5.19.2023

[film] When Willie Comes Marching Home (1950)

シネマヴェーラのフォード特集からみっつ。もうほんとにフォードすごいねえ(になってしまった季節)。

5月4日の午後に見ました。『ウィリーが凱旋するとき』
原作はSy Gombergの短編” When Leo Comes Marching Home” (1945)で、ロカルノで金獅子賞を受賞している。

ウェストバージニアの田舎で両親や恋人とうだうだしていたBill (Dan Dailey)が真珠湾攻撃の報を聞いて真っ先に陸軍に入隊して戦場にいくぞ! って張りきるのだが配属されたのは地元の基地で、教官として都合よく重宝されちゃってそのまま数年、周囲からは「まだいる」って白い目で見られるしうんざりしていたところで飛び立つ直前の戦闘機の欠員が出て、乗れ! って言われてばたばた乗りこんだらイギリスに向かう機は燃料不足で他のみんなは脱出して、居眠りしていた彼は遅れてドイツ占領下のフランスに落下傘で降りることになる。

そこでYvonne (Corinne Calvet)をリーダーとするフランスのレジスタンスに拾われて、そこで彼らが撮影した怪しげなロケットの打上げのフィルムを持って英国に渡って関係者や軍の上層部に話したりするのだが誰も相手にして貰えず病院送りになってついてない…

すっとぼけ戦争コメディで、Bill自身にすごい運や才覚があったり、その帰結としてなにかを成し遂げたわけでもなんでもなくて、すべてが法螺話みたいに格言みたいにご都合よく転がって収まるところに収まってしまう(この場合は勝ち負けか)。戦争なんてそんなもの。 アルトマンの”M*A*S*H” (1970)で参照されたのもわかるかっこよい適当な投げやり感がたまんない(けどどこだったか?)。


Young Mr. Lincoln (1939)

5月8日、月曜日の晩、連休が終わってしまったのを嘆きつつ。邦題は『若き日のリンカーン』。

1832年のイリノイで、お金はないけど手にした法律の本が好きで法律家になろうかな、と友人と法律事務所を設立した若き日のLincoln (Henry Fonda)が独立記念日のお祭り騒ぎのなか起きた喧嘩沙汰のどさくさで起こった殺人事件の裁判で、絶体絶命のどうみても善人な被告兄弟Matt (Richard Cromwell)とAdam (Eddie Quillan)とその家族を陰険な検事 (Donald Meek)と怪しい被害者友人のJ. Palmer Cass (Ward Bond)らと渡りあいながら弁護して救うお話し。

よき家族がいて、貧しく弱い立場のものがいて、驕れる強者やいじめっ子がいて、それらを利用する連中がいて、昔からずっとあるアメリカを凝縮した風景のひろがる法廷で、若い頃のリンカーンはすでにこんなふうに振舞っていたのだ伝説を置いてみて、それって聞いただけでちゃんちゃらおかしいや、になっておかしくないのに、ここのHenry Fondaのどっしり落ち着いて不遜な態度ときたら – はっきりとおまえ演技してるだろ!って言いたくなってしまうのになんだかぎりぎりのところでブリリアントで素敵に見えて、感動してしまったりするのってなんでなのか。(自分にとってのHenry Fondaのイメージは”The Lady Eve” (1941)なので余計に)

こういうのが作られてしまったので、若き日のリンカーンはこの後もゾンビと戦ったり大活躍することになったのさ。


Stagecoach (1939)

5月10日、水曜日の晩、まだ連休が終わってしまった痛手から立ち直るべく見ました。そんなの立ち直れるわけないし。みんなが知っている『駅馬車』。何度も見ているのだがつい。

原作はErnest Haycoxによる短編” The Stage to Lordsburg” (1937) 。これをDudley Nicholsが脚色している。
西部劇の金字塔とか代表作、みたいに言われることが多いのだが、見た後の感触はものすごく軽くて後にはなんも残らない、残していかないふうなのがすごい。

リンカーンの法廷と同じように、いろんな職業とか境遇の人達がひとつの駅馬車に押し込まれるように乗り合わせて、高慢ちきな人、嫌な顔をする人、される人、されたくない人、どうでもよい人、お尋ね者、などの9人が団子になって西部を横切っていくのを、その団子をまるごと敵として憎んで殺そうとするインディアンが追いかけ、追いかけられる方もインディアンまるごとモンスターのような脅威として見なして速すぎて互いが見えない距離感で撃ちあい殺しあいをして、そこから逃れて町に着いたら今度は個別の復讐で撃ち合いをしたり、子供が生まれたり、恋が生まれたりする。これらぜんぶを運んだのが原野を横切っていく「駅馬車」で、これはアメリカのパンドラの函だったのか。 清水宏の「バス」とは同じなのか違うのか。

この次にフォードが作ったのが上の『若き日のリンカーン』で、これ以降はもう問答無用の巨匠としか言いようのないフィルモグラフィーになっていくねえ。

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