というわけで2022年はもう終わろうとしていて、でも今年についてはウクライナで戦争が始まってしまったので、もうそれだけでなにやってもなに見ても、そもそもやるきなしでどうでもいいし仕事のほうだって、そのまままったくぜんぜんだめで - ずっとだめだけど - 言い訳だろうがなんだろうがなんでもいいさ、ってやけくその状態が続いている。 とにかく戦争はだめ。
映画館とか美術館とか本屋に行くのも、こういうのを書くのも完全に逃避で、それで構うもんか、くらい。
年が明けたらすこしはよくなったりするのだろうか? (しーん)
午後に積みあがった本のお片付けに着手して、約3時間で挫折する。 山を崩れない状態にするのと埋もれていた本たちを並べ替えるのは両立しないのよ。いっつも思い知ったあとですぐ忘れる。
今月に見たので書けていないのもいっぱいあったので、少しだけ下に並べておく。長めに書きたいのはまた別で。
年が変わったら2022年のベストに着手しなければー。
The Bee Gees: How Can You Mend a Broken Heart (2020) 12月8日 @ ヒューマントラストシネマ渋谷
The Bee Geesの評伝ドキュメンタリー。自分にとってのThe Bee Gees体験は、まず『小さな恋のメロディ』があったのでThe BeatlesやBowieよりもふるくて、子供の頃に初めて買ってもらったラジカセで最初にテープに録ったのも当時ヒットしていた”How Deep is Your Love”だったりするのだが、”Melody Fair”からどうしてああいうディスコの方に行ってしまったのかの謎が少し解けた気がしたのでよかった。あと、Andy Gibbのこととかも。
最後に出てくるBarry Gibbの2017年のGlastonburyのライブ、ただでさえ感動的なのだが、この映画を見た後だとものすごくしみてきた。
Thirteen Women (1932) 12月13日 @ アテネフランセ文化センターの「中原昌也への白紙委任状」より。
筋だけ聞くとB級のジャンクで適当なノリのやつに思えたのだが、ものすごくファウンデーションとスケールの整った文芸作品のように見える。あんまり怖くないのはそれでよいの? というのはあるけど、でもぜったいこちら側の世界と繋がる(ことを狙った)作品だなあ、って。
Rachel, Rachel (1968) 12月14日@ アテネフランセ文化センターの「中原昌也への白紙委任状」より。
Paul Newmanの初監督作、原作はMargaret Laurenceの小説 “A Jest of God”。Rachelを演じたJoanne Woodwardはゴールデングローブのドラマ部門で主演女優賞を、監督は監督賞を獲っている。
Paul Newmanがこれの次に撮った木こりのお話 - “Sometimes a Great Notion” (1971)も素敵なのだが、こちらもすばらしい。亡父の強い擦り込み影響の下、教師として働きつつずっと母親の面倒を見てきたRachelのほんの少しの、危なっかしい目覚め - それはよいことなのかわるいことなのか - たぶんだいじょうぶかも、くらいの軽さとそれが浮き彫りにする彼女の強さ、がよいの。
Harry & Son (1984) 12月22日@ 下高井戸シネマの「年末映画祭り!”ほぼ”アメリカ映画傑作選」より。
これもPaul Newmanの、最後から2番目の監督作。作家志望だけどぷらぷらサーフィンとかしているわかものHoward (Robby Benson)と解体屋だったが体の調子がよくなくて失業者となった父 (Paul Newman)、父子ふたりとご近所の彷徨いをそんなに深刻じゃなく描く。骨相占いをしながら大量のオウムを飼っているJoanne Woodwardとのやり合いとか、Paul Newmanが犬みたいにころんと死んでるとことか、素敵。80年代の映画の間に置いたら結構異質なかんじもするのだが、どうかしら?
