オランダのロッテルダムにいます。ニシン食べたいよう。
書けていないのがいっぱいあるので少し遡って駆け足で。
4月の7〜9日までBFI & Radio Times Television FestivalていうのがBFI Southbankぜんぶを使って開かれていた。 英国のTV番組とかドラマを中心にしたお祭りでいろんなゲストが来て楽しそうなのだがTV事情はぜんぜんわからなくて、それでもふたつだけ参加した。
The Author of Beltraffio (1974)
8日の午前、BFIのアーカイブから発掘されたというTony ScottがフランスのTVシリーズの一部として監督し放映されたHenry James原作の短編。このHenry James作品ばかりをドラマ化したシリーズ、全7エピソードあって、他の監督はClaude Chabrol - 2篇撮ってる - とかVolker Schlöndorffとか、1エピソードの脚本にはMarguerite Durasの名前もある。ぜんぶみたい。
上映前に兄Ridley Scottさんのビデオメッセージが流れて、Webで流れていたのよか少し長いバージョンで、弟にとってこの作品を作ったことは大きな一歩になって、この後暫くしてScott Freeの前身となるプロダクションをふたりで立ち上げて… 云々、とても愛の篭った言葉だった。
映画は、というかドラマは、TV用なので50分強しかないのだが、原作(未読)は1884年の短編”The Author of Beltraffio”で、英国のサレーの田舎の尊敬する作家 Mark Ambient (Tom Baker)の邸宅を訪ねたアメリカ人の若い作家が、憧れでぼうっとしつつも異様に夫のことを毛嫌いしている妻 Beatrice(Georgina Hale)と美しく病弱な息子を見て複雑な思いに捕らわれるのだが息子はやがて死んでしまって... というやつで、英国の古いおうちの佇まいの光と影とか、とても丁寧に撮られて作られていることはわかるのだが、これを作ったひとが後のTony Scottになるとは思えなくて(よい意味でね)、あえていうと息子の一瞬のこちらに訴えかけるような視線をサスペンスフルに、しかししっかり受けとめるところが少しだけ"Man on Fire" (2004) を思わせたりした。かも。
上映後に妻を演じたGeorgina Haleさんのトークがあって、彼女も放映されたのを見て以来の再見だと言って、客席からマニアックな質問もあれこれ飛んだのだが昔のこと過ぎて余り憶えていなくてごめんなさい、ていうのと、Ken Russell関連の、これもマニアックな質問ばかりが飛んでいてなんかかわいそうだった。
どうでもいいトリビアをいうと、ドラマのなかで死んでしまう美しい子供を演じた男の子ってLed Zeppelinの"Houses of the Holy"のジャケットに写っている子供(兄妹ででてる)なんだって。 そのへんも英国どまんなかだねえ。
Dame Maggie Smith in Conversation
同じ8日の午後、同じBFIのイベントでチケット取ったもうひとつがこれ。 チケットは発売直後に売切れてしまったのだがその後にじっくり粘って執念でとった。このおばあさんを嫌いになれるひとなんているだろうか? (いないよね)
司会の人との一対一のトークで、彼女がTVでシェイクスピア作品(「空騒ぎ」のベアトリーチェとか)のドラマ化に出ていた頃(もっとも古いやつで50年代頃)からのクリップを流しながら当時のこととか演技にかける思いとか、いろんなことを聞いて話していく。
昔のクリップを見る本人の反応は、あーやだやだやあねえ、というチャーミングな返しばっかりなのだが、きれいだよねえ。(いえ、今も)
他に言ってたのは、「ダウントン・アビー」はあんなに続くとは思ってなくてぜんぶちゃんと見てない、もう長過ぎて見れなくなっちゃった、とか。 自分が出た作品の中でベストは? という質問では"The Lonely Passion of Judith Hearne" (1987)と即座に答えて、ここでのJack Claytonの演出は冴えまくっていたわ、と。見たいなあ。
あと、『ミス・ブロディの青春』はもちろん大好きな本だって。
Maggie Smithさんのなにがすばらしいかというと、どんなにひどい状況にあっても常に毅然とした態度を断固とり続けることで周囲の風景を喜劇的なそれに転換してしまう魔法を持っている、ということで、それこそが極めて英国的な俳優(われわれが英国の俳優に期待するなにか)なんだなあ、て改めておもったのだった。
4.19.2017
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