5.27.2023

[film] 金都 (2019)

5月20日、土曜日の午前、新宿武蔵野館の《新世代香港映画特集 2023》というので見ました。

邦題は『私のプリンス・エドワード』、英語題は”My Prince Edward”。 作・監督は香港のPrince Edwardで生まれ育ったというNorris Wong。

金都市場(ゴールデン・プラザ)の古いショッピングモール内のブライダルドレスレンタルの店で働くフォン(Stephy Tang)は同じモールのウェディング専門写真屋を経営するエドワード・ヤン(Chu Pak-hong)のアパートに暮らしてて、このまま結婚するのかなー、くらいでいるのだが、エドワードの母は今の賃貸のボロアパートを買えないかしら、って勝手に大家に交渉していたり、なんであんたが? … のすっきりしないどんよりが続き、冒頭でもペット屋で仰向けになってもがいていたミドリガメを買って帰ったりしている。

結婚に前向きに乗れないところで、結婚証明書に過去の離婚歴が載る、という話をきいて、そういえば自分が10年前にお金のために軽く本土の男と偽装結婚していた件 – たぶん書類上はまだ既婚のまま – が気になりはじめて、あーなんてめんどくさー結婚しなくていいかー、になったところでエドワードが自分のお仕事スキルを全開にしたこてこてのプロポーズ作戦をキメてくる。ぜんぜん嬉しくならない。

周囲 – というかエドワードとその母 - は結婚(式)に向けて大はしゃぎでスケジュールを組んで動きだしてしまったので、自分の過去に向かわざるを得なくなったフォンは、新聞広告まで出して当時の偽装相手のヤン(Jin Kai-jie)を探したらようやく本人が現われて、彼が計画しているNYへの移住のための申請に(偽夫婦としてフェイク写真や記録をつくったり)協力してくれるのであれば、その許可が下りたところで即離婚するよ、という。

そうやってエドワード母子によって勝手に決められていく自分の結婚の衣装や日取りと、並行して水面下の離婚作戦が進行していたところで、フォンのスマホを見てしまったエドワードがパニックを起こして彼女の結婚していた過去を問い詰めて、ヤンとの計画についてもわーわー言うのだが、もうぜんぶうるさい! ってヤンの移住に向けた面接で本土に向かって、で、戻ってきたら彼女のミドリガメがエドワードの母によって捨てられていたので、もうこんなの無理だな、って...

片方にはマザコンですぐ切れがちな粘着男がいて、もう片方には大らかすぎる大陸男 - あの後、同棲していた彼女が妊娠していたことがわかって移住の件はあっさり諦める – がいて、天秤かけてどちらを選ぶ? という話に向かうと思いきやそっちではなく、もちろんはやく結婚したい/しなきゃの話しでもなく、香港の古くて家賃も高くて人も家屋もごちゃごちゃした中で、自分は結婚とかも含めてこれからどうやって歩いていこうか? を深刻に悩んだり対話したり戦ったりするのでもなく、自分でさっさか決めてひとり歩いていく – もう歩いていけるんだぞ、というのを見つけるところがなんかよいの。

ひとつあるとしたら、エドワードのどこがどうよいのかちっともわからないことだろうか。とりあえずアパートに置いてくれたから、程度だったのだろうか? あんなの早く切っちゃえば、階段で突き落としちゃえばいいのに、って誰もが思いつつ見ていたのではないか。

彼女の部屋には(明らかにエドワードの趣味ではなさそうな)ジャームッシュの映画のコラージュ、“Rebecca” (1940)、“Eternal Sunshine of the Spotless Mind” (2004)のポスターなどが貼ってあって、なんとなくわかる。あと、それとなく隅っこに映りこんでくる「ごろっとグラノーラ」の袋が気になったかも。

あと、タイトルにもある「金都」がどんな場所なのか - おそらく、古く寂れたものも新しいものも雑多にてきとーに飾られて並べられていて - NYのチャイナタウンにもあった - そういう中で若者も老人もわーわー言いあったり喧嘩したりしながら過ごしていく、長屋のかんじ? それは失われつつあるなにか、なのか?

あとは、本土の言葉と香港の言葉の違いがわかったらもっと楽しめたのかも。英語なら土地による違い(なまりとか)は結構わかるようになってきたのだけどー。

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