7月28日、火曜日の晩、BFI Playerで見ました。昨年のSXSWの映画部門でGrand Jury Prizeを受賞しているフランス映画。
パリのアパートに暮らす主婦のAlice (Emilie Piponnier)は、大学に勤める(文学をやっているぽい)夫のFrançois (Martin Swabey)と、息子のJulesと幸せな家庭生活を送っている。と思っていたのだが、ある日買い物で突然デビットカードが使えなくなり、ATMに行ってもお金をおろすことができなくなっているので銀行の窓口にいったら残高ゼロで家のローンも支払えない状態になっていて、このままでは全て差し押さえです、と言われて愕然。狂ったようにFrançoisに電話しても出なくて、家にも帰ってこない。自分の親に泣きついても旦那をかばうようなことを言うのでまったくお話にならない。何か手掛かりを掴むべく夫が残していたメモとかにあった電話番号にかけてみると高級エスコート・サービスに繋がる。 え?って動転して、お宅って一回いくらなんでしょう? って聞いてみても電話ではお答えできません、知りたければこちらにお越しください、と言われる。
藁をも掴む思いでエスコート・サービスのところに行ってみたら仕事の面接に来たのと間違えられて都合とか報酬の話をされて、いやいや違うし、と思っていたのだがちょっと待てこれひょっとしたら金づる? って。くらくらしながら高級(かつ高給)なの希望、って電話番号置いていったら電話が来て行けるか? という。 とにかくまずはお金が必要だから行く、と返して、面接のとこで出会ったLisa (Chloé Boreham)に作法とか手順とかを教わって、ホテルに行ってみたら相手もやさしそうな人で、でもお金を一杯くれるのでこれってひょっとしたら … と。
こうしてがんばっていくとお金は思っていたより順調に貯まって返していけそうなのだが、困ったのがJulesの世話で、予約の電話は不定期で直前に来たりするのでベビーシッターが捕まらないこともあり、困っているところにべそかいて平謝りのFrançoisが現れる。ぜったい許せるわけないのだがこいつはJulesに会いたくて戻ってきたらしいので、彼に相手をさせておけばいいか、って自分は時間不定期なアメリカのビジネスウーマンのアシスタントのバイトをしていて頻繁に呼ばれる、とか言って仕事に出ていく。
そのうちその挙動をおかしいと思ったFrançoisが彼女のやっていることを突きとめて頼むからそんな仕事やめてくれ(どの口がいう)って、更にどうしても復縁できないならとJulesの親権を求めて訴訟を準備していることがわかって…
どこまでもさいてーでどうしようもない夫のせいでセックス・ワークに従事せざるを得なくなったAliceの奮闘をLisaとの友情を絡めて描いていく女性映画。LisaがAliceにいう、愛しあうふたりのセックスは最高のものになるし、レイプされた時のそれは最低のものになるけど、この仕事でのセックスは我々のやりようでコントロールすることができて、それでお金が入るんだからそういうものとしてやっとけばいい、っていうあたりはなるほどなー、って。 この辺、"Hustlers" (2019)にあったのと同様の清々しさすら感じさせるシスターフッドの物語になっている。
最初からそんな高給貰えるのかとか、そんないい客ばかりのはずない、とか言うひとは言うのだろうけど、そういうひとは "Pretty Woman" (1990)を見たって文句をいうのだろう。
セックス・ワークについて、こういう描き方をすることで結果的にその世界(のありよう)を肯定していることにならないか、という意見には、男のちんぽを全部刈り取ればなくせるのかもしれない(それでいいと思ってる)けど、それが無理ならまずはその仕事に対する差別や偏見をなくして安全かつ正当なそれとして社会から変に隠さずに認知しろ、まずは認知の歪みからくる搾取の構造をなくせ、とかおもう。
といったようなことを訴える映画ではなくて、Lisaと出会ってダメ夫を捨てることで自由になって飛んでいくAliceのお話なの。ひょっとしたら能天気すぎるくらいに軽くて、とてもSXSWらしいというかー。
そういえば、Aliceがふたつめのサービスの面接に行った時、斡旋するおばちゃんがあなた外国語はできる ? って聞くの。「日本語とか。日本語はだいじよ~!」って。日本人すごいな。
8.04.2020
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