2日、日曜日の晩、BFI Playerで見ました。ずっと見なきゃと思っていたやつをようやく。BFIのカテゴリでは”Female Desire on Screen”っていうところに仕分けられている。
The Wachowskis - これを撮ったときは”Wachowski Brothers” - の監督デビュー作で、この後に”The Matrix” (1999) - この時もまだ”Brothers” - が続いていく。 “Woman Make Film”でも女性監督の作品として紹介されていた。 異議なし。
Corky (Gina Gershon)は刑務所を出たあと、アパートの壁塗りとか水道配管工とかをやっていて、ある日仕事に入った空き部屋の隣に暮らすマフィアのCaesar (Joe Pantoliano)とその情婦のViolet (Jennifer Tilly) - 説明なしでわかる - と出会い、VioletはCorkyにアプローチしてきてふたりはセックスをして親密になる。 VioletはCaesarがマフィアの金の洗濯屋をしていて、彼らの部屋で拷問して殺した男から出てきた200万$がある、と。 その金を部屋の外に持ちだしてしまえば、その金を後で取りに来るJohnnie (Christopher Meloni)とCaesarは仲悪いので、そこでなんとかなっちゃうかも、と。
Caesarがシャワーを浴びている間にお金をブリーフケースから抜いて替わりに新聞紙詰めて、隣のCorkyの部屋に持ち込むところまではうまくいったものの、お金が消えていることに気づいたCaesarが狂ったようになって、ボスは自分がやったと思うに違いないし、それをして喜ぶのはJohnnieだからこれはJohnnieの仕業である、ってVioletに出ていくことを禁じて、そのうち部屋に関係者が揃って..
しまいには当然、CorkyとVioletが縛りあげられて、彼女たちの運命やいかに? になる。全体としてはB級パルプフィクションぽいものの、そこに至るまでの筋運びの細かいとこが面白いのと、マフィアの悪賢い狂犬と、彼に長年囲われてうんざりしている情婦と、自由を謳歌している流れ者(女)の三者の睨み合いが、真ん中のふたりが女性であることで心理描写も含めて鮮やかに変転している。 Corkyが男性だった場合は、Violetを救うためにCaesarを殺すか自分が死ぬかの正調ノワールになるのだろうが、恋仲にある彼女たちは必死になってふたりして生き延びよう、長年の恨みを晴らすべくこの犬をなんとかしたれ、になるの。
というような話がほぼCaesarのアパートの彼の部屋とその隣、のみで展開する。これって、”The Matrix”の前夜、というかやがて”The Matrix”で全開となるThe Wachowskisの変態ぽい嗜好が既にいくつか。 物理的に隔てられた近くて遠いふたつの部屋と、それをパイプ管や電話線を介して懸命に渡って行き来して、死ぬやつは即座に視界から消えていって、それでも最後にやってくる「肉」の問題とか。
最近、”The Matrix”三部作がトランスジェンダーのアレゴリーだったことをLilly Wachowskiが認めたという記事を読んだが、それはこの作品をレズビアンの物語として描いた(スタジオから男女の話にできないか、という要請はあったらしい)時点から彼女たちのなかでは復讐に近いかたちで周到に計画されていたものだったのではないか。
現金強奪と復讐の話、でいうと生々しいタランティーノのよりも、ファンタジーだ、って言われてしまうかもだけどこっちのが軽くて好きだと思った。(タランティーノのって、ちょっと苦手)
あと、主演のふたりのすばらしさは既にじゅうぶん語られている通り。これを現代の女優でリメイクするとしたら誰がよいか、はいろいろ遊べるかも。うーん、Sofia BoutellaとFlorence Pughとか(例えば)。
今日はついにやっと、美術館 - Tate Britainに行った。ビアズリー展。ワイルドの『サロメ』の挿絵 - 検閲でボツになったバージョンも含めてぜんぶ、がたまんなかった。 常設展示も見れるのだが、One-Way遵守なので、行ったり戻ったりができないのはつまんない、というか戻ったりするよねふつう?
8.09.2020
[film] Bound (1996)
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