2月11日、水曜日の晩、Sadler’s Wellsで見ました。
Pina Bauschが亡くなった後のTanztheaterの公演は2020年にSadler’s Wellで” Blaubart”(青髭)(1977)の再演を見て、彼女の作ったものは今後もこんなふうに伝統芸能的に遺され継承されていくのかと、それって、なくなってしまうよりはましであるが、やはりちょっと寂しいな、と思ったものだった。
90年代からBrooklyn Academy of Music (BAM)でPinaの作品 - 新作も再演もずっと見てきたので、この2008年の最晩年の作品も再演にあたっては何等かの手が加えられて、上演後のカーテンコールの最後に彼女がちょっとだけ顔を見せてお辞儀をする、そこまでが彼女の作品だったんだよなー、って。
でも見ていないものがあればやはり見たいし、タイトルが"Sweet Mambo"なんて、80年代初の”Bandoneon”や”Walzer”など、タイトルに音楽が入っているのは外れないという確信がある。2007年の”Bamboo Blues”と並行して制作が進められ、2008年の初演時から7人のダンサーが今回の舞台に立つ。昨年日本で上演されたものと同じキャストなのかは不明。
セットデザインはPinaとずっと一緒にやってきたPeter Pabst、舞台上はシンプルなでっかいカーテンがぶあんぶあん風に靡いて膨らんでいて、そこに輝ける笑顔のNaomi Britoが大股でのっしのしと入ってきて、グラスの淵をふぁーんて撫でて鳴らしながら四方八方を挑発して、その甘さに吸い寄せられた男たちが虫のように群がって、愛と憎の、支配と服従のドラマが切れ目なく流れていって、愛における自由と束縛の止まらない追いかけっこが。そこに音楽がある限り、どんなに辛くてしんどそうな修羅場でも、甘いMamboのリズムに彩られて、実際に流れていくのはHope Sandoval, Portishead, 三宅純、坂本龍一、Cluster & Eno、などアンビエントでエレクトロニカでラウンジーでサイケでフォーキーで恨み節、呪い節もたっぷりなのに、ぜんぶしゃかしゃかのMamboになってしまう魔法。
背後で投影されていた映画は、Viktor Tourjansky監督、Zarah Leander主演の“Der Blaufuchs” (1938) – 英語題“The Blue Fox” - 女性が夫から離れて別の男と駆け落ちすることを考えるコメディで、男性による虐待の裏側でこれが流れていること、等。
昔彼女の舞台を見にいくのって、世界の都市シリーズではないが、見たことがない世界の葉っぱの裏側に触れる/見てしまう、そういうどきどきと少しの怖さがあったのだが、今回のこの舞台には堂々とした普遍的な愛憎ドラマの風格と完成度があって、とても満足して、でもやはり少しだけ寂しい気がして、それは冒頭に書いたのと同じ何かなのかも…
Pierrot Lunaire
2月17日、火曜日の晩、Royal Opera House内のLinburyTheatreで見ました。
アメリカの振付師Glen Tetley (1926-2007)の生誕100周年を記念した公演 - 『月に憑かれたピエロ』。初演は1962年。Arnold Schoenbergの同名曲(1912)にインスパイアされたモダン・ダンス創世期の作品。45分で休憩なし。
舞台には縦長三角の足場が組まれているだけ。小編成のアンサンブルとソプラノによる歌をバックに、無邪気なPierrot (Marcelino Sambé)が足場に絡まって無邪気に踊っていると、妖艶で掴みどころのないColumbine (Mayara Magri)が現れて彼を誘惑したりくすぐったりしていると、そこにちょっと悪賢そうなBrighella (Matthew Ball)がやってきて、ピエロの服をはがして三角関係をずたずたにして、これらのドラマをとってもSchoenbergな無調の音楽が、煽って倒立させて底に落っことしていく。
これらが足場の三角、関係の三角、倒立する三角などの鋭角的なデザインにあわせてわかりやすく組み立てられ展開されていって、それはまさに初期のMartha Grahamのダンスに感じるのと同じもので、ポストモダンてなに?っていうくらい無邪気で無防備なモダンのモードに溢れているのだがぜんぜん悪くないのだった。これと同じキャラクターと衣装を使って、Wayne McGregorが振り付けたらどんなふうになるのか、ちょっと見てみたいかも。
2.24.2026
[dance] Tanztheater Wuppertal Pina Bausch "Sweet Mambo"
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