8月12日土曜日、日本へのフライトは19:20発、それまでになにをどこまで見ることができるか。
この日はお買い物よりも映画よりも絵画のモードになっていた。日本を発つ前からなんとなく。
美術館が開くのは10:00なので、8:30に開く泊まっていたとこの近くのSt Paul's Cathedralに入って、いつものように地下のお墓をうろうろしてお祈りなどをした。
で、10:00に間に合うように向かったのがDulwich Picture Gallery。ぜったい見たいやつから。
Berthe Morisot: Shaping Impressionism
本当か、と思うのだが英国では70年ぶりとなる展覧会だという。マネが描いたMorisotの肖像は有名だが(でも彼女はマネを描いていない)この展示はマネの死後に彼女が描いた”Self-portrait” (1885)から始まる。かっこいい、これだ、って思う。自身の娘や妹、夏の日の遊びとか、日常の身近な題材をふんわり描いた日曜画家のへたうま風味、って言う人(まだいるのかそんなの)は言うのかもだが、本当にブラッシュのうねりとか素敵で、この展示ではFragonard(Morisotの母はFragonardの曾姪なんだと)やBoucherからの、更には英国のGainsboroughやReynoldsからの影響もフォーカスされていた。Musée Marmottan Monetからの貸し出し以外にはプライベートの、見たことないのも結構あって痺れた。
そこからバスと地下鉄を乗り継いでNational Galleryに向かったのだが、まわる順番を間違えたかなー、って(終了直前で危なそうだったので時間指定のチケットを早めに取ってしまっていた)。
After Impressionism - Inventing Modern Art
3月に来た時にはまだ始まる手前であーあ、だったやつ。後期印象派でもポスト印象派でもなく、印象派以降、モダンアートの始まったあたり - つまりほぼなんでもあり、って。最初の方はセザンヌもゴッホもゴーギャンもマティスもあるのだが、そのうちナビ派もキュビズムもクリムトもムンクもカンディンスキーも出てくる。印象派がパンクだったのだとしたら、パンク以降にうじゃうじゃ湧いてきた有象無象をこんなかんじ? くらいで束ねて纏めていて大雑把すぎない? って思ったのだが、ざーっと流してみたら思いのほかおもしろかったので、カタログ買って後でちゃんと見る。クリムトの”Portrait of Adele Bloch-Bauer II” (1912)があったねえ。
ここから隣のNational Portrait Galleyでふたつ。2020年に(直前の展示 – “Cecil Beaton's Bright Young Things” - がすばらしくよかったのに)ロックダウンに入って、そのままリニューアルで閉じてしまったとこがようやく戻ってきた。ただいまというかおかえりというか。
Yvonde - Life and Colour
英国の女性写真家 - Yevonde Middleton (1893 – 1975) - Madame Yevondeのキャリアを総括した展示。身近なポートレートから入ってカラーの世界に目覚めて自分のスタジオを開いて、展示されていたのはほんの一部だと思うが、もっと見たくなる。Vivien LeighやJudi Denchのポートレートも素敵なのだが、お茶目で楽しそうな自撮りの数々がなんともいえずよくて。
Paul McCartney Photographs 1963-64 - Eyes of the Storm
こちらの展示の方が賑わっていたかも。英国でブレークしたばかりのThe BeatlesのPaul McCartneyが、演奏やレコーディングの合間に自身でカメラを手にして撮ってのこしていた写真たち。特に1964年2月のアメリカ上陸前後 - なかでも上陸直後のNew York – 追ってくる報道陣やファンたち - をとらえた写真が生々しく、見事なドキュメンタリーになってしまう驚異。
ここからTateに。今回ここで見たい展示は3つあって、個々にスケジュールを考えてチケット押さえるのは面倒だったのでメンバーに入ってしまう。入ってしまえばいつでもどこでも何回でも。
Hilma Af Klint & Piet Mondrian
今回もっともわくわくしていたやつ。Hilma Af Klintの絵の実物をついに目にすることができるから。
Piet Mondrian(1872-1944)とHilma Af Klint(1862-1944)を時系列で交互に並べていく構成。
抽象に移行する前のMondrianがどんなにすごいやつだったかは、2019年のMusée Marmottan Monetでの展示”Mondrian figuratif"で思い知ったのだったが、そんな彼の初期の具象 - 風景画とHilma Af Klintのそれが静かに対照され、その対象に接する目が徐々にシンプルな面と線とに解かれていって、まるで必然のように「抽象」というフリースタイルに転調というかジャンプする。初めはこのふたりを並べるのって強引じゃないか、とも思ったのだが、同じような進化を辿った別々の生き物標本を見るようだった。抽象(化)というプロセスの不思議なありよう。ここに大戦に向かう欧州の辺境、という時代は作用したのかどうか。
そしてそれにしても、Hilma Af Klintの実物のとんでもないこと。頭のなかがずっとわあああああ!!って騒いでいた。画面の引っ掻き、ストロークの強さ。こんなのを倉庫の隅に追いやっていたスウェーデンの画壇に改めて呪いあれ、だわ。
カタログを買って、ここからTate Britainに向かおうとして、昔は川をいく渡し船があったよな、と探したらまだやっていたようで、船出直前だったので走って乗りこんで西に向かったのだが、Tate BritainのあるMillbankの手前でUターンして戻りやがって…(ちゃんと船内放送を聞こうな)
Isaac Julien What Freedom is To Me
これ、すごく見たかったのだが、展示されているインスタレーション作品はそれぞれ20分以上だったりしたので表面だけざーっと見て(いや、そんなの見たことになっていない)。
The Rossettis
みんなだいすきDante Gabriel Rossettiを中心にElizabeth Siddal, Fanny Cornforth, Jane Morrisまで、絵画から詩、ドローイング、写真、デザインまでライフスタイルまるごとをアートで覆いつくそうとした彼らのレトロスペクティブ。ちょっとごてごて装飾過多、綺麗すぎのところはふうん、なのだがたまにすごくかわいいのがあったりしてやられる。時間があったら何度か通いたくなるやつ。
ここまででだいたい午後2時過ぎくらい。買い物も少しはしたいのでWallace Collectionの展示-”Portraits of Dogs: From Gainsborough to Hockney”は泣きながら諦める。今更だけど交通のとこで失敗しなければー。
ここでいったん切る。
8.15.2023
[art] London - 0312
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