9.07.2014

[film] 夜の片鱗 (1964)

17日の日曜日、シネマヴェーラの中村登特集で見ました。
前日に見た「土砂降り」の揺るぎなく冷たいかんじがなかなか衝撃だったので、きちんと見ねば、と。
英語題は”The Shape of Night”。

芳江(桑野みゆき)は町工場で働く明るい娘で、手伝いのかんじで夜のバーでバイトを始めたらそこの馴染みの英次(平幹二朗)に誘われるままに仲良くなって同棲を始めて、でも彼は実はやくざで
金がなくなったらヒモとして彼女に売春を強要するようになって絵に描いたように堕ちていき、逃げようとしても組織が手をまわしてひどいことするのでどうにもならない。

という状態で街角で冷たい顔で客を取っている芳江が、真面目そうな建築技師の藤井(園井啓介)と会って、あなたはこんなことをしているひとじゃない、一緒に逃げよう、て言われて最初は相手にしないのだが、次第に揺れはじめて。

がんじがらめで救いようがなくて、でもそこには英次との楽しかった頃の思ひでとか、玉抜きにされて以来なんか優しくなった英次とか、そんな半端な雑念が浮かんできて、それが彼女の表情をますます頑なにして夜のなかに浮かぶ彼女の輪郭を際立たせて、そんな(複数の)彼女が反転して現れるのが「夜の片鱗」ということらしい。 どこまでもきつくて非情で容赦ない。

世界的に評価されたらしいカメラと色彩は確かにすばらしいのだが、それ以上に桑野みゆきの存在の強さがすごい。 いつどこで爆発してもおかしくない何かを抱えて、その緊張感を最後まで緩めずにうずくまる野良猫の凄みがあるの。

でもきつかった。 画面が桑野みゆきの表情を生々しく追えば追うほど、こんなのあってはいけないよね、て。


この後、新宿に移動して「ソニはご機嫌ななめ」を見ようとしたら売切れで、とってもご機嫌ななめになったの。

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