


La notte di San Lorenzo (1982)  - The Night of the Shooting Stars

3月2日、土曜日の午後に見ました。 邦題は『サン★ロレンツォの夜』。売り切れていた。
1982年のカンヌでグランプリを獲っている。

星が美しい晩、母親が寝ている子に流れ星の夜にはね.. って自分に言いきかせるように第二次大戦の頃、自分が子供だった頃に町の人たちや家族に起こった話をしていく。

まだ町のあちこちにドイツ軍が残っていて、ファシストもパルチザンもいて、アメリカ軍も入っていて、それぞれの手先が裏に隠れたりしていて、みんなで戦況の話を聞いたり噂を聞いたりどこそこからの指示があったりで固まって教会に逃げたり農村に逃げたりしていくのだが、噂が間違っていたり思い込みに囚われていたり突っ走ったり頑固に留まったり、だれのなにを信じてよいのやらの状態でパニックになったりしながら、結果的には草陰とかどこかからか現れた敵か味方かもわからない連中にあっさりどさどさ殺されていって、どこに逃げても隠れても死はやってくる。

星空にすてきな農村、田園の穏やかでのどかな光景があっても、おとぎ話の正義の味方を夢想しても、戦時にはなんにも、どうにもならずによい人もわるい人も等しくランダムに殺されて消えていって、全体としては悲惨な悲劇なのだが、こんなの悲劇として機能していないでしょ、それくらい唐突に虫のようにひとが殺されていく。わかる? 星に願うくらいしかないのよ、って。


La masseria delle allodole (2007)  - The Lark Farm

3月10日、日曜日の晩に見ました。 邦題は『ひばり農園』。
Antonia Arslanの原作をもとに、第一次大戦期に起こったトルコによるアルメニア人の大虐殺の史実を描く。(兄弟はこのテーマについて、これがジェノサイドかどうかを決めるのは歴史家の仕事で、我々はこれを悲劇、として描いたと)

裕福なアルメニア人の家族がいて、トルコ軍が不穏な動きを見せるなか、自分たち一家はずっとここに暮らしてトルコ側の知り合いも多いから大丈夫、と思っていて、でも実際に軍がやってくることを知ると自分たちの保有する田舎にある「ひばり農園」の屋敷にみんなを匿うのだが、一家に出入りしていたトルコ人の乞食がその場所を伝えてしまったので軍はそちらに向かって、まず男たちは無条件にその場で全員殺されて、女性たちはアレッポの海の方に強制的に行軍させられて…

他の女たちや子供たちを守って最後まで屈しなかった一家の娘Nunik (Paz Vega)を中心に、どんなふうにその地にいた家族や人々が殺されていったのか。タヴィアーニ兄弟の作品のなかでも一番陰惨でむごたらしいものなのではないか。(兵隊に殺されるくらいなら、って自分の赤子を..とか) でも実際にはもっともっと酷かったはずだし、こういうことは今も行われているのだ。そこに住んでいる人たちを、そこにいるからという理由だけで殺していく - どんな理由であろうとも殺してはいけない、って、そこに必ずもどる。


Una questione privata (2017)  - Rainbow: A Private Affair

3月11日、月曜日の晩に見ました。  
タヴィアーニ兄弟が「兄弟」として撮った最後の作品で、Vittorioは病床にあったので、エンディングクレジットの監督のとこにはPaoloの名前だけしかなかったりする。84分と短いし。

第二次大戦中のイタリアでファシストと戦いながら野山を駆けていくパルチザンのMilton (Luca Marinelli)がいて、疲弊した彼の目の前に同窓だったFulvia (Valentina Bellè)の屋敷が現れて、がらんとした屋敷に入れてもらうと、頭にはあの頃、”Over the Rainbow”のレコード – これがタイトルに繋がる - をかけて口ずさんだりうっとりしていた彼女と親友のGiorgio (Lorenzo Richelmy)のことが浮かんで、Fulviaは同じくパルチザンとなったGiorgioのところに行ってしまった、と聞くとGiorgioを探しださねば、になって、ファシストに捕らえられてトラックで連れ去られたという彼を求めてひとりで山奥に入っていくの。

最初はFulviaを恋しがっているのかと思っていたらGiorgioを見つけて辿り着くほうに狂ったようになって、Luca Marinelliなのでその狂いっぷり、明らかにおかしくなっていく目の光がすごくて、ここだけでも見るべき、なのだがそれと同等か、それ以上に靄や悪天候でぐじゃぐじゃの山奥の戦争も狂っていてこりゃどうしようもないわ、って。

Georgioを求めて狂っていくMiltonの姿が、VittorioとPaoloのそれに..  というのは考えすぎか。

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