12.01.2020

[film] Zappa (2020)

11月18日、金曜日の晩、DOC NYCで見ました。このフェスで見た最後の1本。

タイトルの通り、Frank Zappaのドキュメンタリーで、監督は“Bill & Ted”のBill役 - Alex Winterさん。クラウドファンディングで最初の30日間に8000人の支援者と$1,200,000の制作資金を集めた、と。

冒頭にローレルキャニオンにあるZappaの旧邸 – 未亡人Gailの死後Lady Gagaが買ったって – にある、資料庫の様子が映し出される。この場所にカメラが入ったのは初めてだそうで、ずらっと並べられたその背表紙を眺めただけでもとんでもないのがぞろぞろ出てきそうな予感。

それから91年のプラハ - Velvet Revolutionでロシアからの支配を振りきったチェコの人々に熱狂的に迎えられてパフォーマンスに向かうZappaの姿を。これが記録に残る彼の最後のライブの姿だという。

膨大なアーカイブを掘って書誌学的にZappaの業績を振り返っていく、というのは当然あるのだが、でもバンドリーダーであり変態ギタリストであり現代音楽の作曲家でありジャケットアートではダダに近いところで暴れまくったアーティストであり、とにかくいろんな側面がある中で、ここでは体制や既存概念に抵抗する – 徹底的にこき下ろして笑い倒す - 革命家、として描こうとしているのではないか、というのが冒頭のプラハのシーン。

Edgar Vareseで音楽の面白さに目覚めて高校でDon Van Vliet -  後のCaptain Beefheart - と出会ってブルースを知り、音楽の世界に足を踏み入れて、The Mothers of Inventionのギタリストからリーダーにのし上がって、各地で当時の常識をぶちこわすライブの伝説をいっぱい作って..  この辺はファンであればふつうに知っていることだろうが、うううってなるのは、アーカイブから出てきたであろう当時のライブ映像がほんの少しづつしか紹介されないことか。そのうち干し草のようにどかどか投下されることを望む。

後半は毒舌お下劣破天荒な破壊者 ~ 活動家 - レーガン時代、Tipper Goreが進めた歌詞検閲スキームに対する抵抗とか - としての側面と、独自に複雑な進化を遂げていった音楽 - 破産してインディになってから最大のヒットとなった“Valley Girl”とかも - の両面を掘っていく。音楽の方のコメンテイターとしてSteve Vai, Ruth Underwood, Ian Underwood, Scott Thunesなど、映像では大量のバンドメンバーの中からTerry Bozzio, Patrick O'Hearn, Jean-Luc Ponty, Adrian Belewなどの姿がちらちら、他流試合ではZubin Mehtaとの共演やSNLでのJohn Belushiとの絡みまで。

暴れん坊外伝よりもどうしても音楽の方に耳が向いてしまうのはこっちの問題だと思うのだが、超複雑曲と言われる"The Black Page"をRuth Underwoodさんのピアノともう一人のドラムスだけで再現して、Ruthさんが、ほら、ほんとはこんなにも美しいのよ – っていう辺りがものすごくおもしろかった。Zappaの音楽家としての作家性って、どんなふうに語ったりできるものなのかしら? 時代で切るのか器楽構成なのか演奏様式なのか歌詞なのか、とか。

そこから広がって、Zappaの広範な活動を60年代以降のアメリカ文化のどこにどう位置付けるのか、ってこれからのテーマ(or もうある?)になると思うのだが、個人的には周囲(含. 自分)をぶっ壊して笑いを取りながら地平線の彼方に消えていく広義のコミック/コメディの域にあって、その極めてアメリカ的で大雑把(.. 使いたくなかった)なノリと突き放して叩きのめすユーモアは英国のMonty Pythonの対にあたるのかしら、とか。

そうやって彼がぶちかましたネタの中にはセクシズムや差別ネタも当然あり、すげーおもしれー、だけはすまされない、この辺の批判も含めた振り返りが求められる季節なのでは。(Monty Pythonもまったく同様) それって、Zappaの音楽を難しい顔して囲い込みたがるマニアのおじさん達から解き放つよいきっかけにもなると思うの。

NYに渡ったばかりの頃 – 93年の春くらいだったか、Beacon TheaterでZappa Bandのライブがあって、その時まだZappaは存命だったのでみんなで西海岸の方にエールを送ろう!ってわーわーやったのを思いだした。Zappaなしでも彼の音楽は十分こんがらがってわけわかんなくて、でも美しかったこと。

Zappaの迷宮 – というよりブリューゲルの絵みたいに楽しい雑多で多様な世界への入門編としてとてもよい映画だと思った。

そして、当面のあいだ見なかったことにしようとしていた”Zappa in New York”の40th Anniversary Deluxe Editionをどうすべきか問題が再浮上している。クリスマスの月だし..


“The Crown”のシーズン4を見終えてしまったので、”The Undoing”っていうのを見始めた。 Paddingtonの悪役ふたりが組んで本格的なクマ退治に乗り出すやつ、って聞いていたのになんかちがって暗い...

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