5月30日、日曜日の昼、YouTubeで見ました。
フランスのTVシリーズ - “Tous les garçons et les filles de leur âge…” - “All the Boys and Girls of Their Time”用に作られたClaire Denisによる58分の中編。 このTVシリーズ、全部で9話あって、他の監督にはAndré Téchinéとか、Chantal Akermanとか、Olivier Assayasとか、Patricia Mazuyとか、Cédric Kahnとか、なかなかすごい。ぜんぶ見たい。制作にはTV会社の他にフランスのSONYが入って、自分の青春時代をテーマにしたものを、予算は約$100万、Super16mmでの撮影、などなど。
米国では1995年にMoMAで一度上映されて、2019年にBAMでのClaire Denisの回顧上映 - “Strange Desire”で再上映されて、英国では同じく2019年のBFIでの彼女の回顧上映 - “The Original Sin of Claire Denis”でも上映されたのだが、この時はー行けなかったのよね。 脚本には、Claire Denisともうひとり、Anne Wiazemskyの名前がある。撮影はAgnès Godard。
パリ近郊のアメリカ人駐屯基地 - “The Story of a Three-Day Pass” (1968)の主人公がいたとこ? - の近くに家族と暮らす15歳のMartine (Alice Houri)がいて、兄のAlain (Grégoire Colin)がいて、どちらも日々つまんなくてうだうだしていて、親友のMarlène (Jessica Tharaud)とお金持ちが自宅でやる夜通しのパーティに行こう、そこでバージンを捨てたい、とか言ってて、でもそこにはAlainも来るらしい。
金持ちでいっぱいのハイソなやつだから、と精一杯めかしこんで、でもお金も車もないのでヒッチハイクしてなんとかお屋敷にたどり着いて、恐る恐る中に入ると、音楽 - AnimalsとかYardbirdsとかSam CookeとかOtis Reddingとかのごりごりめのやつ、でも当時の最先端だったのだろう - ががんがんに流れていて、人はいそうだけどあちこちで固まっていてほぼ誰も相手にしてくれない。立ち尽くしているうちにMarlèneはタバコの火を貰いながらうまく誰かといなくなり、残されたMartineも同じ手でやってみようとしても引っかかるのはしょうもないのばかりなので、あーあ、って途方に暮れていると、奥でおなじ顔をしているAlainと目が合ってしまったり。
少し逸れるけどここの、パーティにどうやって溶けこんで、溶けこまないまでも居心地わるいかんじを表に出さないようにしていられるのか、って未だに自分にとっては苦手の難所で、いまのとこの最適解は、抜けられそうだったら一刻も早く抜ける、言い訳を思いつくのだったら可能な限り行かない、のこれだけ。でも子供の頃はこういうのは学校みたいに馴染まないとだめ、って思いこんでしまうので、きついかも。 家の暗がりと傍若無人に鳴り響く音楽と嫌な感じしかしない男たちの連なり、それらに直面したMartineの表情にある硬さと困惑はこの辺の事情をくっきりと、それこそ悪夢のようなだんだらで映しだす。
もうこりゃ無理だ、と外に出たMartineにAlainが付いてきて一緒に家に帰るか、ってなって、外に置かれた車の中にいた米兵のBrown (Vincent Gallo)に声をかけて、Alainは嫌がるのだが乗せていってもらうことにする。Brownとの片言英語での会話もぎこちないのだが、半分やけくそのMartineはこのアメリカ野郎くらいは自分でなんとかしないと、って執拗に上に乗っかろうとして、そのうちAlainはあきれて車を降りて..
セックスや肉体に対する妄想に近い思い込みがまっすぐに対象を射抜くのではなく緩やかなカーブを描いて自分のとこに戻ってきて、思いも寄らずに突然手元で暴発して、でも最後には”U.S. Go Home” って吹っ切ってしまうしなやかさと強さ。この辺はClaire Denisかも。通過儀礼的ななにか、と呼ぶにはあまりに生々しく、居心地悪くいまだに燻っているあれらの。
AlainとMartineの兄妹はこの後、“Nénette et Boni” (1996)のふたりに - 不仲模様もそのままに移行する(ついでにVincent Galloも)。ふたりの諍いはこの頃からあって、ひょっとしてNénetteの妊娠はこの映画のあれだったのでは.. とか。
自分の青春時代を、というテーマでこういう小品を作ってしまうClaire Denis、えらいなー。
外に出られるようになって最初の土日。土曜日は神保町に行って、日曜日は新宿で映画を見たりしたのだが、低気圧と人出でくらくらになって、戻ってきてばたんきゅーでしんだ。この時期の日本の湿気が殺人的であることを思い出した。しかもまだ梅雨入りしていないよね? これからこういうのが二ヶ月くらい続くんだよね(泣)...
6.06.2021
[film] U.S. Go Home (1994)
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