6.02.2021

[film] Her Man (1930)

5月29日、土曜日の昼、Samuel R. DelanyのCarte Blancheをやっている(あーん、ほぼ見逃してる)MoMAで見ました。2015年に失われていたネガが発見されてデジタル修復されて、2017年にBFIで上映された時、当時結構話題になったやつをようやく。 日本では公開されていない?

オープニング・クレジットの文字が浜辺の砂に書かれていて、それを波がさらってめくっていくお洒落。
アメリカの港に着いた船からAnnie (Marjorie Rambeau)が降りてくると警察が寄ってきて、逮捕されたくなかったら船に戻って元きたところに帰れ、って脅すので、彼女はしぶしぶ船に戻る。

戻った船では、Annieのくるりと翻る足元だけをカメラは追って、その足先がどこかの港に着くと彼女は船から降りて、すたすた歩いていく。この彼女を追っていくショットのえんえん続く長回しがびっくりで、いろんな声が彼女に声をかけてきて、それがスペイン語なので、ここはメキシコかキューバか(ハバナだった)、中華街を通り抜けて更に怪しげな界隈にやってくると、怪しげな酒場の扉をくぐる。 ここまでですごいため息。”Touch of Evil” (1958)のオープニング並みの驚嘆。

そこは怪しげな人たちばかりがたむろする酒場&売春宿で、ここで真ん中の女性はAnnieからFrankie (Helen Twelvetrees)に替わって、ひとりぱりっとしたスーツを着て笑わないやくざのJohnnie (Ricardo Cortez)に酒場ごと囲われてて、Frankieが客を引っ掛けてバーに合図すると、酒のグラスと水のグラスが運ばれてきて、カモの客を酔わせてぐでんぐでんにしてお金を抜く、やばくなったらJohnnieがナイフを投げてさようなら、を繰り返している。 Frankieはあーあ、って思いつつも他にどこにも行けないのでそういう暮らしをしてて、Annieはそんな彼女を酒場の隅で見ている。

ある日、肩出しルックの船員のDan (Phillips Holmes)がやってきて、彼の歌う姿にぽーっとなったFrankieは、いつものようにスリをやろうにもできなくて、Danは彼女のことが好きになって、僕と一緒にここから脱けだそう、って誘うのだが、当然Johnnieは黙っちゃいなくて…

というメインのストーリーとは別に、とても演技とは思えないようなめちゃくちゃぶっとんでらりらりした連中がうろうろしていて目が離せない。ぐでんぐでん状態でスロットマシンに絶対当たらない男と絶対に当たっちゃう男のコンビとか、帽子を被っている奴を見るとひたすらぶんなぐる奴とか、どいつもこいつも目が遠くを見ててとても演技しているとは思えない連中ばかりで、プレ・コードがやばい、検閲しないと、っていうのはこれを見れば即座にわかる気がする。酔っ払いばんざい。

で、最後はこいつらはぐれもの全員を巻き込んだ大乱闘 - より正確にはDan vs. Johnnie & 酔っ払いぜんぶ、で、そのスピードと腕のぶんまわしの凄さときたら”Come and Get It” (1936)の乱闘シーンを上回ってあんぐりしかない。 Frankieを自分のものにするため、っていうより、ぜったいただの喧嘩大好き、でぶちかましてるだろあんた、っていう怒涛の勢いなの。こんなの見たら大乱闘の大喧嘩したくなってもおかしくないかも(だからプレ・コードは)。

そうやって一応、最後はめでたしめでたし、になるのだがでもFrankieは本当にぜんぶ捨ててDanについていっちゃってよいのか、とか、そこに残るAnnieは..  とか、そういう余韻もあってよいの。今から約90年前のハバナにはこんな連中がいたんだなー、とか。


ほぼ1年2ヶ月ぶりにまる1日会社にいる(じゃない、仕事する)、をやった。こんなにも疲れるとは、こんなのを毎日毎日ずうっと続けていたとは。これじゃいろいろうんざりしちゃうわけだわ。

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