6月3日、木曜日の晩、アメリカのMUBIで見ました。 あらなんでいきなりSacha Guitry? とか。
英語題は”Let's Make a Dream”、邦題は『夢を見ましょう』。“A Comedy for Three Characters”とでる。
原作はSacha Guitryによる戯曲で、映画と同様、彼自身の主演で舞台で演じられていたもの。
冒頭、民族衣装をきた6人の弦楽隊がぴろぺろぱらぺろれんれろれろれんぱらぱられんぱらりろられりろれらりん♪ みたいなのを絶妙の抑揚と節回しで演奏していて、これだけで楽しすぎて夢の入り口だわ、と思う。 ここからパーティでカードの卓や食事をつまんだりしながら男女の縁とか結婚とか年齢とかについてどうでもよいしょうもないことを喋り続けていて、そのうちダンスの時間になる。カメラが音楽と同じリズムで人から人に渡り続けて気持ちよいったらない。
続いて、The Lover (Sacha Guitry)の家に4:00に、と言われたので、3:45頃にThe Husband (Raimu)とThe Wife (Jacqueline Delubac)のふたりが現れて、時間通りに来たのになんでいないんだ? とかぐだぐだ文句を言って、でもThe Husbandの方は南米の客と会う用事があるから、ってややぎこちなく、The Wifeを置いて出ていってしまう。
ひとりになった彼女がどうしたものかと座っていると奥からThe Loverがいきなり現れて、隠れていたのね? ええだってあなたとお話したかったから、ってものすごいスピードと勢いで彼女を口説きにかかる。ふつうそんなふうに登場した男に一方的に喋りまくられたら引いてしまいそうなものだが、The Loverの怒涛のおしゃべり - セールスの勧誘みたいにも見える - に彼女は笑顔で返すようになって、びっくりしたことに彼女に”I Love You”と言わせてしまう。 ここまでで二人になってから5分くらいしか経っていない。で、彼らは夜9時にもう一度会うことにしてキスするの。 なんだこの勢いは、夢か、って。
で、冒頭の楽隊の音楽が響くなか、ガウンを羽織って、部屋に香水を撒いて召使いに帰ってよろしい、って言って、彼女がこの部屋にやってくるまでの時間経過とタクシーでの行程とタクシーを降りて階段を昇ってきてベルを鳴らすまでをべらべら想像上の実況をして、来た! と思ったら郵便屋でがっかりで、でもめげずにこちら側に向かってひとり延々喋り続ける。でも彼女が現れないので、そうなった場合に起こりうることとか言い訳とかもあれこれ喋って、電話までかけて交換手相手にやりあってなんとかThe Wifeと話し始め - というかやはり一方的にべらべらべら、こりゃどう見たってビョーキの挙動だな、と思っていると彼女は向こう側で受話器を捨てちゃってて、あーあ、と思っているとThe Loverの家のドアが開いて受話器に喋り続ける彼に彼女はそうっと寄ってキスをする。
ここまで - The LoverがThe Wifeを落っことすところまでと、The WifeがThe Loverのところに現れるまでの(ほぼ)一人芝居が「夢」の醍醐味で、ひとりスクリューボールコメディとしか言いようのない怒涛の勢いがすごくて、この後、ふたりが翌朝8;00に目覚めてThe Husbandも含めた現実をどうするか、結婚するしかないよ - “Let’s Dream!” というThe Loverと、じゃああたしの結婚はなんだったの? とThe Wifeが聞くと、オリジナルじゃなかった、夫を替えるだけのことさ、ってふたりの結婚生活をシミュレーションしようとしたら、The Husbandがドアを叩いてくる。 The Loverはピストルを手にして..
ひとつの部屋で、午後と晩と翌朝の3場面で見事に展開される夢のすばらしいこと。「夢を見せてやる」じゃなくて「夢を見ましょう」になっているところが素敵な85年前の魔法。ちっとも古くない。 舞台で見たらすごかっただろうなー。
関係ないけど、Sacha Guitryがこのテンションで、お芝居 - ”The Judas Kiss”のOscar Wildeを演じるのを見たい。
会社の帰りにはじめてGINZA SIXっていうとこに寄った。なーんて下品でつまんない施設でしょう、て思った。
あそこの本屋を見たかったのだが、やっぱりわたしはあの本屋、だめだわ。代官山のもそうだけど。
ぜんぜん掘っていく気になれない。だいたいさー、めくることも開くこともできない本を「ヴィンテージ」とかラベル貼って偉そうに並べて、本の世界をばかにしてるわ。読まれる前の本なんてただの紙束だよ。古本、でいいじゃんか。
6.08.2021
[film] Faisons un rêve (1936)
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