8.14.2020

[film] An American Pickle (2020)

 8日、土曜日の午後、Curzon Victoriaで見ました。”Summerland”を見終わって、そのまま隣の部屋でやっていたやつに(ちゃんとチケットは買ってる)。こちらも客は全部で5人くらい。

米国ではHBO MAXでの放映らしいがこちらでは細々と劇場で掛かっている。わたしはSeth Rogenが大好きなので見る。それにしても、”Sausage Party” (2016) – “Bananas Town” (2017)  短編 – ときて今回はPickle..   別にいいけど。 でも今度のはそんなお下劣なやつではないの。

原作はSimon Richの2013年の短編 – “Sell Out”で、脚本も彼が書いている。

東欧のユダヤ人コミュニティ(Shtetl)に暮らすHerschel Greenbaum (Seth Rogen)は妻のSarah (Sarah Snook)と出会って結婚して夢を語り合っているのだが、重なるロシアのコザックの野蛮な襲撃に耐えられなくなってアメリカに移住する。こうして1919年、NYのピクルス工場で働いていたHerschelだったが、ある日ピクルスの桶に落っこちてぱたんと蓋閉じられてタイミング悪くそのまま工場が閉鎖になって100年経って2019年、廃工場に忍びこんで遊んでいた子供達がHerschelを見つけて騒ぎになる。

なんで100年もそのままで平気だったのか? は酢漬けだったから… 程度の説明しかなくて、見つかった彼の唯一の身内は曾孫のBen Greenbaum (Seth Rogen 二役 – こちらは髭を剃っている)しかいなかったので、BenはHerschelを連れて帰ってBrooklynの彼のアパートで暮らすことになる。

Herschelの妻のSarahは当然お墓に入っていて、その先のBenの両親までも交通事故で亡くなっているので親族はふたりきり。フリーランスでモバイルアプリの開発をして一発当てようとしているBenは独り身で友人もそんなにいないようで、でもHerschelは何見ても触ってもびっくりして大騒ぎしてやかましくて、Benの仕事の邪魔もしてくるのでもう出ていけ!ってBenはHerschelを追いだしてしまう。

ホームレスになったHerschelは自分にできることを考えて、スーパー(”Whole Green”だって)で期限切れで棄てられていた胡瓜と塩を、同様に拾い集めた空き瓶にそれらを詰めて、雨が降ってきたら雨水をその瓶たちに貯めて、そうやってできたピクルス(そうやってできちゃうの?)を街角で売り始める。それがSNSで評判になるのだが、Benにはそれがおもしろくなくて、市の清掃局に通報して潰してやって、それならばと知恵を貰ったHerschel側はインターンとボランティアをうまく使ってマーケティングまでしっかりやって復活して、そしたら今度はHerschelのガチの戦前の価値観が炎上して追いまわされて..

100年前からやってきた男の浦島太郎みたいな騒動を描くのではなくて、彼の”Neighbors” (2014)のシリーズにもあったような敵味方に分かれた容赦ない潰し合いがふたりのSeth Rogenの間で勃発する。と書いていくとおもしろそうなのだが、Herschelが迫害を逃れて米国に来た移民であること、時代認識とかに100年間のギャップがある – 彼はナチスのユダヤ人迫害も知らない - こと、Herschelのユダヤ人としてのアイデンティティや家族意識、身内がBenしかいないこと、そのBenも両親を失って孤独であること、などを考えるとそんなには笑えなくて、笑えればいいってもんではないのでそれは嬉しい驚きだったりするのだが、これは移民問題に限らず現代のソーシャルの至るところで起こっている軋轢や排除排斥と無関係なそれではなくて、それが曽祖父と曾孫の間で、ピクルス製造とアプリ開発の間で起こってしまう荒唐無稽なこと(でもギャップは割とこういうところにこんなふうに)ときたら。

最後にはもちろん和解がくるのだが、そこに至るまでのツイストのおもしろいこと、そしてタイトルが「アメリカのピクルス」であること、などなど。

日本だったら漬物樽とか醤油樽とか味噌樽とかいくらでもあるし、侍が現代に現れるようなドラマもいっぱいあるけど、やるならここまでやってほしい。 でも実際にぶつかってみたら家族観もジェンダー観もぜんぜんギャップなかったり(っていうホラー)。

ピクルスのことにはあまり触れてくれなかったのだが、やっぱりピクルス食べたくなる。”Maggie's Plan” (2015) にも出てきたBrooklynのピクルス。と思ったらここ(Brooklyn Brine)の、なくなっちゃったみたい?  UKにもピクルスはある。けどUSのとはちがう。ベーコンもそうなの。


雑誌ふたつ。 Covid-19が始まってから紙の配布を停止していたTime Outが先月73歳で亡くなった創業者Tony Elliottに捧げる号を久々に紙で。 Joe BoydやMichael Palinのコメントが興味深い。
もういっこは、Jarvis CockerがゲストエディターのThe Big Issue。16歳のときにノートに書いていたPulp起動計画のこととかいろいろ。

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