8月14日、月曜日の晩、109シネマズの二子玉川で見ました。いろいろばたばたでやばい。
Greta Gerwig監督作品なので、どんなもんだろうとまず見るつもりだったが、あんなに大ヒットするとは.. もちろんよいこと、ではある。それがどう、どうしてよいのかは置いておく(かも)。
冒頭、「2001年」のパロディで女児が母となって赤子を育てるタイプの女児 - 人形のありようが、Barbieの登場により破壊されて進化の次なるステップに移行して、それを可能にした- 現実世界の変革をもたらしたBarbieとパステルピンクの理想郷 – BarbielandがHelen Mirrenの落ち着いたナレーションで紹介される。ここには大統領のバービー、ノーベル賞を受賞したバービー、医者のバービー、弁護士のバービーなどがいっぱいいて、男性のKenはKenとしていろんなのがそこらをぷらぷらしてて – Kenとは別の、固有種としてのAllan (Michael Cera)ていうのもいて、彼らには性器なんてないし、フェミニズムに関する問題も男女平等に関する問題もすべてクリアされている(と彼らはいう)。
でも、いちばんBarbie (Margot Robbie)がある日突然「死」のことを考えてしまったり、足がぺったんこになったりセルライトが出てきたり異変を感じて、これを村はずれの変てこバービー(Kate McKinnon)に聞いてみるとBarbielandと現実世界とのポータルにやばい裂け目ができておる、というのでディズニーの“Enchanted” (2007) - 『魔法にかけられて』みたいに - Ryan GoslingのKenがくっついてくるのだが – リアルワールドのLAに行ってみることにする。
現実のLAでふたりの派手な恰好は笑いものにされ、マテル社でCEOのWill Ferrellに会っても箱に戻れ! って大騒ぎされ、持ち主と思われたティーンのSasha (Ariana Greenblatt)に会ってもあんたたちがフェミニズムを後退させミソジニーのおおもとを作ったんだ、って悪態をつかれ、散々だったのだが、Sashaの母親でマテルの従業員でもあるGloria (America Ferrera)がBarbieを見出して、創造主であるRuth Handler (Rhea Perlman)にも助けられて、CEOら経営陣 - 全員オトコ - の追っ手から逃れてBarbielandに辿りつくと、馬とマチズモと家父長制(The Patriarchy – 男社会って訳すな)に目覚めてしまったRyan GoslingのKenがKendomを築いてBarbieたちを支配していて、これはやばいぞ、って3人はBarbielandを立て直すべく動きだす。
現実とは次元を隔てた異世界があって、鏡のような調和が保たれていた両者の間に亀裂が走って、その境い目で両者の溝を埋めて調和を元に戻すべくじたばた、という過去にいくらでもあったSFとかファンタジーに近いドラマなのだが、この作品で中心になって動いていくのはフェミニズムとかマスキュリニティとか家父長制とか消費社会とか老いとかプライドとか、概念とか観念に近いところのそれで、主人公のお人形たちはそれらを単純化して表象する記号的な何かでしかない。という難しさがあるので、子供向けではないのかも(見ているだけで楽しいとこも沢山あるけど)。そして概念とそのありように関して、という話になると、その裾野は歴史も含めてものすごく広がって、アカデミックな視点からすればちがうんじゃねーの、みたいな話も当然出てくるのだと思うし、「オッペンハイマー」のあれみたいにネタとして消費されやすいものになってしまう。ものすごく皮肉なことだけど。
が、そういうのを含めても、ここまでいろんなものを詰め込み、やりたい放題に膨らませて、表面上のものだったとしてもBarbieが勝利して - 洗脳を解く、という形での - Ryan Goslingを虚無の沼に沈めたのは見事としか言いようがない。Margot Robbieのパーフェクトな意味なしのきらきらとRyan Goslingの最後の方のふぬけた目の光とか、すばらしいったらない。
そして最後のとこ。記号が肉としてアクティベートされる瞬間をさらっと示す。かっこいい。
あと、日本とか家父長制が包括で無反省に肌レベルで浸透してしまっている - しかも更に推し進めようとしている - 国だとぜんぜん理解されないのかも。この国はマテルよりも「あしたのジョー」と「巨人の星」で洗脳されている昭和のじじいどもを洗濯・解毒しないとどうしようもない。それでもみんな幸せらしいから勝手に滅びろ、って。
音楽はずっと楽しいのだが、Billie Eilishの"What Was I Made For?"がみごとで、ずっとここが出発点で、常にここに立ち返るのだろうな、と思った。
あと、Greta Gerwigさん、Matchbox Twentyのファンなのか。ふーん。
プルーストバービー、あったのならほしかったかもー
これから休暇にでます。たった3日間だけど…
8.16.2023
[film] Barbie (2023)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。