9.13.2019

[music] Jonny Greenwood

10日の晩、Royal Albert HallでのBBC Promの#70。これはLate Night Promで、開始が22:15、休憩なしで終わるのが23:45くらい。ご飯ゆっくり食べてから行けるのでこの時間のがいいなー。

この回はJonny Greenwood特集で、彼の作品3曲 – うち1曲は世界初演 - と彼自身のキュレーションによるバロックから現代音楽まで。 全6曲。

時間帯のせいかチケットあるよの宣伝がずっと来ていて、でもだいたい埋まっている。今回はなんとなくステージの真裏の席を取ってみた。

最初がバロック音楽の作曲家Heinrich Ignaz Franz von Biber (1644-1704) による”Mystery (Rosary) Sonata No.16” (1674?)、Daniel Pioroによるヴァイオリンのソロで、間を置かずにPenderecki (b. 1933)の”Sinfonietta for Strings”(1992) の世界に入るとこっちはヴァイオリン34台で、300年以上の隔たりがあり、30倍になった人数構成、にも関わらず、そのギャップのなさに驚く。

続く2曲がJonny Greenwood作ので、彼はでっかいタンブラを抱えて登場し、もう一人のタンブラのひとと床に座ってびょーんびょーんと鳴らしてから”Three Miniatures from ‘Water’ (2018) No.3” というピースを。Philip Larkinの同名の詩にインスパイアされたもので、彼らの他にはピアノとヴァイオリンソロと弦が16台。

続く”88 (No.1)”  (2015)は、Katherine Tinkerさんによるピアノソロで、インストラクションには”Like Thelonius Monk copying Glenn Gould playing Bach”とあるのだが、モンクぽかったけど、グールドはどうかしら?  この曲の演奏中、彼は前の曲を演奏した場所のステージ床上に体育館座りで膝の間に頭を埋めて動かなくて、曲が終わるとちらっと頭をあげてピアニストの方をみてにっこりした。ピアニストの背中側にいたのでそれが見えた。まるで映画みたいだった。

続くSteve Reichの”Pulse” (2015)が一番ふつうのクラシックぽく、聴きやすいやつに聴こえてしまう不思議。 Jonnyはエレクトリックベースを地味にぶんぶん押さえて、あとはピアノと弦6、菅4。

最後がJonny Greenwood作、BBCから委託された世界初演作 - Horror vacuum for solo violin and 68 strings。この作品になるとJonnyは舞台上から消えて、いるのはオーケストラのみ。

全7楽章で、それぞれには、”Palme Speaker”とか”Digital Delay”とか”Spring Reverb”とか”Tape Echo”とか”AMS Pitch Shift/Reverb Delay”とかインストラクション(?)がついていて、Daniel Pioroのソロが端でひっかきだした最初の音が位相を変えながら横方向に、全体を揺らしたり浸みていったり反響しあったりする百態を描いて、楽章によってはヴァイオリンのボディの穴から息を吹きこんだり楽器の側面を叩いたり床をどかどかしたり多彩で。

全体としては弦楽器への愛を込めつつその可能性を掘りまくる90分で、彼の曲がもつテンションもダイナミズムも弦の張力がもたらすそれで、そこからエモーションが立ちあがるんだなー、って改めて。

彼の映画音楽、“Phantom Thread” (2017)のサントラは好きでよくかけていて(”There Will Be Blood” (2007)はうーむ、だったけど)これも弦 – Thread - がよいのよね。

(さっき帰ってきたらBBC4でこれの収録映像を放映していた。BiberからPendereckiに切り替わる瞬間がとってもかっこいいの)

BBC Prom 63: Yuja Wang plays Rachmaninov

5日 - NYに渡る前の晩にRoyal Albert Hallで見ました。Promの63。

Yuja Wangは昨年もここで見て、クラシック・ピアノ界のSt. Vincentだわかっこいいー(という言い方はどっちにも失礼よね)、だったのでまた見たくて、でも今年もチケットは早々になくなり、公演数日前になんとか取れた。

最初がSergey RachmaninovのPiano Concerto No 3 in D minor(1909)。休憩を挟んでJohannes BrahmsのSymphony No 2 in D major(1877)。 Yuja Wangさんが入るのは前半のみ。

ピアノ協奏曲第3番は、みんなたぶん聴いたことがあるやつ。スラブの抒情とロマンたっぷりでピアノがあんまり見えないようで気がつけばひたひたと背後についていた狼が牙をむいて襲いかかってきて、エンディングはうおおおりゃーってピアノを客席に投げこむかのような勢いと共に終わった。見ているこっちまで肩で息をしてしまうかんじ。

全体の半分なのだがアンコールを求める拍手が止まなくて、3回出てきて、最後は”Tea for Two”をしゃらりふんわか、気持ちよくやった。 彼女、NYのThe Carlyleとか、昔のSupper Clubみたいなところでライブやってくれないかしら。もちろん衣装はそのままで。

続くBrahmsは弦の鳴りがものすごく厚くてよくて、このひとたち誰? と思ったらStaatskapelle Dresdenなのだった。 昔Carnegie Hallで聴いたなー。指揮はシノポリだったなー。

今年のPromsはたぶんこれでおわり。これが終わると秋のいろんなのが始まる。

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