あと、スター俳優が監督する映画として、Clint Eastwoodとの比較もあるのだろうが、わたしはClint映画のどの辺がすごいのかあんまりよくわかんないので、ここでのPaul Newmanの柔らかくてきとーに撮っている(ようにみえる)ところが好き。
Ethan Hawkeによるドキュメンタリー “The Last Movie Stars” (2022‑ )も見なきゃ。
Get Crazy (1983) 12月15日 @ 菊川のStranger
1983年の大晦日のYear Endライブを行う小屋(というかホール)でいろんな雑多な演者によるライブが進行していく裏で、小屋の乗っ取りを企む富豪とオーナー側がわけわかんないめちゃくちゃな争いを繰り広げていくの。音楽はブルースにレゲエにハードロックにパンクに西海岸のらりらりの雑多でいろんなのが流れていって演奏もギャグも煽りも極めて雑だし外しててもお構いなしで、だけどこんなもんでよいのだ、って堂々としている。
主題歌はSparksでMalcolm McDowell の役はRussell Maelがやるはずだったとか。Malcolm McDowellとDaniel Sternが絡んでいるだけで嬉しいのと、ぜんぶが終わって廃墟となったステージでひとりお呼びでなかった? みたいな顔で弾き語りをするLou Reedったら…
Tomorrow Morning (2022) 12月17日 @ 恵比寿の(ついガーデンシネマと書きたくなる)ユナイテッドシネマ。
30歳で幸せな結婚をして10年後の40歳でやむなしの離婚をしようとしている夫婦の結婚/離婚前日前夜の様子を歌と踊りで綴るミュージカル。そうなんでしょうね〜 としか言いようのない双方の言い分が巧みな歌と構成によって重ねられて、どちらの言い分とか語りも説得力は十分なので披露宴とかで(フルで)流すとよいのかも、とか。 これの10年後にもう一回振り返ってみるのも楽しいかも、とか。映画よりは舞台の方が切実に訴えてきそうな気はする。
でもやっぱりこういう夫婦の葛藤ものって、今日の昼にみたサッシャ・ギトリの『毒薬』(1951) とか『ローズ家の戦争』(1989) みたいなぐさぐさになるのがいいなー、とか。
あと、主人公夫婦の住んでいるところは『MEN 同じ顔の男たち』の夫婦が住んでいたエリアでもあるので、オルタナの展開を期待してしまうのは避けられずー。
空の大怪獣 ラドン (1956) 12月18日、Tohoシネマズ日本橋で。4Kリストア版。
わたしの一番古い映画の記憶は『怪獣総進撃』でラドンがビルを突き破るシーンなのだし、鳴き声(でいいの?)もゴジラよりラドンの方が先にあった記憶があるので、これは見ないわけにはいかなかった。
誰もが驚嘆しているように、画面はものすごく、かつて見たこともなかったような澄んだ明るさで、これが正しいのだ、と言われたら黙るしかないのだが、坑道の奥で蠢くヤゴがあんなにクリアに見えてしまってよいのか、とか。
あと、東京都現代美術館での井上泰幸展にあったセットが吹き飛ばされるシーンはたまらなかった。
それにしても、この映画のラドン(たち)って出てきただけで攻撃されて駆除されてしまうのほんとにかわいそうでならない。いまだったらぜったいやっちゃだめだからね。
The School for Good and Evil (2022) 12月18日 @ Netflix
Paul Feigなので見る。事情は知らんが善悪の戦いをずっと繰り広げていた双子の兄弟が造った善と悪で隣り合う学園にそれぞれあたしこっちじゃないんですけどー って送り込まれてしまった幼馴染ふたりの葛藤とやがて迫りくる戦いと。
(善悪の境界とか並びようとか)なるほどなー、って勉強になることも多いのだが、あともう少しだけ、善と悪について掘り下げてみたら、Forceのダークサイドとかハリポタのあれとかも絡めてみたら学園ものとしてもっと深く考えさせるおもしろいものになったのではないか。悪はなんでいっつも悪として循環して再生産されるのか、など。
Never Goin' Back (2018) 12月20日 @ Tohoシネマズ日比谷シャンテ
作・監督のAugustine FrizzellさんのだんなはDavid Loweryなので彼がExecutive Producerに入っている。中世糞尿趣味は共通している.. のかしら。
