6日金曜日の朝にNew Yorkに飛んで、9日月曜日の朝に戻ってきました。忘れてしまわないうちにメモを(ってやっているうちにその前のやつらを忘れてしまうこのごろ)。
今回の旅は5月初に出張で来たとき、日曜日の自由時間が雨で寒くてどこ行っても全壊だったことのリベンジで、MetのCampのも終わりそうだし、でも時間ないし、でもとにかく行くんだろ行きたいんだろ、って、現地2泊機中1泊で。
Neue Galerieは狭間、MoMAは改装で休み、BowaryのICPはなくなっていて、ライブはThe Raconteursに行きたかったけどSold outで、それでも。
6日、昼過ぎにJFKに降りたち、入管で少し時間がかかり(ESTAではなくVISAなので)、地下鉄でダウンタウンに入ったときは15時くらいで雨ざあざあ、既にじゅうぶんしょうもないかんじだった。
こんな程度でなんかへの愛を試そうとしているのだとしたら、試されてやろうじゃないか(←典型的なストーカーの回路)。
最初にMorgan Library & Museumに。
Walt Whitman: Bard of Democracy
生誕200年を記念した展示で、『草の葉』は版の違いも含めてたっぷり、草稿に原稿にOscar Wildeとの、Ralph Waldo Emersonとの交流とか、Brooklyn - NYの都市生活者としての視線や側面も盛りこみ、更に現代へのEchoとしてAllen Ginsbergと、Hockneyの”Adhesiveness” (1960)が展示されている。彼の本の紹介として、”Democracy” - “Sex Lust” - “The worship of the body” ってあって、これって今の時代のだよね、って。
Drawing the Curtain: Maurice Sendak’s Designs for Opera and Ballet
Whitmanの反対側でSendakの、彼の舞台アートを中心に、彼が手掛けた舞台の被り物とかセットデザイン、スケッチとか、『魔笛』にヤナーチェクの『利口な女狐の物語』に『くるみ割り人形』にプロコイエフの『三つのオレンジへの恋』に、『かいじゅうたちのいるところ』のナッセンによるオペラ版とか、どいつもこいつも、としか言いようのないかわいさ –でもぜったい爪とか牙とか一癖ある – に溢れていてたまんない。 彼の絵本からそのまま飛びだしてこっちに向かってくるような活きた勢いがあるの。
Hogarth: Cruelty and Humor
英国のWilliam Hogarth (1697–1764)によるエッチング - ”Beer Street and Gin Lane” (1751)と”The Four Stages of Cruelty” (1751)の展示。犬がげろげろしていたり臓物がびろびろしていたり、全体としては酔っぱらい戯画のお茶目さがあって、いくらでも見ていられる。
土曜日に雨はあがって、朝いちでMetropolitan Museumに並ぶ。
Camp: Notes on Fashion
最初に言葉としてのCampの起源とか概念の説明が当時の絵文化説明つきであって、続けてOscar Wildeがあり、Christopher Isherwoodがあり、Susan Sontagがあり、そこから先はそれらを体現するファッションいろいろ見本市、みたいな。そもそもが形容詞だったり副詞だったり状態だったり態度だったり振る舞いだったり、その遷移や受容の線だったり、ものすごく漠として曖昧で、その曖昧さの境界を踏みだしてみる、みたいなところまで含んでなんでもありのやつ、それがCampというものなので、展示としてはあんなもんなのかしら。 水族館の水槽みたいなのに並べて展示、も一案だとは思うけど、もっと過剰にでたらめにごちゃごちゃしていてもよかったかも。 被りモノの人がその辺に突っ立っているとか。
あと、タイトルからしてオトナのおしゃれさん・ツウ好み向けの展示だと思った。子供にもCampって楽しくて素敵なんだよ、ってわかるような配慮があってもよかったのではないかしら。
あと、前日にWhitman – Wildeコネクションを見ていたので、Whitmanを出してもよかったのでは、とか。
Epic Abstraction: Pollock to Herrera
Campの横でやっていたのでそのまま流れて。Pollockの”Autumn Rhythm” (1950)を見てああ秋だわ、って思って、その次のMark Rothkoで更にしんみりする。でっかい抽象画がどかどか並んで、彫刻・オブジェがすこしだけ。Joan Mitchellの“La Vie en Rose” (1979)とかCy Twomblyとか、Lee Krasnerも。
この大きさ、この面(めん)、によって表象されなければいけなかった何か、とは一体なんだったのか。
Apollo's Muse: The Moon in the Age of Photography
月面着陸50周年記念で、月面写真だけでなく、昔から続く月面アートも含めて展示している。
ばたばたと駆け抜けてしまったのだが、ひょっとしてウサギとかいた?
