6.07.2015

[film] The Trip to Italy (2014)

30日土曜日の昼間、渋谷でみました。

邦題は「イタリアは呼んでいる」というのだが、べつにぜんぜん、イタリアは彼らを呼んでなんかいなくて、寧ろまったくお呼びでない中年イギリス人おっさんコンビが自堕落でお気楽なイタリア旅をする、それだけのやつなの。
そもそもはTV番組だったやつをTVシリーズでも監督をしていたMichael Winterbottomがちょっと豪勢にがんばって映画として纏めてみた、という程度のものだからイタリアのリュクスな旅やグルメ情報を求めてやってきたBunkamuraおばさんおじさんたちにはかわいそうにー、としか言いようがないの。

Steve CooganとRob Brydonのふたり(役名もこのふたりについては同じ)はオブザーバー紙の取材依頼が入ったからイタリアに行こうぜ、とミニクーパーでイタリアを南に下っていく。
当然、地元のおいしそうなリストランテで一口食べただけで悶死しそうなお食事を食べたりするのだが、お店とかパスタとか食材とかワインとかの情報は一切出てこなくて、ふたりのくだんないおしゃべりとかモノマネ芸の添え物のように横にいるだけなの。 おいしいー、くらいは言うけど、そんなの見ればわかるし。

ネタとしては王様Al Pacinoとか若ハゲJude Lawとかバットマンのベイン(Tom Hardy)のもごもご喋りとかのハリウッドおちょくりで、イタリアと関係ないことすさまじいったらない。 あと、たまに言い訳のように参照されるバイロン卿とかシェリーとか、イタリアで放蕩した英国の文人たち。君らと一緒じゃないからね。

ふたりはそれぞれそれなりに家族の問題(家族を演じるのは俳優さん)も抱えていて、そのくせ旅の途中で女性をひっかけたりもして、要はこれが彼らの日常とはほんの少し異なる、それぞれの人生にとってそれなりの意味をもつ旅であることを示したりもするのだが、だからひとは旅にでるのだとか、旅というのはそういうものだとか、そういうフツーの修辞の域を出ていない。 まあ、それ故に安心して旅のだらだら感に浸ることができる、とも言える。

これがおしゃべりおばさん組の旅だったら、アメリカ人の旅だったら、とか思わないでもないけど、そんなことを思う必要がないくらいにこのふたりの旅芸(と言っていいよね)は完成されていてお見事なの。 イタリア以上に英国が好きじゃないとわかんないかもしれないが。


ぜんぜん関係ないけど、85年の6月5日はかのFerris Buellerがある朝突然に、をやってしまった一日で、そこからもう30年経ってしまったことを知る。
「フェリスはある朝突然に」は日本で公開された初日にたしかシネセゾン渋谷で見たの。 場内はがらがらだったけど、前のほうにアメリカ人と思われる女の子の一団が陣取って、ずーっときゃーきゃー言いながら楽しんでいて、見終わって感動してそのまま続けて次の回も見て、John Hughesは既に自分にとってじゅうぶん神だったが、これからもずっとついていこう、と強く思ったことを思いだす。  フェリスみたいに生きよう、とも思って、それをいまだに、数年かおきに反芻している。
こんな映画、そんなにないとおもう。

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