6月23日、水曜日の晩、BFI PlayerのSubscriptionで見ました。邦題は『雨にぬれた舗道』。
監督は、7月までBFIでレトロスペクティブ "Robert Altman: American Outsider" - あーあーみたいー - が進行中のRobert Altman、撮影はLaszlo Kovacs。原作はPeter Milesの同名小説 (1965)。
バンクーバーに一人で暮らすFrances Austen (Sandy Dennis)がいて、アパートの調度とか家にやってくる客の年齢や物腰とか母の頃から仕えているメイドがいることなどから日々の暮らしには困っていないようなのだが、ある日の夕方、帰宅途中に近所の公園のベンチに若者がひとり、うなだれて座っているのを見て、ディナーの接客中にも家の窓からもその若者が目に入る(というか、Francesが彼を気にして何度も見る) - ここの、遠くに滲んで煤けて見える若者 - Francesにはそう見える - のイメージがすばらしい。
やがて雨が強くなって、彼の姿を頭から振り切ろうとしても振り切れなくなったFrancesは、客を帰した後で傘をさして彼のところに寄っていってうちに来なさい、と彼を家に入れ、濡れネズミを拭いて脱がして風呂に入れて食事を与える。年齢不詳の若者 (Michael Burns)は無表情で言葉を喋ることができないようで、でもこちらの言っていることは聞こえてわかるらしい。彼女は若者を濡れてかわいそうだったから置いてやっているのだ、という顔と素振りをしつつ、はっきりと彼に何かを掻きたてられていて、こうして彼を暫く家に置いて面倒を見ているうちによりくっきりと愛着(愛なんてとんでもないわ)が湧いてきたようで、用事をしながら彼に向かって好き勝手なことを喋ったり遊びに引き入れたりするようになる。
でもこの若者は昼間になってFrancesがいなくなるとそこを抜け出して自分の実家に行ったり(当然ふつうに喋れる)、更に姉Nina (Susanne Benton)とその恋人にも会って今の状況を話すと、少しやくざな姉は面白がって弟の滞在している昼間に押しかけてきて、勝手に風呂に入って寛いで、やりたい放題をやったり。そういう姉の振る舞いに対する苛立ちと戸惑いから &彼の姉に対する近親相姦的な欲望も - 彼の方にもこの場所とFrancesにはほんのり愛着が湧いているらしいことがわかる。
やがてFrancesは病院の婦人科を訪ねて避妊具装着の手術をして、彼女のアパートを訪れた初老の男性からねちねちと求愛を受けて - このとき若者は別の部屋に閉じ込められている - でもやはり無理だわって男を退けて追い出した後、若者の部屋に入って彼を誘おうとしたら… この時の彼女の切り裂くような叫びで映画のトーンが鮮やかにひっくり返るの。
そしてFrancesは繁華街の怪しげなところに向かい、娼婦Sylvia (Luana Anders)を雇って若者の相手をさせようとするのだがー。
Francesのトラックと若者のトラックは最後まで交わることがない。若者が喋れないふりをしていたことは最後にはバレてしまうのだが、それとは関係なく、Francesの内面や過去は彼に晒されることはないし、逆もまた同様、そういう状態で「Francesの」愛の物語が着々と進められていく。やや特異な、母のいない孤独な世界で培われ、若者の登場によって膨れあがった女性の妄想や情念が暴走する作品で、後の”Images” (1972) や”3 Women” (1977)とトリロジーを成すとも言われているのだが、この3つ、ぜんぜん別の映画のような気もする。
共通するのは女性(たち)が主人公で、彼女たちはどれも病的にとり憑かれたり壊れたりしているようなのだが、でもそれってAltman映画の男性たちだってほぼ全員そんな腐ったようなのばかりだし。ポイントは彼女たちの奇妙だったり突飛だったりに見える行動が映画の文脈のなかでそれなりに説明できているかどうかで、その点は音や視点の使い方も含めて、ものすごく丁寧になされている気がする。だからよく言われるRobert Altmanの映画とミソジニー問題は、この作品に関してはあたっていないのではないかしら。
この映画のSandy Dennis、すばらしいよね。BFIの特集でもかかっている”Come Back to the Five and Dime, Jimmy Dean, Jimmy Dean” (1982)、改めて見たいなー。 スクリプトをIngrid Bergmanに送って却下されて、Vanessa RedgraveからSandy Dennisを紹介された、とIMDBにはあったけど。
7月から3ヶ月間だけでいい、オリンピックとスポーツを一切報道しないニュースチャンネルをやってくれたら少し高くても加入するよ。 Covid-19の感染が収束していません、というのとオリンピックの準備は着々と進んでいます(嬉々)、というのを並べてよくへーきなツラして報道できるよな。久々に吐き気がするようなのばっかし。
6.28.2021
[film] That Cold Day in the Park (1969)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。