Play It Loud: Instruments of Rock and Roll
なんでMetがR&Rを? と思ったのだがMetには古代からの楽器の展示コーナーもあって、ここではRock and Rollで使われてきた楽器を展示しているのだった。当然のようにRock & Roll Hall of Fameとかが横にいる。
なので有名なミュージシャンが使ってきた歴代の名器(うぅ恥ずかし)がずらーり並んでいて、それらが使われているであろうロック・クラシックスがゲーセンのBGMのようにじゃんじゃか流れていて、それらを前に感極まって得意満面で説明する(だいたい)男性とそれをはいはいって聞き流す(だいたい)女性の絵が至るところに展開されている。ギターとか、実際に引っかいたときの音が聴けるわけではないので、ふーん、でどちらかというとKeith Emersonがナイフ突きたてた鍵盤とか、Ray ManzarekのオルガンとかDepeche ModeのARPとか、そういうほうに惹かれた。あとはギア再現コーナーで、Van HelenとかJimmy PageとかTom Morrelloのペダルとか - でもマニアはみんな既に知っていそうな。
Joe Strummerの傷だらけのテレキャスとか、こんなところで展示されると思っていただろうか。
あと、Stonesのギターはツアーで持っていかれてしまいました、って貼紙があった。どうでもいい。
Leonardo da Vinci's Saint Jerome
ダヴィンチの没後500年記念で、ヴァチカンから”Saint Jerome” - 『荒野の聖ヒエロニムス』(1480)が来ているのだった。
場所が隅っこで、人が殆どいなかった。未完だけどほんと絵であることの驚異が溢れかえった作品。 もったいないったら。
そこから久々にSolomon R. Guggenheim Museumへ。
Artistic License: Six Takes on the Guggenheim Collection
6人のアーティスト - Cai Guo-Qiang, Paul Chan, Jenny Holzer, Julie Mehretu, Richard Prince, Carrie Mae Weems - にGuggenheimのコレクションから自由にキュレーションして貰って並べてみる、ていう(キュレーターにとっては)お手軽企画で、見たい企画展示は別にあったのだが、そこに行くにはカタツムリをぐるぐる登らなければいけない。見たことあるのも結構あったけどCai Guo-QiangのとJenny Holzerのがおもしろかったかも。
Implicit Tensions: Mapplethorpe Now
この展示はフェーズが2つあって、最初のは既に終わっていて、2つめのこれは6人のアーティスト - Rotimi Fani-Kayode, Lyle Ashton Harris, Glenn Ligon, Zanele Muholi, Catherine Opie, Paul Mpagi Sepuya - がMapplethorpeから受けた影響 – 内在する張力 - について彼の作品を選んで置いたり自分の作品を並べてみたりして語っている。 でもどれだけ語ってみても、Mapplethorpeの写真そのものが持つTensionには届いていないかも。 彼の作品て、ギリシャ彫刻のようなフォロワー不要、不動不変(普遍)の神話になってしまっているかのような。
Basquiat’s “Defacement”: The Untold Story
一番上のフロアでやっていた展示。”The Death of Michael Stewart” (1983) - “Defacement”と呼ばれるその絵は、Keith Haringのスタジオの壁に描かれていたものをひっぺがしたもので、若いアーティストのMichael Stewartが警官に暴行されて死亡した事件をきっかけに描かれたもの。当時の現場写真やその頃に描かれたものも展示されていて、じっと見ているとそこにいた/いられなかった彼自身の痛みと怒りがひりひり伝わってくる。
美術館まわりはここまで。 いったん切る。
9.10.2019
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