11月23日、勤労感謝の日にシネマヴェーラの特集『月丘夢路生誕100年記念 美しい人』で『青春篇』(1957)と『完結篇』(1958)を続けて見ました。
この特集では『月蝕』(1958)、『東京の人 前後篇』(1956)、これ、『夜の牙』 (1958)と見て、どれもおもしろくて「美しい人」しかない。『乳房よ永遠なれ』(1955)もこの作品群の間に置いて改めて見たかったなー。
斎藤豊吉の全国主要民放二十二局連続ラジオドラマが原作で、監督は西河克己。この特集で見た『東京の人』もそうだったけど、長尺で波乱万丈かき混ぜられメリーゴーランド式メロドラマの原型のようで、そういうののヒロインをやるときの月丘夢路の輝き具合ときたらとんでもない。
青春篇(1957)
伊豆の方をハイキングしていて足を痛めた由美子(月丘夢路)と出会った小峰(葉山良二)が東京に戻っても仲良くなって仲良くなりすぎてやばい交際をしていたら小峰に学徒出陣の招集がかかって駅のホームでのお別れの後、由美子は妊娠していることがわかり、小峰の子を産むのだが彼の戦死の報を聞いた叔母(小夜福子)はこの先大変になるから、と子供は亡くなったことにして裏で養子に出してしまう。
戦争が終わって、闇市の長屋で叔母とお汁粉屋をやりながら隣でおでん屋を営む源吉(大坂志郎)に助けられていると、叔母は地元のやくざの嫌がらせで痛めつけられて亡くなってしまう(亡くなる直前にあんたの子は実は生きている.. その子はいま… って(言わない)。そしてその子の素性は隠されたまま源吉のところに)。
由美子は旧友に請われてヘルプで通っていた日舞の稽古で小峰の戦友で家元の井崎(安井昌二)に惚れられて、でも彼には許嫁のあかね(浅丘ルリ子)がいて、それでも一緒に大舞台を踏んで恋仲になりそうになったところで実は生きていた小峰の名を聞き、まさかそんな、って死ぬ思いで彼の実家の塩釜にとんでいくと、彼と地元の市会議員の娘の結婚式が行われようとしていて、がーん、て。確かに衝撃だろうなー。
ここまでで、とにかくぜんぶのタイミングがぎりぎりのところ外れたり外されたり、これでもまだ序の口だから、って因果の泥沼が暗示されているのがたまんない。
あと、月丘夢路さまの舞いがとてつもなく美しいのでびっくりして、いちころで惚れる(のはわかった)。
完結篇(1958) - 「青春」が終わったらもう「完結」か、と。
井崎の許嫁のパパで洋画家の山根(小杉勇)が舞台での由美子の舞いが忘れられなくて彼女の消息を追ってみるとでっかいキャバレーの女給をやっているので、自分の絵のモデルとして彼女を自宅に招いて、そこからあかねの劇団の代役(また代役)で舞台出演の誘いが来て、劇の原作者で演出家の西島(水島道太郎)の劇団と九州公演に発って、そこで西島と近づいて彼の連れ子と遊んでいたら足を怪我して二度と踊れなくなってしまうのだが、それでもういいや、って西島と結婚することにする。
おでん屋から工場に転職していた源吉も怪我をして、彼の母親からいいかげんに所帯もてと言われて一緒になることにしたみつ子(稲垣美穂子)の実家に由美子の娘を預けることになるのだが、その娘が由美子の実の娘であること、青春篇の終わりで小峰があの後結婚しなかったことを知ると由美子に知らしめるべく九州に向かって…
ストーリー的にはどうなっちゃうのか? の嵐がぼうぼう吹き荒れて山場を迎えるその反対側で、だいたい同じような顔の男たちの間を玉突きのように行ったり来たり翻弄されるのに疲れちゃったでしょもう楽になっていいのよ、と見ているこちらも思うようになって、ああそれにしてもかわいそうな源吉 … って。
とにかく最後には雪の積もる塩釜で、ようやく本当の親子3人が会うことができて、ここまでの事情を娘にわかってもらうのは大変そうだな、って思いつつもああよかったよかったねえ、って涙を浮かべてしみじみするでしょ。でもこの先にあぜんぼーぜんの華厳の滝みたいのがあるんだよ。そして『永遠に答えず』の意味がはっきりするわけさ - なあ神さま、あんなの永遠に答えらんないわよね。
12.03.2022
[film] 永遠に答えず (1957-58)
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