4.05.2022

[film] Freakscene: The Story of Dinosaur Jr (2021)

3月29日、火曜日の晩、シネマート新宿で見ました。Dinosaur Jrのドキュメンタリー。
来年あたりで結成40年(ひぃ)になってしまうらしい、ほぼ恐竜になりつつあるバンドの「公認」ドキュメンタリー、であると。

冒頭に主題歌(?)の"Freak Scene" (1988)がフルでがーんと流れる。1秒もカットしてほしくなかったのでうれしい。そこから先はお手本のようなRockumentaryで、J Mascisを中心としたバンドの苦難と変遷について、それぞれの局面での関係者やミュージシャンのコメントを散りばめて、ああこのバンドのファンでいてよかったわ、と思える内容になっている。

わたしが聴きだしたのはごくふつうに”Bug” (1988)が出たころからで、そのすぐ後に出たシングルの"Just Like Heaven"でわーい、って喜んで、次の”The Wagon” (1990)で「ん?」になって、”Green Mind” (1991)でだいじょうぶかな?ってなって、初来日のクラブチッタでSGを延々振り回して酩酊するJを見て少しひいて、そのあとはなんとなくずるずる聴いていくかんじになって、オリジナルメンバーで戻ってきた2006年くらいのライブでやっぱりすごいや、ってなった。現役のトリオとしてはいまも最強だと思う。

音楽的に特にとんがったことをやってきたわけでもなく(してきたのかもだけど)ファンベースを大事にしてきたわけでもなく(してきたのかもだけど)、Jのかき鳴らすギターを浴びてそんなに強くない歌を聴いてなんとなくだらだら付きあってきた(そういう聴き方がふさわしい気がしていた)であろう大多数のファンには納得できるものだったかも。

Jがそんなに饒舌なひとではないのをうまくカバーして(語らせて)いるようで、でもやっぱり、もうちょっとLou Barlowにいろんなことを語らせてあげてもよかったのではないか、とか。

米国音楽の流れでいうと、映画のなかでも少し言及があったCMJでぼちぼち広がっていったガレージ~メタルも含めた轟音ギターの流れがメジャーなところでもアンダーなところでも交錯して、ギターの荒んでささくれた音とやや甘めにふやけるメロをかき混ぜるの(Don Fleming周辺)が出てきて、そういう流れのなかで彼らの音は現れて、この少し先にグランジが出てきた。この映画のなかでも “1991: The Year Punk Broke” (1992) などが少しだけ貼られていたけど、ほんとうは、個々のバンドというよりは、CMJ~グランジ~オルタナティブの流れをプロデューサー、エンジニアも含めて包括的に追ったドキュメンタリーが見たいなあ、とか。もう30年前の話で資料も枯れてきているし関係者も死んでいくし、なー。

こういうかんじでMeat Puppetsのドキュメンタリーを作ってほしい。
音楽ドキュメンタリーだと”Meet Me in the Bathroom”を早くみたい。あと、まだ作っている最中のようだけど”Rip It Up and Start Again”も。


Other, Like Me: The Oral History of COUM Transmissions and Throbbing Gristle (2020)

見たのは少し前だけど、これも音楽ドキュメンタリー。2月26日、MoMAのドキュメンタリー映画祭で見ました。BBC Fourでも放映されていたらしい。

タイトル通り、60年代末に立ちあがった英国のアート集団 - COUM Transmissionsの全容とそこから出てきたThrobbing Gristle (TG)の成り立ちから消滅まで。

TGについては70年代末から聴いてきたのでわかっているつもりだったが、前身のCOUMが学生運動(の挫折)やダダやシュールレアリズムやビートを起点としたアートとして狙っていたものを踏まえてみると少し違って聴こえてくるかもしれない。 のと、どちらかというと(自分が聴いたタイミングとしてほぼ同じだった)ポストパンクの流れのなかでTG を聴いていて、その文脈で彼らの音に対してかんじた違和のようなところが割とクリアになったかも。 (実際にはTGの結成は1976年なのでパンクと同時期くらいなの)

TGの音って、いま聴いてもいつ聴いても氷枕のように触覚とか痛覚を突いてきて生々しくて気持ちよいなー、っていうのを改めて思ったのと、Genesis P-Orridge - Cosey Fanni Tutti - Peter "Sleazy" Christopherson - Chris Carter の4人て、すごい4人だったのだなあ、っていうのがしみじみわかる。

ロンドンのICAでの展示 - “Prostitution”見たかったなー。ICAの建物の、あの空気とレイアウトにどんなふうにぶちまけられていたのか、想像しただけで震えがきそうな。

タイトルの”Other, Like Me” って素敵。

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