12.19.2022

[film] Men (2022)

12月9日、金曜日の晩、Tohoシネマズ日本橋で見ました。
邦題は『MEN 同じ顔の男たち』。A24による英国の、とってもシンプルで英国なフォーク・ホラー。作・監督は”Ex Machina” (2014)のAlex Garland。音楽も”Ex Machina”と同じBen Salisbury + Geoff Barrow。

ロンドンのドックランズあたりのアパートに暮らすHarper (Jessie Buckley)は夫のJames (Paapa Essiedu)との口論(+ 被虐)の末に彼が飛び降り自殺するのを見て(窓の外を落ちていく彼と目があう)、あれこれ疲れ切ってしまったのでハートフォードシャーの村のカントリーハウスにひとりで滞在しようと車で訪れる。田舎の空気を吸ってしばらくは嫌だったことも忘れよう、っていっぱい落ちていたリンゴを齧る。

滞在する家屋の説明に来た管理人のGeoffrey (Rory Kinnear)はよく言えば親切で世話好きで悪く言えばおせっかいでうざくて、典型的な田舎のおじさんだけどまあしょうがないか、くらい。

滞在するところには満足した(インテリアとかすごくよいのでもっとちゃんと映して)ので付近を散歩でもしてみよう、って庭を抜けて廃れたトンネルを抜けて原っぱから古い家の写真を撮ったりしていると、緑の家をバックに禿げて全裸の中年男が突っ立っているのを見て、なんだこれは? にちょっとなる。

宿に戻って友人のRiley (Gayle Rankin)と話しているとさっきの裸男が頭から血を流した状態で外をうろついていて、郵便受けに手を入れてきたりしたので警察に通報して逮捕して貰ったり、教会があったので落ち着いてみようと、そこにいた神父と夫Jamesの自殺について話してみると、あなたの方にも悪いところはなかったですか? とか言うのでムカついてパブで飲んでいるとさっきの警官がいたので犯人のことを聞いてみると何もしていなかったので釈放した、とかいうのではああぁ? ってなるとか、とにかく会う男ぜんぶ何なんなのおまえ? の言動と動きに終始していて、しかもその顔はぜんぶGeoffreyの、Rory Kinnearの顔をしているように見える。

どういう顔かというと、ベースはにこやかだし暖かそうだし人あたりもよいのだが、眉とか口先をほんの数ミリ動かすだけで冷笑/侮蔑したような顔に、そこから更に数ミリで不機嫌で威圧的な顔相に簡単に着脱・トランスフォームしうる、日本人でも営業一筋の中 ~ 壮年パワハラ男が伝統の顔芸のように誇示してくる典型的なあれで、たぶんHarperにそう見えてしまうだけ、なのかもしれないがなにしろ”Ex Machina”を作った人なので、そういうロボを一式揃えて村外の人のおもてなしをしているのかもしれないし。

起点となるのは亡くなった夫Jamesのことで、彼女を殴っておいてそんなことをさせたのは彼女だっ、て呪いながらアパートの上から落ちて肘から手首ぐらいまでを柵でぐっさり股割きして死んでいた彼のイメージがあって、それ以来男なんてみんな自分を誇示して構ってもらいたがるあんなんばっかり現れる、ってその通りに終盤、改めてドアのところにぬめぬめ何度も何度も変態しながら産みだされる(生産的な)なめくじみたいな”Men”にしまいには呆れてあーあ、になる。実際にそれは笑っちゃうくらいなあれなのだが、果たしてあの対応でよかったのかどうか。 ほんとうは親友Rileyも呼び寄せて、Geoffrey の群れと“The Shining” (1980)のShelley DuvallとJack Nicholsonくらいの死闘をすべきだったのではないか、とか。でもそんなののために体力使うのムダなのよね、あほくさ – なんだけど執拗につきまとってくるあれらはいったい(怒)! って。

テーマ(敵)が空気とか制度に近いところにあって蚊みたいにいくらでも湧いてくる(しかもリラックスしたい田舎の方に行ったときに限ってそこにでる)奴らにどう対峙すべきか、というお話でコンパクトにまとまってて悪くないのだが、結局あーあ、しかないところがどうにももやもやしてしまう。

日本でも同様の - 過疎の山奥に一軒家を買ってリフォームして静かに暮らそうとした女性を村の男女がよってたかって – これはまじでぜんぜん笑えないかー。日本の俳優でGeoffreyの増殖顔をあてるとしたら誰になるのかしら?

この作品のように静かにスタイリッシュに笑えないどうしようもなさを追求するのもあるのだろうが、どうせなら思いっきりB〜C級の方に振って、サメ映画のようにいろんな”Men”を量産していくのもありなのではないか。続編は山で、オフィスで、宇宙で、スポーツイベントで、同じ顔のオトコたちが暴走して端から勝手に自滅していくやつを。

音楽はもうちょっと凶暴でもよかったかも。Mica Leviが”Under the Skin” (2014) でやったようなくらい。そういえば”Under the Skin”て、Scarlett Johanssonが”Men”を捕食していくお話だったねえ。

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