こないだ見たFlannery O'Connorのドキュメンタリー映画 – “Flannery” (2020)でも(原作が彼女の同名小説(1952) なので)この作品の一部が挿入されていて見たいな、と思ったらCriterion Channelにあった。日本ではアテネとかでかかったりしているようだが、未公開なのね。
監督はJohn Huston - 主人公の祖父の伝道師役で出演もしている。109分。
22歳の第二次大戦の元軍人 - Hazel Motes (Brad Dourif)が南部の町に現れて”the Church of Truth Without Christ”の信徒として説教を始める。既存のキリスト教の教えを確信的に否定してとっても熱くて、彼の周りには盲目の説教師Asa (Harry Dean Stanton)とその孫娘Lily (Amy Wright)とか、人恋しくてたまらない田舎から出てきた青年Enoch (Dan Shor)とか、彼をスター宣教師に祀り上げようとするHoover (Ned Beatty) とか、彼に貸間を提供して近寄っていく中年女性とか、いろんな変な人たちが寄ってきたりぶつかってきては消えていく。
伝道師としての布教活動の受難や成功を描くのでもなく、彼の説く教義の正当性についてえんえん問うのでもなく、信者や異教徒との闘いとその勝ち負けの行方を描くのでもなく、とにかくドラマとしてどこかに転がっていってよかったね、にも、最悪だ、にもならなくて、彼はどこからかそこにやってきて腰を据えて睨みつけて、やがて彼も。
彼は戦争で地獄を見てそこで神的経験をしたのかもしれないし、幼い頃祖父の説教に決定的な影響を受けたのかもしれないが、そこにも立ち入らない。ただ彼は今のこの半径20mくらいの世界については深く絶望してて彼の教えが絶対に正しくて必要だと思い込んでいて、自分の話を聞けという。でも教団を組織設営して信者を増やしてみんなで幸せになろう!みたいな方角には興味ないみたい。何をやっても唱えても祈ってもおまえらなんか絶対に幸せになんかなれるもんか - まわりを見ろ! ってがーがーいうのが彼の”Truth Without Christ”で、それって宗教ていうより反宗教だろ、くらいのところまで行くのだが、彼は彼の絶望と不信と諦念を背負いこんでそれを練って積んでその上に強く立っているので揺るがないし、他との衝突や無理解なんて当然だし恐れないし、その帰結として自分で目だって潰すし地肌に鉄条網を巻くし靴底に石を敷いて歩いたって痛くないし。
これって単に変な人たちが束になってじたばたしているだけじゃないの、なのかも知れないけど、これこそがキリスト教の原罪や救済の教えがアメリカの南部の風土とスパークして生んでしまった奇妙な景色であり人模様なのだ。 というのが敬虔なキリスト者としてあの地で生まれ育ったFlannery O'Connorが見いだした何かだったのだと思う。 ラストのHazelと大家の「やりとり」の捩れて奇怪なこと、誰があんなとこまで行くと予想しただろうか。彼は結局救われたのかしら? あれでよかったのかしら? というのはFlannery O'Connorを読んでもいつも思うこと。
出てくる人たちはぽつぽつ現れては彼方に消えていって、コメディにもホラーにも寄っていかないその非情な隙間風が素敵なのだが、例えばこれをRobert Altmanが演出したらどうなったか、もう少しおかしみのあるアンサンブルになった気がするし、例えばPaul Thomas Andersonだったら.. (彼の”Magnolia” (1999)ってちょっと近くない?)などなど、転がしていくのも楽しい。
他に近そうなとこにある映画として思いだしたのは、Maurice Pialatの”Sous le soleil de Satan” (1987) - 『悪魔の陽の下に』(原作: Georges Bernanos)とか、Frank Capraの”The Miracle Woman”(1931)とか。まだありそう。
あと、Alex Northの音楽がすばらしい。
ところで、Ministryの名曲 - ”Jesus Built My Hotrod" (1991)のRedline/Whiteline Versionのイントロには映画の中でHazelが喋っている声がサンプリングされている(聴いてみた。確かに)。この辺、Gibby Haynesさんのセンスかしら?
今日、8月5日はJohn Hustonの誕生日だって。
今日は久々に会社に行って、5ヶ月ぶりくらいにPretのサンドイッチを食べた。 変わらぬPretだった…
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