3.14.2016

[art] Munch and Expressionism 

時系列で書いていくと、4日の金曜日の夕方に地下鉄に飛び乗って86thのNeue Galerieに行ったら金曜晩のFree Viewingのとてつもない行列に驚愕し、Freeじゃなくていい、お金払うから中にいれて、て懇願したけど冷たくされて、しょうがないので泣きながらMetropolitanに走っていって、まずはこれ見ました。

Vigée Le Brun: Woman Artist in Revolutionary France

肖像画家 - Elisabeth Louise Vigée Le Brun (1755-1842)の展示で、ルイ王朝の人々とかマリーの家族とか王室お抱えでいっぱい描いていて、ふつうこういう肖像画って美術館を流しているときはあまり立ち止まることもないのだが、立ち止まって纏めて見てみるとなかなか興味深い。

似たような角度で同じように照明が当たっている同じようなつるつる貴族顔の人たち(女性が圧倒的に多い。 男性は1/6だって)なのだが、髪型もドレスの色味や意匠もこまこまぜんぶ違うし、ヌードの背中の肉の造型も男性画家が描くそれとはどことなく違って、その辺は言ったら怒られてしまうかもしれないけど、女性画家、てことなのだろうか。

全体にプレーンでキッチュで、ポップで、香ばしいお花畑を歩いているかんじ満載で、でもそんな絵のなかの人々はこのあとみんなギロチンに行っちゃったんだなあ、って。 (でも描いたひとは革命直前に国外に出ていて無事で、86まで長生きした)

MET、ご存知のようにロゴが新しくなって、みんな言っているけどやっぱしなんかバランス悪いよね。
て、外壁に下がっている幟を見ながら歩いていたら階段から落ちて足を思いっきり挫いてとっても泣きたくなった。


Munch and Expressionism 
で、翌5日の土曜日の午前中、リベンジで改めてNeue Galerieに行った。
ここの開始は11:00で、でも前日の長蛇列の恐怖が頭をよぎったので朝のパンケーキ食べてからやや前のめりで10:30に行ってみたら、2~3人がいる程度だった。

前回の展示、”Berlin Metropolis: 1918-1933”もすばらしくよくて、ここんとこ絶好調のNeue Galerie、なにがえらいって、これだけの特集展示をそんなに広いと思えない3階のワンフロアだけできっちり完結させてしまうことだ。(2階にはあの映画で世界的に有名になってしまったAdele Bloch-Bauerさんが神々しく輝いていらっしゃる)

ムンクは、2006年の2月~3月にMOMAでなかなか重厚な展示 - ”The Modern Life of the Soul”があって、それから「装飾性」に着目した2007年~8年の国立西洋美術館のもあった(これはあんまし)。

今回のは「ムンクと表現主義」  ← そのまんまじゃん、とか言わないこと。
より正確にはドイツ表現主義のDie Brücke - ドレスデンのグループとの関わりにフォーカスしている(主に)。 (Neue Galerie,「青騎士」の方は既に特集しているし)

一緒に並べられているのはErnst Ludwig Kirchner、Max Beckmann、Emil Noldeとか、オーストリアだけどEgon Schiele、Oskar Kokoschkaとか。 あくまで参照、のようなかたちで並べられている程度なのだが、同時代性のようなものを感じないわけにはいかない - 前回の”Berlin Metropolis”の展示と同様の切り口でその時代の空気感を重層的に伝えている、ここがまず素敵。

では、これら表現主義の絵画で言われがちな存在の不安とか恐怖とか彷徨いとか孤絶とかの嵐とか闇とかでどんよりしてしまうかというと、そんなでもないの。ムンクについては乗り越えるとか力強いとかそういうのとは別に、常になにかが流れたり動いているかんじがあって、「絶望」といってもそこに向かって堕ちていく、というよりはその周辺での動きとか兆し、のようなゆるやかなものが描かれていて、なんとかなるかも感があるの。 Edward Hopperにもあるなにか、のような。
“The Kiss”とか”Vampire”とかのふたつの塊がひとつになった絵とか、”Morning”を見るといっつも思う。

今回の展示のなかでは”Model by the Wicker Chair” (1919-1921) がやっぱりすごい。
色彩がばらけて構図としても散らかっているのにこのまんなか辺りでゆるりと渦を巻いている力(のようなもの)はなんなのか、なんでそこに籐椅子があるんだ? とか。
あとはKirchnerの、あそこにあんな色を置いてしまうか - ていう凄みを再確認した。

小さな室内に展示されていた「叫び」は個人蔵のパステル画で、これは確か前のMOMA展にも出ていたやつで、ここでは狭い部屋のなかにEgon Schieleの「叫び」とかいろんな画家の「叫び」がみっしり、呻きみたいのも含めて充満していて素敵だった。

カタログは当然買う。例によって展示規模とぜんぜん見合わない厚さ(ハードカバーのみ)なのだが、黒の装丁で、本としてもかっこよいし見ごたえ読みごたえたっぷりなの。

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