12.13.2010

[film] The Agony and the Ecstasy of Phil Spector (2009)

土曜日はー、美術館1と映画1とライブはしごで2。 もう時間が少なくなってきたのでいけるとこはいく。

最初にFIT(Fashion Institute of Technology)のMuseumでやっているこちらの展示。 "His and Hers"。

http://www.fitnyc.edu/9046.asp

「彼」の衣装はなんで彼のに、「彼女」の衣装はなんで彼女のになっていったのか、"masculine"と"feminine"の概念はファッションの歴史のなかでいかに作られ、受容されていったのか、を18世紀くらいからずーっと並べてみる。

入り口のとこに、Alexander McQueenさんの2008年のイブニングがあったのでいちおう合掌してから中に。

この展示、テーマとしてはすごく面白いし、いくらでも掘り下げることができるとおもうのだが、点数があんまなかったのが残念。(無料だからしょうがないか)

むかしのほうが、全体にかっこよいし、かわいいし、いいよね。
でもやっぱり80年代のMiami Viceの衣装とかはつい笑いがおこる。なんだよこれ、って。当時から思っていたけど。
あとは、90年代初のMoschinoのブラスカートとか。

ディテールを見ようとちょっと身を乗りだしただけでアラームがぴーぴーいうのがかなしかった。

同美術館の別の場所で"Japan Fashion Now"という展示もやっていたのだが、こっちは毒づいて嫌味ばっかり並べてしまいそうな気がしたので見るのやめたのだった。

ChelseaのTrader Joe'sをのぞいた後で、ヴィレッジにむかい、Generation Recordsをいちおうあさってみるが、ないの。

ヴィレッジの通りはどこもかしこも、なんでかしらんが(←しらべたまえ自分で)、サンタであふれかえっていた。(写真参照)
サンタさんは夢を希望とおもちゃをくれるはずなのだが、ここにいるサンタはみんな酔っぱらっていて、けむくて、うるさい。 なんなのあんたたち。



    

で、Film Forumで見たのが"The Agony and the Ecstasy of Phil Spector"。
アンコール上映で、これで今年みたかった音楽映画は一通り見ることができた、とおもう。 よかったよかった。

2003年、女優の殺害容疑で逮捕されたPhil Spectorの裁判の経過と、その保釈中に彼に為されたインタビュー映像と彼がプロデュースしてきた作品のFootage、基本はこの3本だて。 彼の音楽活動を総括するインタビューと、彼がやってしまったかもしれない殺人の審理、どっちもおなじひとりの人間がやってしまった(かもしれない)ことを容赦なく並べていく。 なかなかすごい。

58年のTeddy Bears、"To Know Him Is To Love Him"から始まる彼の音楽活動については改めて述べるまでもない。「レコーディング」という作業をアートの領域にまで高め、「プロデューサー」という職人の領域を作り出したのはこのひとであって、その業績がモノラルの、なかなかでっかい音量で再生される。これはひたすらきもちいい。

映画の最初のほうで、"To Know Him Is To Love Him"を流しながら彼のクローズアップになるシーンがみごと。 この映画を通してあなたは"To Know Him"から"To Love Him"にシフトすることができますか? と。

インタビューを受けるほうの彼は、昔の記憶ははっきりしているものの、手は小刻みに震えて、目は狂ったひとのそれのよう。 一点を凝視し、動かない。裁判中の動作や表情もはっきりとふつうのひとのそれではない。

しかしまあ、ほんとにいろんなことを考えされられる映画でしたわ。

「神よりも有名」になったビートルズを、”God”という曲で、その神と共に葬り去ったJohn Lennonの、その神殺しにプロデューサーとして加担した男である。
他方でほぼ同時期に、神への愛全開、信仰表明としかいいようがないGeorge Harrissonの"My Sweet Lord"も、この男がプロデュースしている。

なんで? については、極めて明確に答えているところがまたすごいのだが。

映画のなかで流れるのは、どれも世紀の名曲、としか言いようのない怒濤の、圧巻のすごい曲ばっかし。
それらをこの男がぜんぶプロデュースして、「名曲」に仕上げた。 とにかくあきれるしかない。

でもそれと人殺しはまた別。 別なのか? という問いは、人間にとって表現活動ていったいなんなの? というとっても根源的ななにかに行き着いてしまう可能性もあるのだが、この映画はそこまでは行かない。 (まあ、行けないよね)

日本も、いつまでも幼稚なJohn Lennon Tributeばかりやってないで、こういう映画でも公開してみたらどうか。
君らのだいすきな"Imagine"の白いピアノは、いまこの男の家にあって、インタビュー映像の背後にずっと映っているのよ。

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