親友女子ふたりがダイナーでウェイトレスのバイトをして誕生日のリゾートビーチへのバカンスを夢見て計画していたら肉親とか隣人が日々の借金だのドラッグ関係のあれこれでやらしく絡んで邪魔してどうしようもなくなっていくものの、最後にとてつもない逆転技を繰り出して勝利する。最後の最後で「好き」な方に転んだ。
貸間あり (1959) 12月21日 @ 国立映画アーカイブ
原作は井伏鱒二、脚本は藤本義一と川島雄三、監督は川島雄三。
大阪の川の近くの少しの高台に、お人好しで博覧強記のフランキー堺とその他いろんな人々が同居している家に貸間を求めて淡島千景の陶芸家がやってきて、他の変人ばかりの同居人たちとの間に巻き起こるいろんな騒動にどたばた。ポジティヴなのもネガティヴなのも含め、もうなるようにしかならないじゃろ、みたいな危険域に突入して、そうなったところでぜんぜんクビが回らないかんじがやってくるのだが、へへーんうるせえ! って最後っ屁とか立ちションとか。(川島&フランキーの魔法) 現実はこうはいか.. (略)
La boum (1980) 12月23日 @ シネマカリテ
『ラ・ブーム』は高校卒業する直前の卒業旅行(というものだとは思わなかったが世間的にはそうなのか)に出ていく晩に銀座の東劇で封切りされたばかりのを見たのだった。内容はきれいさっぱり忘れていたのか見なかったことにしたかったのか。Sophie Marceauがかわいい、とかそういうの以前にこの映画に描かれていることすべてが異次元・異世界のなんかとしか思えないのだった。
いま見返してもそんなに印象は変わらなくて、日々恋愛があんなふうにまわっていくのであれば(以下略)。 彼女の部屋にAndy Gibbのポスターが、くらい。
自分のことだけど、旅の直前にテープに落としてWalkmanで再生したXTCの”Ball and Chain”が夜の銀座に見事にはまって、その光景だけは鮮やかに憶えている、ことなどを思い出したり。
Glass Onion: A Knives Out Mystery (2022) 12月23日 @ Netflix
イノベーターの富豪(Edward Norton) からのからくり箱で招待を受け取ったディスラプターの不良分子(ろくでなし)たちが彼の島に集まって「彼」の殺人の謎を解くはずが..
“Menu”のやなかんじとか、下ネタのない”Never Goin' Back”とか、いろいろ思い浮かぶなか、「探偵」とはとても呼べないようなDaniel Craigの態度とストーリーテリングは画期的ではないか。ハイバジェットのB級に正面から取り組んでいて、なんじゃこれ? になるのだが、これがグラス・オニオンだ! と。 そしてそれもまた、だからなに? ではある。ぼんくらの出し方とか、タランティーノ以降、と言ってよいのではないか。
それにしても、昨今のSNS周辺のうさんくさいのってぜんぶこういうかんじよね、って(腐臭)。
こだまは呼んでいる (1959) 12月25日 @ 国立映画アーカイブ
監督は本多猪四郎 。
山梨の麓から奥地に向かう定期バスの運転手/池部良と車掌/雪村いづみはずっとコンビでバスの仕事をしていて、仲良しというよりはツンケンした職場関係なのだが仕事はうまく淡々とこなしていて、でもふたりの近隣一帯には尋常でない結婚しなきゃ圧の嵐が吹き荒れていて、雪村いづみは地元の有力者で本屋を営む藤木悠 - 沢村貞子の親子のところに花嫁修行&トライアルに出されることになって.. というこてこての - でもわかりやすく筋が通ってちゃんとしたRom-comで、よかった。 本多猪四郎、『大怪獣バラン』(1958)の次でもさらりとこんなのを撮れてしまうのってすごい。
Cats' Apartment (2022) 12月25日 @ ユーロスペース
邦題は『猫たちのアパートメント』。猫が見れるのであればなんでも。
韓国でかつて最大規模だった団地が廃れて取り壊されることになって、そこで暮らして猫ママたちにたっぷり餌を貰って堂々歩き回っているノラさんたちを計画的に去勢/移住/移動させるプロジェクトが始まることになる、そのドキュメンタリー。
と言っても相手はほぼ半野生動物だし、そんなにかっちりとした計画を作ったところでうまくいくわけもなくて、結局はノラ猫いいなー、っていろんな猫の面構えとかにうっとりして終わってしまう(やるほうも見るほうも)。それでぜんぜんよい気がしたの。
12.31.2022
[log] 年のおわりに
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