4.29.2022

[film] Tokyo Vice (2022) - episode 1

4月21日、木曜日の晩、丸の内ピカデリーで見ました。
たしか昔は有楽町マリオンとか呼ばれていたこの建物の上には「日本劇場」なんて名前の映画館もあったのよね、とか思い出して、でも映画館としてはまだここだけ残っていたようで、広さも画面も十分でっかい。上映されているのも予告もゴミみたいのばっかりでもったいないー。

WOWOWで全8エピソードが放映されるこのシリーズの最初のエピソード(58分)だけ特別上映されるということで、WOWOWに入る予定も希望もないし、こういうのを最後まで見れたこともないし、このエピソードだけはMichael Mannが監督しているというので。

ただMichael Mannはシリーズ全体を統括する製作者として関わっているらしく、彼のなかでは”Miami Vice” (2006) - 未見 - と同じような位置にあるのかも知れない。 2009年に出版されたJake Adelsteinのメモワール - “Tokyo Vice: An American Reporter on the Police Beat in Japan”を元に東京という都市のVice - 悪徳- をあぶり出す、のかしら。

冒頭、99年の東京、Jake Adelstein (Ansel Elgort)と片桐 (渡辺謙)がこれから向かうレストランでの会食について相手方との座る位置などの確認をしていて、この時点ではふたりがどういう関係でなにをやっている人達なのかもわからず、実際に着いてみると見透かされたように彼らの予約は個室に変更されており「… 」ってなって、明らかにその筋のやばそうなお兄さんからあのレポートを表に出すのはやめろ、って強めに言われて、ふたりが固まってしまったところで話は2年前に遡る。

Jakeは電話もないぼろい一軒飲み屋の2階に下宿して英会話教室で教えたりしながら日本語の読み書きを学んでいて(あとでミズーリから上智大学にきて日本文学を学んだって)、日本で最大発行部数を誇る明朝新聞 - 実際には読売だって - の事件記者になるべく入社試験の筆記で最後のページを書き忘れたり面接で屈辱的な質問 - ほんとにあんなの? - をされたりしつつも合格する。

同社で最初の外国人記者として上司の丸山 (菊地凛子)の下で編集長(豊原功補)に「おらガイジン!」て怒鳴られたり、最初の原稿記事で被害者を「殺された」と書いたらえらく怒られて - 警察の公式報告書をそのまま掲載とけばいいんだぼけ、って教育される - これだけで十分 Tokyo Viceだわ。あとはやや悪めの刑事宮本(伊藤英明)にくっついて外人ホステスをひっかけるやり方と引き換えに現場のあれこれを教えてもらったり、彼と行った歌舞伎町のクラブでSamantha (Rachel Keller)と出会ったり。

殺しの現場は昼間、眺めのよいビルの上かどこかで、刃物をぐっさり刺されて切腹した(させられた?)ような状態で座っているおじさんと、灯油をかぶって自分で火を点けて焼身したおじいさんと、どちらにもサラ金業者っぽいマークの会社が残されていて、Jakeその場所に訪ねていくとなにもなかったり。

まだ捜査の現場にいる片桐とJakeが交わる場面は描かれないのだが、渡辺謙が渋面で現場を嗅ぎ回るように歩いているだけで、”Heat” (1995)のAl Pacinoの狂犬が思い起こされ、とてつもない事件の予兆がやってくる/既にあるようでー。

“Heat”は全米公開直後に、NYのLincoln Centerの近くにできたばかりだったSONY Theatre(現在はLowes)の一番でっかいスクリーンで見て痺れたのだった。ただの街や屋内の景色がなんであんなに堂々とでっかく見えてしまうのかの謎があって、それは今作にもいっぱいある。90年代末の東京のどうってことないはずの「現場」や地下鉄やクラブの空気が「ノワール」としか言いようのない不穏さ隠微さとそれを際立たせる(のか?)境界と奥行きのスケール感で目の前になんだかでっかく - 西部劇のように現れてしまう驚異って。技術的にはいろいろあるのかもだけど。

これだけでも映画館のサイズで見れてよかったし、ほんとはAnsel Elgortの自分語りなんてどうでもよいから渡辺謙とヤクザの親分との狂犬対決に絞りこんで2時間でシャープに撮ってほしかったなあ、って。

それにしても、90年代終わり近くでまだポケベルと(PCじゃなくて)ワープロだったのかあの新聞社は、とか、日本はこの辺からだだ滑りして転げ落ちていったのがなんかわかるなー、とか。

 

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