5.25.2023

[film] Four Sons (1928)

シネマヴェーラのジョン・フォード特集、明日で終わってしまうのかー。 楽しかったのになー。

Kentucky Pride (1925)


5月13日、土曜日の昼に見ました。 邦題は『香も高きケンタッキー』。
見るのはもう3回目、最初は京橋で、次は前回だか前々回のこの特集で、でも何度見たってよいの。サイレントで、これは伴奏もついていない完全な無音上映なので、始まると寝ちゃうかな、って思うのだがまったくそうはならない。頭のなかでがんがんいろんな音だの行進曲だのが威勢よく鳴りだすのを止めることができない。

金持ちの栄枯盛衰、親子間の愛、動物への愛、馬同士の愛、都会のワル、レースの興奮、などいろんなのが次々にやってきてそれぞれできりきり胸が痛んだり熱くなったり慌ただしい。

フルバンドを横に置いて音をつけさせたらすごく盛りあがったり泣いたりのジェットコースターができそうな気がする。

あと、農場のシーンでちょこちょこ猫みたいのが横切ったりしていて、Fordの映画ってたまに猫とか、隅っこにいるよね。


The Prisoner of Shark Island (1936) 

5月13日、↑のに続けて見ました。 邦題は『虎鮫島脱出』。 虎鮫? 虎鮫はおとなしい子だよ。

劇場でリンカーンを暗殺した際に足を骨折したJohn Wilkes Booth (Francis McDonald)を逃走中に治療した(もちろん暗殺犯とは知らず)として監獄島に送られてしまったSamuel Mudd医師(Warner Baxter)の実話をベースにしたドラマ。

妻と娘で幸せな家庭をもって真面目に医者をやっていたMuddにとっては全てが突然のこじつけすぎて不条理劇としか言いようのない裁判を経て、絞首刑にならなかっただけましの彼が送られたのは周囲に生鮫がうようよしているShark Island(でも映画の中でこの名前で呼ばれることはない)で、陰険な看守とかがいっぱいでもうだめだ、だったのだがご近所でMuddが12人の赤子を取りあげた家のBuckが看守として忍びこんでいて、彼の協力で義父を中心とした救援船がやってきていけるか? ってなったのに失敗して、地下牢に繋がれて今度こそだめだ、になるのだが監獄で蔓延した黄熱病で医師がいなくなってしまったので彼にスポットがあたり…

いじわるな看守役のJohn Carradineがすごくよくて、彼はやはり自分の知るCarradinesのパパだったねえ。

とても荒唐無稽な話のように思えなくもないが、Muddが島送りになった理由は911以降に怪しいと決めつけた移民をグアンタナモ基地に問答無用で送りつけたのとほぼ同じ理屈なのであんまし笑えないのだった。


Four Sons (1928)

5月14日、日曜日の午後に見ました。
邦題は『四人の息子』。サイレントで、原作は英国のサフラジェット運動にも関わっていたI. A. R. Wylieの小説"Grandmother Bernle Learns Her Letters" (1926) - George Cukorの”Keeper of the Flame” (1942)『火の女』の原作も彼女。無名時代のJohn Wayneが出ているって(..あれかな?)。

ドイツに暮らす未亡人のBernle母さん(Margaret Mann)には自慢の4人の息子 - 上から軍人でぱりっとしたFranz、次男ぽいJoseph、力持ちのJohann、末っ子でまだ子供っぽいAndreas - がいて、兄弟と村人はみんな母さんが大好きで誕生日になるとお菓子を焼いてお祝いをするのだが、第一次大戦が忍び寄ってきて、Franzは当然ドイツ軍に従軍して出て行くことになるし、アメリカに渡りたいというJosephに母さんは渡航費を渡してあげて、やがてまだ若いJohannとAndreasにも召集がかかって、息子がみんないなくなってしまった母さんは息子たちのことが心配で張り裂けそうになっていてかわいそうなの。

渡った先のNYで結婚して息子もできてデリカテッセンを(場所はあの辺かな)を開いたJosephはアメリカの参戦を知ると実家にやってきたドイツ軍のやな連中を思い出し、あいつらをやっつけるべく米軍に入って戦地に赴くのだが、その戦場で負傷したAndreasと会った - 途端に彼はJosephの腕のなかで亡くなってしまう。

JosephがNYに戻るとデリが大繁盛していてこれなら母さんを呼べるぞ、って手紙を書くのだが、当時ドイツからアメリカに移住するには英語のテストがあったらしく、一生懸命アルファベットとか数とか憶えて、現地の試験はなんとかパスして、でもエリス島に着いてからのテストは緊張と疲労できちんと答えられなくなって(かわいそうすぎてこっちが泣きそう)、ひと晩待ちましょうかってなった後で、彼女はふらふら町に出て行方不明になって…

最初の方の家族みんなで一緒にいる場面とか、運河のある日当たりのよい町の描き方が至福すぎるので、そのあとの試練が骨の髄までしみてきて、そこからはなにが起こってもかわいそうで、これは母さんを演じたMargaret Mannがすごいのだとおもった。 戦争と母ものだと”Pilgrimage” (1933)があるし、戦争で引き離される家族だと”The World Moves On” (1934)とか戦争が大嫌になるのがいっぱいあるけど、これはものすごく強いやつかも。


Fort Apache (1948)

5月15日、月曜日の晩に見ました。『アパッチ砦』。

誰もが題名くらいは聞いたことあるかも、の西部劇クラシック、と言われているがちっとも痛快ではない、むしろ逆のやつで、無理やり一件落着に寄せようとして変なふうに撚れてしまったような。原作はJames Warner Bellahの短編"Massacre" (1947)。

Thursday (Henry Fonda)と娘のPhiladelphia (Shirley Temple)がどこかから左遷されてアパッチ砦に、こんな土地とか野蛮人とか、蔑視まるだしでやってきて、受け入れ側のYork中佐 (John Wayne)たちはやれやれなのだが、Philadelphiaは若いO'Rourke少尉 (John Agar)のことを好きになってしまったらしい。

短期間で全員に嫌われて呆れられたThursdayはアパッチ族との交渉もYorkが信頼ベースで築いてきた関係をぶち壊して討伐に行くぞ、って号令をだして、結果的に軍がまるごと自滅してしまう – Yorkと若O'Rourkeは無事。

上がバカだとみんなリアルに死ぬ事案、が極めてわかりやすく描かれていて、でもこの解決法は現代に至るまで特にないっぽいので、本当にきついホラーになっていて、最後みんななんかしんみり笑っているようなのがわからない…

Henry Fondaって、若き日のリンカンよりもやっぱりこっちのぼんくら系の方がはまっている気が強く、した。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。