3.21.2016

[film] The Wrecking Crew (2008)

2月21日、日曜日の午前に新宿で見ました。 前日のリベンジ。

昔のアメリカンポップス/ロックが好きなひと、なかでも、例えば、80年代の山下達郎のサウンドストリートを聴いていたり、最近だと”Love & Mercy” (2014)のレコーディング風景の場面でそわそわきょろきょろしてしまったような人には必見のドキュメンタリー。
もう絶滅してしまった動物のリアル映像を見るような思いで、頭のなかで雷鳴のように”!”とか”☆”がばりばり鳴りまくり鳥肌たちまくりで、あと30分この状態が続いたら鶏になるところだった。

特定の正式メンバーがいるバンドというわけでもなく、その名がジャケットやライナーにクレジットされるわけでもない、西海岸のいくつかのスタジオを根城にしたり渡ったり個別に離合集散を繰り返していたプロ音楽集団。 どこからともなく自然発生的にその名が与えられ、だから発生も消滅もよくわからない、けど彼らが参加したレコーディングでは革新的なことが何度も起こるべくして起こって、そのドラムスのキックやベースのうねり、ギターのカッティングは、その化学反応は、例えばBrian Wilsonのソングライティングと並んで永遠であることを誰もが知っている。

監督はギタリストTommy Tedescoの息子さんで、父親が癌になったことを知り、彼の業績や証言をきちんと遺しておこうとカメラを回しはじめて、父親の紹介で他のメンバーやミュージシャン達もカメラの前にやってくる。 こうして「壊し組」と呼ばれたレコードの溝(史)のはじっこに埋もれていた連中の活動の片鱗(亡くなったひとも多いので全貌はわからないよね)が構成員の証言と共に明らかにされた、と。

個人的にはCarol Kaye, Hal Blaine, Tommy Tedesco この3人の語る言葉を聞けて、実際にカメラの前で演奏してくれるところも見れたので、それだけで十分だった。 みんな魔法使いのようで、実際に彼らのプレイはレコード越しに魔法(呪い、かな?)をかけて、それを解く術は世紀を超えても明らかにされていない。 “Pet Sounds”のベースラインがなんであんなに変てこで、でもなんであんなにきゅんと胸にくるのか、ちっともわからないし、彼女自身に聞いてもわからないに違いない。 ただ、みんなで延々スタジオでいろんなことを試していたのだと。 あの”Good Vibrations”の狂ったように膨大なテイクの数々もBrianひとりの所業とも言えなかったのではないか、と思ったり。 

曲ができたらそれを演奏家に渡してレコーディングして貰う、あたりまえの工程のようだが、ここで彼らはそのプロセスを省力化したり効率化したりしないで、なんか聴いたことのないおもしろいものを練りあげることに注力して、結果ミュージシャンからも信頼を得るようになって、やがて次々にいろんな依頼が舞いこむようになって、ていうビジネスとしては理想的なことを成し遂げて、しかもその成果はいまだにじゅうぶんクラシックとして誰からも愛されている。

やがて世間でバンドによるレコーディングがふつうになり、みんな自分たちでアレンジしたり演奏したりするようになって彼らの仕事も減っていくのだが、それもまたありよね、ていう距離の取りかたもまたプロ、なのよね。 Hal Blaineさんが無一文になっていたとは思わなかったが。

エンドタイトルのとこで、いつも表示されるメッセージ “No Animals were harmed in the making of this movie”のところが”No Musicians were …”になっていたのがおもしろかった。 いじめもやらせもないんだって。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。